SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.2, April. 2002

13. 小型・長寿命パルス管式冷凍機を開発
_クライオデバイス_


 クライオデバイスでは、移動体通信基地局用HTSフィルタを冷却するための小型・長寿命パルス管冷凍機を開発した。HTSフィルタおよび低温LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器、微弱な受信信号を増幅させるための増幅器)は70 Kという極低温で動作させなければならず、冷却のために冷凍機が必要となってくる。移動体通信基地局用冷凍機に要求されるのは、「小型」且つ「長寿命」である。パルス管式冷凍機はスターリング式と異なり冷却部において摺動する箇所がないという特長を持つ。このため長期間動作させても冷却性能が劣化することがない。また圧縮機には特殊形状の板バネを開発し、ピストンとシリンダが接触しない構造を実現している。

 初期には対向ピストン型圧縮機を開発していたが、冷凍機の小型化のため現在はシングルピストン型圧縮機を採用している。シングルピストンでは振動が発生するが、バランサを入れることでこれを解決している。クライオデバイスではシングルピストン型圧縮機を用いて2種類の冷凍機を開発試作した。一つは圧縮機と蓄冷器が直線状に配置されるストレート型であり(図1参照)、もう一つは圧縮機と蓄冷器が直角に配置されるL型である(図2参照)。いずれも70 Kでの冷却能力は3W以上である。この能力であればフィルタとLNAを2系統分(すなわち1セクタ分)を冷却することが可能である。実際、図1の冷凍機では32段フィルタ+LNAを2系統、図2の冷凍機では24段フィルタ+LNAを2系統冷却できている。ストレート型冷凍機の消費電力は140 W以下、サイズは124 mm(φ)×517 mm(H)、重量は13 kgである。これに対してL型冷凍機では圧縮機の小型・軽量化と効率改善により、消費電力120 W以下、サイズ280 mm(W)×210 mm(D)×260 mm(H)、重量9 kgを実現している。第2技術部部長の伊東正篤氏は「今回開発した冷凍機が最終形ではない。冷凍能力は更に向上できる余地があると考えている。」とコメントしている。


図1 ストレート型冷凍機


図2 L型冷凍機

               

(エベレスト)