Superconductor Week 誌7月2日号(Vol.15, No.10)によれば、2002年度(2001年10月−2002年9月)米国エネルギー省(DOE)のHTS関連予算は、当初案に比べて大幅に増額(実質的には復活)になることが明らかになった。以前、Superconductor Week 誌が報告したHTS研究開発の予算規模は最初のDOE概算要求に基づいているが、SPIやその他超伝導材料の研究開発プロジェクトを支援する為の予算復活を含む重要な修正を予想するものであった。実際に出された修正要求は、「この修正案は、優先度が最も高い研究や緊急な研究開発活動に対して、39.176 Mドルの復活を図るものである。本案は、次世代エネルギー生産に引き続き集中する事を保証しようとするDOEの予算編成方針と整合している。修正予算要求は、電力分配と最終使用の容量増加、効率向上及び信頼性向上の為産業界との提携の下、前商用的なHTS研究開発を支援するものである。」と述べている。
当予算は、4月9日ホワイトハウス(WH)に提出され、委員会に於いてWHは電力系統と電力貯蔵関連の予算水準を更に増やして60 Mドル(FY2001年予算より8 Mドル多い)に増額した。この予算には、HTS研究開発予算として39.9 Mドル(FY2001年予算より3 Mドル多い)が含まれている。WHは、6月21日当予算を承認した。当予算は現在、HTS研究開発に多大の理解を示している上院の承認を得る段取りになっている。修正予算要求後、WHにより承認されたエネルギー系統と電力貯蔵関連の予算は、下記の通りである。
諸計画 FY2001 FY2002 FY2002 WH
(千ドル) 実績 当初案 修正案 承認案
HTS研究開発 36,819 19,000 36,819 39,870
エネルギー貯蔵 5,987 5,987 5,987 7,130
送電系統信頼性 8,940 8,940 8,940 13,000
合計額 51,746 33,927 51,746 60,000
当修正予算案には、次のような変更が含まれている:
【SPIプロジェクト(国研・メーカー・エンドユーザーを連繋する開発プロジェクト)】
HTS線材を用いた新しい電気システムの設計と試験に対する革新的な提案を選択し、資金援助すること。これら新システムの設計には、第2世代線材が含まれており、当線材が使えるようになった時に諸原型の試験が出来るようになっている。そのメリットは、今後5-15年に亘って米国の電気システムを再構築する為に必要な先進電力系統技術(電力ケーブル、トランス、モーター、発電機等を含む)のポートフォリオを完成させる為のプロジェクトを追加出来る事である。既存の機器の多くは、老朽化のためこの期間に代替する必要がある。工業の規制緩和が進むに従って、より多くの電力移送の為追加投資を必要とするものである。
【第2世代線材プロジェクト】
本修正案により、第2世代HTS線材開発に対する資金援助の水準はFY2001年並みに引き上げられよう。その結果、工業化コンソーシアムは国立研究所と連携して、高性能・低コストの第2世代HTS線材を早急に開発できるだろう。当線材の性能は、最初に製造される100 m長線材で測定されるだろう。FY2001年議会で開始された厚膜導体開発促進法案は、DOEの研究所、米国工業界及び諸大学間の共同努力により、開発、商用化及びHTS応用促進を推進するものである。
【戦略基礎研究】
本修正案により、戦略研究に対する資金援助の水準はFY2001年並みに引き上げられよう。その結果、HTS材料の微細構造と長尺に亘って大電流を流す能力との関係をより良く理解する為、基礎研究は引き続いて支援されるだろう。この重要問題の種々の側面を研究する為、幾つかのプロジェクトが追加されるだろう。そのメリットは、より高性能の線材が得られ、抜本的な低製造コストが実現出来る事である。また、HTS線材を常伝導体に接続する等の関連加工技術も交流損失に関する研究と共に支援されるだろう。これら交流損失は重大であるが、技術パラメータの理解が進むに従って低減出来るものである。
(DYF)