SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 2, April. 2000.

2.超電導リニアの技術開発
さらに5年間行われることが決定


 運輸省の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会(委員長:東京理科大学正田英介教授)が先頃開催され、1997年4 月以降の走行試験等に基づく総合的な技術評価及び2000年度以降の技術開発計画の評価を行った。この中で、3 年間に及ぶ山梨実験線の走行試験は計画通り順調に進展してきており、(a)超電導磁石の飛躍的な性能向上の達成、(b) 5 両編成で有人走行による552 km/hの世界最高速度の達成、(c)相対速度1003 km/hまでの高速すれ違い走行試験など、性能評価に必要な技術開発がトラブルなく進められてきたことが確認されている。これらを受けて、総合的なとりまとめとして、「超電導磁気浮上式鉄道技術について、鉄道輸送システムとして備えるべき性能、および本技術に特徴的な装置の特性をそれぞれ評価した結果、引き続き検討する課題はあるものの、超高速大量輸送システムとして実用化に向けた技術上のめどは立ったものと考えられる」と評価されている。また、2000年度以降の進め方としては、引き続き、長期耐久性、コスト低減、車両の空力的特性改善などの課題を解決するために、概ね 5 年間、実用化を目指した走行試験を継続して行う必要があるとされている。

 この総合評価に対し、JR東海の葛西社長は、「10年あまりの技術開発が所期の成果を上げたと評価され、極めて意義深い」と述べ、(財)鉄道総合技術研究所の副島理事長は「日本独自の開発成果が高いレベルにあることを評価されたことは大きな喜びであり、次のステップの課題解決に向け、真摯に技術開発を行っていく」とコメントしている。

 評価委員会で指摘された課題の解決のために、(財)鉄道総合技術研究所とJR東海では、平成12年度からの5年間で、以下の技術開発を実施することとしている。(1)信頼性・耐久性の検証:車両の高速連続走行試験や、き電区分開閉器の高頻度動作試験等を引き続き長期的に実施して、信頼性、耐久性を検証する。(2)コスト低減技術:建設コストおよび運営コストの低減へ向けて、電気設備では電力変換器やき電システム、土木・電磁路設備ではガイドウェイや地上コイル、車両設備では超電導磁石等、各々の設備・機器に関する改良や新方式の開発を行い、2001年度より順次、走行試験等で特性を確認する。(3)車両の空力的特性の改善技術:空力的特性を改善するため車両を改良し、2002年度から走行試験に供用して空気振動や車内騒音、車体振動の低減等に向けた開発成果の特性を確認する。

 5年間の主な試験スケジュールを表1に示す。平成14年度の色が薄くなり、斜めに線が入っているのは徐々に移行するという意味である。

 実用化に向けた技術上のめどが立ったということは、技術上の大きな問題がないという判断であり、5年間で技術のブラッシュアップに取り組む開発陣営は意気込んでいる。

(serendipity)