SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 5, Nov. 1999.

11.7周年を迎え、スーパーコム事務局移転


 スーパーコム(超電導コミュニケーションズ)は1992年の発刊以来、超電導情報研究会を母体としてボランティアによるニュース提供と取材、印刷、送付を行なって参りました。最初は「石の上にも3年」と、ともかくもしばらくは続けようという止むに止まれぬ気持ち先行で開始されました。超伝導コミュニティの材料・デバイス・システム研究者、ユーザー、そして大学・研究所の基礎研究者や学生の協力により、なんとか7周年を迎えたところです。先々週より事務局はこれまでの東京大学工学部5号館の建物から2号館3階に、編集長(古戸義雄)、事務局長(近藤幸子)とも移動いたしました。これは4月に発足した新領域創成科学研究科の教官居室がいくつか2号館にあるためです。

 新領域創成科学研究科という長たらしい名称の研究科はこの4月にできたばかりの学部を持たない大学院だけの研究科です。内野倉国光、北澤宏一、内田慎一、高木英典各教授、岡本博、花栗哲郎、野原実各助教授ら(以上物質系専攻)、藤森淳教授(複雑系専攻)など超伝導研究に携わる数名の教官の研究室が新研究科に移り、ここ数年のうちに物性研究所に引続いて千葉県柏市の新キャンパスへの移転を目指しています。大変古い建物で「帝国大学らしいところですね」といわれる場所ですので、お立ち寄りご覧いただければ幸いです。新研究科はhttp://www.k.u-tokyo.ac.jp/materials/index-j.htmlで内容ご覧下さい。

 所期の計画では、5周年あたりから超伝導の本格応用が始まって、読者が急増し、商業誌としての「日経超電導」が復刊され、スーパーコムの使命は終了する、はずでした。米国ではDOEの支援を受けた High Tc Update という学会誌のプレプリント紹介サービス(無料:講読2500人−うち電子メイル講読者3分の2)がアイオワ大学エイムズ研究所のJohn Clem 教授らを中心に続けられてきましたが、まもなく廃刊というニュースが伝わってきております。研究論文の速報性への強い需要が薄れてきていることの表われと思われます。超伝導が成熟してきたということでしょうか。

 一方、商業誌である Superconductor Week は初期の編集者のDonn Forbes 氏から 青年編集者の Aaron Bitterman 氏に引き継がれて、年間購読料約400ドル程度で主として業界情報をバイウィークリーで伝えています。こちらもまだ経営基盤は脆弱ですが、「刊行を長く続けることに意味がある」と、Forbes氏より技術ジャーナリストとしての薫陶を受けた現在の編集長 Bitterman氏は頑張っています。また、日本の企業を定年退職された低温の専門技術者−ペンネーム東西南北氏が共同編集者として加わっておられますので、日本の記事も良く載っています。軍のプロポーザルなども載っており、中には奇想天外なアイディアもありますので、頭の体操にはもってこいのところがあります。

 Pre-competitive な時期には国際間の協調を保つ上でも、双方の情報が良く伝わることが重要といわれます。お互いがその悩みまで理解し合うことがいたずらに疑心暗鬼を生み出すことを避けることができるからです。Super-Com でも、毎号の適当な記事を学生が翻訳してくれ、編集長がその英語を添削して、Bitterman氏に送るよう心掛けています。また、我々の記事も同誌を参考に取材する場合もあります。同誌に興味を持たれる方はメイルabitterman@aol.com あるいはFax 1−415−837−0327 でサンプルコピーを請求してみて下さい。こちらも皆様の応援をよろしく。

 また、編集事務局としては、読者の方々からの意見やニュースを是非お願いしたいと思います。新聞発表などをされる場合には是非スーパーコムにもご一報下さい。スーパーコムでは、一般新聞紙よりワンランク上の内容でお伝えできます。また、研究所や大学でも、読者の興味を引きそうな内容の研究は、是非、アピールポイントを付記して送って頂ければ、ボランティアレポーターが採録いたします。

 なお、本誌は、興味を持っていただける方には所属・年齢・職業・学生を問わずに無料で送付するよう務めております。皆様のまわりで読みたいという方がいらしたら、お知らせ下さい。お一人でも興味を持って下さる方が増えることが、私たちにとってなによりの励みとなります。

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