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SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No6, December, 2009

RE123系線材開発状況　　　　　　＿フジクラ＿

　現在入手出来る材料で最も高性能が期待できるとされるRE123系超電導線材は、既に米国の2社が市販を開始するに至り各種プロトタイプ機器の開発が始まっている。日本国内においては経産省の国家プロジェクト内でISTEC、電力並びに電線各社が線材開発を推進してきたが、今年度よりフジクラは自社投資に踏み切りサンプル出荷を開始した。
　フジクラでは一貫して物理的気相法であるIBAD法/PLD法の組み合わせによるRE123系線材の実用化を目指してプロセス開発を続けて来ており、2008年初頭にNEDO超電導応用基盤技術開発プロジェクトの開発目標値であったIc>340 A/cm、長さ>500 mのGd-123線材を作製することに成功し、Icと長さの積において当時の世界記録を達成している。本手法は比較的安定に高特性を得やすい特徴がある一方、高価な真空設備を必要とする割に生産性が高くないことからコスト低減が課題とされてきたが、その後約2年間の開発により、①大型のIBAD設備を用いた極薄のMgO配向中間層の高速生産に成功するとともに、②独自のホットウォール型PLD装置の開発により均一性の高い高特性線材を高速で安定製造することに成功し、本手法によるRE123線材の実用化に目途をつけた。
　中間層作製工程においては、製造律速であったIBAD工程でイオンガンの大型化及び従来材料のGd2Zr2O7からMgOへの移行により、図1に示すようにCeO2キャップ層まで載せた段階で ~4° のIBAD-MgO層を製造速度300 m/h―1 km/hで作製可能とするに至った。また格子ミスマッチの大きいCeO2膜を直接MgO上に製膜することに成功し、キャップ層の工程簡素化にも成功した。ネックとなってきたIBAD層を除く中間層の形成は比較的容易に高速化可能であり、配向中間層基板の生産性は量産段階に達している。
　超電導層作製工程においては、図2に示すようなホットウォール型PLD装置を用いて雰囲気温度の安定化、均熱化を図った。本方式は膜成長表面の温度が揺らぎにくい特徴があることから、膜が厚くなっても放射率変動の影響を受けにくく、図3に示すようにIc>1000 AのGd-123短尺試料をreel to reel連続合成により成膜することに成功した。また、高速化に関しては温度の安定化により40 nm/secを超える蒸着レートで安定した膜成長を維持することに成功し、さらに蒸発材料の高収率化(50%以上)によってIc>300 A線材を製造速度60 m/hで作製するに至った。さらに3 m強の厚膜Gd-123線材試作の結果、図4に示すように製造速度16 m/hでIc~650 Aの均一な分布を有する170 m長線材作製に成功した。Ic値のバラツキはこの厚さにおいてもほぼ2%以内に収まっている。また磁場特性に関しては、人工ピン導入なしで、Ic>40 A (77 K, 3 T)の強磁場特性を有するIc>600 A (77 K, 0 T)級線材の作製にも成功している。PLD法は高性能試料が作製し易い特徴があったが、今回の均熱化プロセスの成功によって、温度の精緻な調整が不要な工業的オペレーションが可能になり、高特性線材の量産化が視野に入ってきた。
Y系線材の製造方式は現在でも数種が並存しているが、ある程度以上の製造線速になると真空設備の初期投資負担はさほど問題とならなくなる。今回、PLD法の均熱化による工業的なオペレーションが成功したことにより、米国2社が進める化学的製法と並んで線材生産の実プロセスとして稼動していくことを期待したい。 (KAKI)

図1　製造速度1 km/hで作製したIBAD-MgO基板のCeO2- 分布

　　図2　ホットウォール型PLD装置の概念図

図3　ホットウォール型PLD装置で作製したGd123線材のIcの膜厚依存性

図4　Ic >600 A級Gd123長尺線材のIc分布

RE123系線材開発状況 ＿フジクラ＿

RE123系線材開発状況　　　　　　＿フジクラ＿