同位元素効果
isotope effects
陽子数は同じだが中性子数の異なる元素のことを同位元素と呼び、この同位元素で置換したときの諸物性の変化のことを同位元素効果という。同位元素は化学的には同等で質量だけが異なると考えられるので、同位元素効果は物性における量子性の検出に利用される。例えば、水素結合を含む強誘電体での重水素化による転移温度降下は、水素のトンネル運動によるものと考えられている。また、通常の超伝導体においては転移温度が原子質量の平方根に逆比例するという同位元素効果が見出されており、格子振動が超伝導に重要な役割を果たしている証拠となった。しかし、実際には同位元素置換によって周囲の原子配置などの変化も起こるので、単純に量子性の変化だけではないことに留意する必要がある。
動的安定化
dynamic stabilization
超伝導線材の安定化法の一つ。超伝導体と安定化材とを組み合わせた複合超伝導線材においては、擾乱によって発生した熱は安定化材を通して速やかに外部に放散されるので温度上昇が抑制でき、また発熱の一つの原因である外部磁界の進入を安定化材によって遅らせることができるので、優れた熱的磁気的安定性が得られる。このようにして線材の不安定性を回避することを動的安定化という。
銅比
copper ratio
超伝導線材においては、安定化のために通常超伝導体を銅などの良導体(安定化材)で覆っているが、この銅と超伝導体の比率(体積比)を銅比という。線材の安全性の面では銅比を高くしたほうがよいが、超伝導機器を小型化するには銅比は低いほうが望ましく、これを技術的にどこまで下げられるかが線材開発の一つのポイントとなる。
トリスタン
Tristan
文部科学省高エネルギー加速器研究機構に設置されている電子-陽電子衝突型加速器。Transposable Intersecting Storage Accelerator of Nipponの略。最高ビームエネルギー32.5GeV, 主リング曲率半径357m。ビームの加速に超伝導高周波加速空洞が使用されているが、このように空洞を超伝導化することで空洞内表面での高周波損失を著しく低減することが可能となる。材料は高純度のニオブが使用されている。また粒子計測用に、TOPAZ, VENUSと呼ばれる大型超伝導ソレノイド磁石が組み込まれている。
トレーニング効果
training effect
超伝導マグネットにおいてクエンチを起こす電流が励磁回数とともに増大する現象。超伝導マグネットの励磁において、はじめはマグネットに用いた線材の臨界電流よりもはるかに小さい電流でクエンチするが、励磁を繰り返すと徐々にクエンチ電流が上昇して臨界電流値に近づく現象が見られることがある。原因としては、マグネット内の巻き線に動きやすいところがあり、これが励磁中に動いて安定な位置に落ち着くが、その際の発熱でクエンチすること、などが考えられる。
トンネル障壁
tunneling barrier, tunnel barrier
トンネル接合参照
トンネル接合
tunneling juncion, tunnel junction
二つの物質が非常に薄い絶縁膜などのポテンシャル障壁(トンネル障壁と呼ぶ)によって隔てられているもの。物質を構成する荷電粒子が量子力学的にトンネルし、電流が流れる。物質としては、金属、半導体、超伝導体などがある。特に、超伝導体を用いたものをSIS接合という。