中間状態
intermediate state
半磁場係数が0でない第1種超伝導体において、常伝導領域と超伝導領域が巨視的なスケールにわたって共存する状態。試料の形状に応じて、常伝導領域と超伝導領域は複雑な形状で共存する。
中空導体
hollow conductor
超伝導線材を用いて作成した導体において、導体を冷却する冷媒の通路を、導体の内部に有している内部冷却型の導体の一つ。導体の長手方向に一つあるいは複数の中空部分を持つ。通常は安定化材に中空部を設けており、ここに液体ヘリウムや超臨界ヘリウムなどの冷媒を圧縮して冷却される。線材を外部から冷やす必要がないため超伝導マグネットが簡単になり、また厚い絶縁膜をつけることができるので絶縁性に優れた導体ができる、など長所がある。
超断熱
superinsulation
参考:多層断熱
超低温
ultra-low temperature
最高の技術を用いて初めて得ることができる低温のこと。一般に絶対零度に向かう温度領域を低温、極低温、超低温の順に分けて呼ぶ事が多いが、それぞれの領域の厳密な定義は存在せず、同じ温度領域であっても学問分野や時代によって異なる呼称が使われる。現代の低温物理学の世界では核断熱消磁によってのみ生成できる1mK以下の温度領域を超低温と呼ぶ場合が多い。
超伝導エネルギーギャップ
superconducting energy gap
BCS理論によると電子間の引力によってクーパー対が形成されるが、これはフェルミ面近傍の電子状態の再構築に対応しており、クーパー対の束縛エネルギーに対応するエネルギーギャップが発生する。これを超伝導エネルギーギャップと言う。より詳細に見ると、エネルギーギャップは結晶波数のkの関数であり、s波対形成ではフェルミ面全部で有限の値をとるがp波やd波といった異方的対形成では0となるkの値が存在し、低温における比熱などの物理量に特徴的なべきの温度依存性をもたらす。また、磁性不純物によってエネルギーギャップ内に状態にができてギャップレスギャップの存在が超伝導の本質でないことは注意したい。
超伝導エネルギー貯蔵
superconducting magnetic energy storage
SMESと同義
超伝導FET
superconducting FET (field effect transistor)
超伝導体の電流ー電圧特性を電界により制御する3端子素子。半導体FETと同様にゲート、ソース及びドレインからなる。電界の印加によりゲート電極下部の電子の数を増減させてソース、ドレイン間の超伝導特性を制御する。超伝導体としては超伝導の極薄膜またはジョセフソン接合が用いられる。薄膜の場合は、極薄膜の臨界温度が変調される。ジョセフソン接合の場合は、接合部の超伝導結合の強さが変調される。
超伝導円筒
superconducting hollow cylinder
超伝導体でできた中空の円筒。いまこの円筒の周りに超伝導電流が流れているとする。超伝導体においては電子がマクロなスケールで凝縮を起こしており、一つの波動関数で記述される。超伝導体内部を回る経路を考えると、波動関数の位相は一周すると2πの整数倍だけ変化する。これより、円筒内に閉じ込められた磁束はある単位磁束の整数倍になることが導かれる。これを磁束の量子化といい、単位磁束を量子化磁束あるいは磁束量子という。
超伝導キャビティ(超伝導空洞)
superconducting cavity
超伝導を用いた空洞共振器。超伝導体で囲まれた中空の容器でマイクロ波の伝送に用いられる。銅などの常伝導金属を用いた場合に比べて損失を遥かに小さくでき、共鳴の鋭さを表す量であるQ値を大きくできる。しかし、損失は0ではなく表面状態に依存しており、表面が平滑なほど損失は低減する。素粒子研究のための線形加速器などに使用される。
超伝導ケーブル
superconducting cable
超伝導素材を用いた送電ケーブル。超伝導線材は抵抗0で大電流を流せるので、これをうまく利用すれば、エネルギーロスが0で、かつ大容量の送電が期待できる。従来より金属系超伝導線材を用いた送電ケーブルの開発の計画はあるが、高温超電導体の発見により、これが加速されるようになった。長距離にわたる冷却の技術的問題や、冷却コストを含めた経済性の問題、また交流用のケーブルにおける交流損失の軽減など、多くの課題がある。
超伝導三端子素子
superconducting three terminal device
三つの端子(入力、出力及び共端子)を持ち入力と出力が電気的に分離された素子。電子回路を構成する場合には不可欠な素子。超伝導素子のうちSQUIDやボルテックスフローデバイスは3端子として動作。ジョセフソン接合は2端子であるため回路的工夫により3端子的動作をさせている。半導体と同様な3端子素子の開発を目指して超伝導トランジスタの研究が行われている。
超伝導磁石
superconducting magnet
超伝導マグネットと同義
超伝導状態
superconducting state
電気抵抗0、完全反磁性(マイスナー効果)で特徴づけられる状態。二つの電子が何らかの引力相互作用により、対が形成することにより実現される巨視的な量子状態。従来の超伝導体は、格子振動を媒介とした引力相互作用を考慮したBCS理論で説明される。一方、高温超伝導体では反強磁的な電子間相互作用が重要と考えられている。
超伝導ストリップ線路
superconducting strip line
超伝導薄膜を用いた高速信号伝送線路の1種。二つの薄膜の間に絶縁層をはさんだサンドイッチ構造となる。マイクロ波帯では、線路の損失は金属の場合に比べてきわめて小さくなる。また、分散が無視できるため信号波形のひずみもなく、理想的な伝送線路となる。ただし、損失は周波数の2乗で増加し、数百GHzで金属と同程度になる。
超伝導セラミックス
superconducting ceramics
酸化物系超伝導体と同義
超伝導線材
superconducting wire
超伝導体を用いて作製したフレキシブルなワイヤやテープ。超伝導磁石などに使用される。一般に超伝導線材は、安定性を確保するために常伝導の金属マトリクス中に多数の超伝導フィラメントを埋め込んだ構造になっており、多芯線材と呼ばれる。用途によっては、されに補強材や安定化材を組み込んだりする場合もある。用いられる超伝導体は上部臨界磁場の高いNb-TiやNb3Snなどであるが、最近では高温超伝導体を用いた線材も数多く試作されている。
超伝導送電
superconducting power transmission
超伝導ケーブルを用いた送電。送電線を超伝導化することにより、送電におけるエネルギーロスを著しく低減させることができる。また、市街地、特に大都市部では新たに送電ケーブルを地下に設置するにはスペースその他の制約から難しくなってきており、送電ケーブルの高密度大容量化が強く要望されているが、従来のケーブルでは容量の飛躍的増大は不可能であり、超伝導線材の高い電流密度を利用した超伝導送電に期待がかけられている。
超伝導素子
superconducting device
超伝導体を用いた電子デバイスの総称。ジョセフソン接合を用いたジョセフソンデバイス、半導体を組み合わせた超伝導トランジスタ、超伝導薄膜を用いた超伝導マイクロ波デバイスなどが代表的なものである。
超伝導体積分率
superconducting volume fraction
試料全体の体積に対する超伝導を示す部分の体積の割合。簡便には、マイスナー状態における磁化率から求めることができる。しかし、大きな試料では表面のみ超伝導であれば全体が超伝導に見えてしまう。また、第2種超伝導体では磁束のピン止めのため、超伝導体積分率が見かけ上非常に小さくなることに注意する必要がある。
超伝導転移温度
superconducting transition temperature
超伝導体が超伝導状態に転移する温度。超伝導磁界温度ともいう。1911年に初めて見つかった超伝導体である水銀では4.2Kである。1980年半ばまで、化合物Nb3Geにおける23Kが最高であった。1986年の高温超伝導体の発見以降、記録が次々に塗り変えられ、常圧で約130K、加圧下で160K以上の超伝導転移温度が報告されている。
超伝導トランジスタ
superconducting transistor
超伝導体を用いたトランジスタ。半導体と超伝導体を組み合わせた高速・低消費電力のデバイスの開発を目指している。超伝導FETと超伝導ベース型トランジスタがある。
超伝導トンネル効果
superconducting tunneling effect, superconducting tunnel effect
超伝導体からなるトンネル接合において、トンネル効果により電流が流れる現象。超伝導体には準粒子と電子対が存在し、それぞれのトンネル効果は準粒子トンネル効果とジョセフソン効果とに分類される。
超伝導薄膜
superconductive thin film
超伝導を示す薄膜。薄膜の結晶性や応力、不純物などがバルクとは異なるために、バルクとは異なる超伝導特性を示すことが多い。第1種の超伝導体では一般に、膜圧が磁場侵入長程度にまで薄くなると、臨界磁場が増大する。また薄膜材料は、ジョセフソン接合素子などのエレクトロニクス材料として重要である。作製法としては、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などがある。
超伝導物質
superconductive material
臨界温度Tc以下の温度で、電気抵抗が0になり、同時に完全反磁性状態になる物質。元素で27種、合金と化合物では1000種以上発見されている。元素でTcを示すのは、Nbの9.25Kである。化合物で最高のTcは、HgBa2Ca2Cu3O8+δの135Kである。
超伝導ベース型トランジスタ
superconducting base transistor
バイポーラトランジスタのベース部に超伝導体を用いたもの。半導体/超伝導体/半導体によりエミッタ/ベース/コレクタが形成される。超伝導体を用いているためベース抵抗がきわめて小さくなる。バイポーラトランジスタでは、ベース抵抗により動作周波数の限界が生じるが、超伝導体を用いることによりこの限界を解消し動作周波数を大幅に高くすることが期待されている。なお、半導体としてはエネルギーギャプの小さなものが必要とされる。
超伝導マグネット
superconducting magnet
超伝導線材を巻いてできた電磁石。銅などの常伝導磁石に比べて消費電力がきわめて少なく、また小型で強力なマグネットができる。使用される超伝導材料は、上部臨界磁場の高いNb3Snなどであり、その発生磁界は20T以上に及ぶ。高温超伝導体を使ったマグネットも試みられている。超伝導マグネットは、通常液体ヘリウムを用いて冷却されるが、最近は、液体ヘリウムのいらない冷凍機冷却型の超伝導マグネットが注目されている。
超伝導ゆらぎ
superconducting fluctuation
BCS理論では転移温度Tcより低イオンで初めてクーパー対の振幅が発生し、同時にその位相もコヒーレンスを獲得するとされているが、これはゆらぎの効果を無視する平均場近似によっているからである。これはコヒーレンス長ξが長い極限で正当化されるが、実際にはξは有限なので、ゆらぎの効果が存在する。具体的には転移温度Tcより高温でもクーパー対の芽が空間的時間的なゆらぎとして存在し、電気抵抗の下がりや反磁性帯磁率の増強などの現象として観測される。超伝導ゆらぎは低次元系のほうが顕著に見られ、極端な例として1次元系で有限温度ではゆらぎのみが存在する。されにクーロンエネルギーを考慮すると絶対零度でもオーダパラメータの量子ゆらぎが存在し、それが大きな極限ではついに系は絶縁体となる。
超伝導量子干渉計
SQUID magnetometer
SQUID磁力計と同義
超伝導量子干渉素子
superconducting quantum interfernce device : SQUID
SQUIDと同義
超伝導臨界温度
superconducting critical temperature
超伝導転移温度と同義
超伝導ループ
superconducting loop
超伝導線路の閉回路。ループ内の磁束は量子化磁束φ0 = 2.07×10-15(Wb)の整数倍でのみ存在し、これを磁束の量子化と呼ぶ。量子状態の遷移(量子化磁束の数の変化)を制御するためには、ジョセフソン接合と組み合わせたSQUIDが用いられる。また、ループを流れる超伝導電流は減衰のない永久電流であるため、直流磁束に対するトランスやジョセフソンメモリとして応用されている。
超流体
superfluid
超流動を示す液体。液体HeU相が代表的な例であり、異常に高い熱伝導、噴水効果などの熱機械効果、きわめて狭い隙間を圧力差なしに流れるスーパーリーク、容器壁面を薄い液膜がはい上がるフィルムフローなどの特異な現象を示す。ボーズ・アインシュタイン凝縮によって起きる。巨視的な量子現象である。この他、液体3Heにおいても超流動相への転移が知られている。
超流動ヘリウム
superfluid helium
ラムダ点(2.2K)より低温の液体ヘリウム。液体ヘリウムU。超流動を示す。
直流ジョセフソン効果
DC Josephson effect
ジョセフソン接合において、電圧が0で直流電流が流れる現象。この0電圧の電流Iは、ジョセフソン電流と呼ばれ、二つの超伝導体の位相差θに依存して流れ、I = I0sinθで与えられる。ここで、I0はジョセフソン電流の最大値であり、最大ジョセフソン電流と呼ぶ。また、最大ジョセフソン電流は磁場に対して干渉効果により振動する(ジョセフソン干渉効果)。これらの現象は、位相差が時間に依存しないため、直流ジョセフソン効果と呼ばれる。