Tl-Ba-Ca-Cu-O系
Tl-Ba-Ca-Cu-O system
元素Tl, Ba, Ca, Cu, Oで構成される酸化物高温超伝導体。Tl系ともいう。化学式Tl2B2Can-1CunO2n+4+δで表される物質群とTl2B2Can-1CunO2n+3+δで表される物質群がある。超伝導臨界温度は、〜80K(n=1), 〜110K(n=2), 〜120K(n=3), 後者では〜20K(n=1), 〜80K(n=2), 〜110K(n=3)である。Tl2B2Can-1CunO2n+4+δはBi2Sr2Can-1CunO2n+4+δと類似の構造であり、Tl2O22重層を有するが、Tl2B2Can-1CunO2n+3+δでは、TlO層は一層になっている。
低温
low temperature
温度には絶対零度(0K=-273.15℃)という下限があり、この下限に近い温度を低温という。しかし、絶対零度を除けば、「低温」という概念は対象とする現象やエネルギースケールと比較した相対的な意味しか持たない言葉である。ただし、日常的には室温より低い温度を低温と呼び、低温工学分野では液化天然ガス(LNG)温度(120K)以下を低温とする場合がある。
低温槽
cryostat
クライオスタット参照
低温物理学
low temperature physics
低温に関連した物理学。超流動、超伝導をはじめ低温で生起するさまざまな現象に関する研究とともに、計測や観測の手段として低温環境を応用する研究分野も含む。低温物理学全体を包括する国際会議、低温物理学国際会議(LT)は、3年ごとに開催されている。
デバイT3法則
Debye T3-law
固体の比熱には一般に電子比熱と格子比熱の寄与がある。後者の格子比熱は低温では周波数の小さな音響フォノンからの寄与が支配的となり、温度Tの3乗に比例する。これをデバイの3乗法則という。具体的にはボーズ統計に従うωq=c|q|(c:音速)の分散を持つ3次元のフォノンモードの比熱を計算すればこの法則が得られる。金属の場合低温で電子比熱はTに比例するため、比熱Cを温度Tで割ったものをT2に対してプロットすると電子比熱と格子比熱が分離できる。
テバトロン
Tevatron
米国フェルミ加速器研究所に設置されている大型シンクロトロンの名称。加速器においては粒子の軌道を曲げて周回させるのに磁界を使うが、状伝導マグネットでは大量の電力を消費するとともに発生磁界に限界がある。テバトロンはこれに超伝導マグネットを用いた最初の大型加速器である。粒子の軌道を曲げる2極マグネット、粒子を収束させる4極マグネット合わせて約1000個の超伝導マグネットが使用されており、線材にはNb-Ti超伝導体が用いられている。
デピンニング曲線
depinning line
第2種超伝導体の混合状態において磁束がピン止めポテンシャルから抜け出し、エネルギーを散逸し始める特徴的な温度-磁場相図上の曲線。通常、エネルギー散逸や抵抗がある基準値に達した点の集まりとして定義される。
テープ状導体
tape conductor
Nb3SnやV3Gaなどの金属間化合物の線材して初期に開発された超伝導線材であり、薄い超伝導相が状伝導金属基板の上に形成された層状構造となっている。テープ面に垂直に磁界をかけた場合、磁気的安定性が低いので現在ではほとんど使用されない。ビスマス系酸化物超伝導線材にいては、圧延加工や溶融法などにより配向組織を得る必要があり、特性の優れた線材はテープ状導体となっている。この場合は多芯のテープ状導体も開発されている。
電圧標準
voltage standard
電圧の標準。1Vまたは10Vのジョセフソン圧標準が1次標準として用いられ、その精度は5ppb程度。2次標準としては安定化ツェナーダイオードが用いられ、その精度は数百ppb程度。
電荷移動ギャップ
charge transfer gap
電荷を移動する際に必要なエネルギーのことで光吸収などで観測される。基本的には、電子が占有している状態のエネルギーと電子が遷移する先の状態のエネルギーの差であるが、電子間の相互作用により変更を受ける。特に、電子と正孔の間に引力が働く場合は電荷移動励起子が形成され、そのエネルギーが光吸収で観測される電荷移動ギャップとなるが、電子と正孔を無限遠離したときのエネルギーはそれより大きく、電気抵抗の活性化エネルギーとして観測される。
電子間相互作用
electron-electron interaction
電子間にはクーロン力を主体とする相互作用が働いており、このため各電子は他の電子の影響を時々刻々受けながら運動し、全体として一つの多体系として扱う必要が生じる。クーロン力は遮蔽効果により弱められ、ことに金属中ではその長距離性は指数関数的な減衰に置き換えられる。電子間の相互作用は通常ランダウのフェルミ流体論で取り扱われ、小数のパラメータを用いて電子系の低温における性質は完全に記述される。しかし、このランダウ理論で記述できない非フェルミ流体の研究が最近盛んになっており、1次元の朝永・ラッティンジャー液体や高温超伝導体の電子状態などがその顕著な例である。
点接触素子
point contact device
ジョセフソン接合の一種。先端をとがらせた針状の超伝導体を他の超伝導体に接触したもの。接合の特性は先端に加える圧力により調整する。現在はあまり用いられていないが、接合の容量が非常に小さくなるため高周波帯でのジョセフソンミキサの応用に適している。