超伝導用語事典




第一音波
first sound

密度の疎密を伴う通常の音波。超流動ヘリウムにおいて第二音波に対して通常の音波を区別するために使われる。


第一種超伝導体
type T superconductor

超伝導体のうち印加磁場を増していったとき、ある臨界磁場で超伝導状態が壊れ常伝導状態に転移する超伝導体のこと。常伝導領域と超伝導領域の境界の界面エネルギーが正であることで特徴づけられる。元素超伝導体のほとんどがこれに属する。現実の超伝導体では、反磁場効果のため超伝導状態と常伝導状態がマクロに共存する中間状態を経て常伝導状態へ転移する。


第二音波
second sound

超流体中を伝播する音波のうち、密度の疎密を問わず、温度の振動を伴うモード。温度波あるいはエントロピ波。超流動の二流体モデルによれば、超流動成分と常流動成分とが逆位相に振動する波であると理解できる。


第二種超伝導体
type U superconductor

超伝導体のうち印加磁場を増していったとき、下部臨界磁場以上での混合状態を経て、上部臨界磁場で超伝導が壊れ常伝導状態に転移する超伝導体のこと。常伝導領域と超伝導領域の境界の表面エネルギーが負であることで特徴づけられる。単元素金属を除くほとんどすべての超伝導体がこれに属する。高磁場で利用できる超伝導体はすべて第二種超伝導体である。


多芯線材
multifilamentary conductor

多数の超伝導フィラメントを常伝導マトリクスの中に埋め込んだ形式の超伝導線材。変動電流や変動磁界の元での超伝導単位体積あたりのヒステリシス損失は、超伝導体の大きさが小さくなると低下するので、ヒステリシス損失を低減させて安定性を高めるには、超伝導体を数多くのフィラメントに分割するのが有効である。多芯線材はまた、応力やひずみに対して超伝導特性の劣化が少ない点でも優れており、現在実用化されている超伝導線材のほとんどすべてがこの多芯線材である。


多層断熱
multilayer insulation

真空や断熱において、断熱すべき両温度壁の間に複数の中間板を置き、残留気体による伝熱と放射による伝熱とを減らす方法。スーパインシュレーション(超断熱)。液体ヘリウムをはじめとした低温液化ガスの貯蔵容器やクライオスタットの断熱に利用される。


単芯線材
single core conductor

超伝導コアをただ一本だけ含んだ超伝導線材。単芯線材では超伝導コアの直径が大きくなるためにヒステリシス損失が大きくなり、磁気的不安定性を示して早い変動電流や変動磁界のもとでは利用することができない。初期の超伝導マグネットなどには単芯線材が用いられたが、現在の金属/合金系超伝導線材ではすべて多芯線材が用いられている。


炭素抵抗温度計
carbon resistance thermometer

グラファイトをバインダとともに焼結した抵抗体。電気抵抗値が温度によって変化するために、低温では2次温度計として利用される。一般に低温ほど抵抗値が高くなり、絶対零度で発散する半導体的変化を示す。製造条件によってここの抵抗の温度特性は変わる。使用される温度範囲は30mK〜100K程度までである。


断熱安定化
adiabatic stabilization

超伝導線材の安定化において、発生した熱を、超伝導体の比熱を利用して吸収する方法。外部との熱のやりとりを考慮に入れてないのでこれを断熱安定化と呼ぶ。磁束線の動きによる発熱は線材中の超伝導コアの直径の3乗に比例し、また熱容量は2乗に比例する。したがって、超伝導コアのサイズを小さくしたほうが安定性が向上する。このような考え方に基づいて開発されたのが多芯超伝導線材である。