超伝導用語事典



スイッチ素子
switching device

オンとオフの二つの状態を示す素子。高速ディジタル回路や信号処理回路に必要とされる。二つの状態の遷移(スイッチ)時に消費される電力と遷移に必要な時間との積(電力・遅延積)が性能を表す指標となる。ジョセフソン接合の0電圧状態から有限電圧状態の遷移を用いるものと、SQUID内の量子状態の遷移(量子化された磁束の数の変化)を用いるものがある。半導体に比べて電力・遅延積はきわめて小さくなるため、高速・低消費電力の回路が可能となる。


ステックレーの安定化基準
Stekley's stability criterion

超伝導線材の安定性を確保するための基準の一つ。じょう乱により線材中の超伝導体が常伝導に遷移し、線材に流れている電流が全て常伝導の安定化材に流れていると仮定する。安定化材の量を多くとることにより、ジュール発熱量が冷却による放熱量よりも小さくなるようにする。すると、じょう乱がなくなれば線材の温度が下がって直ちにもとの超伝導状態に復帰するようになる。これをステクレーの安定化基準と呼び、そのような安定性を完全安定性という。


スピンギャップ
spin gap

反強磁性量子スピン系でその量子ゆらぎのために反強磁性長距離秩序が破壊されることがある。このような量子スピン液体では二つのスピン1/2の間で形成される1重項が重要であると考えられるが、特に基底状態と3重項の励起状態の間に有限のエネルギーギャップが存在する事がある。これをスピンギャップと呼ぶ。ホール濃度が小さい高温超伝導体やはしご型物質で中性子散乱や核磁気共鳴などの実験的手段によって見出されており、高温超伝導のメカニズムと重要な関連があると考えられている