リアクトアンドワインド法
react and wind method
超伝導線材を用いてマグネットを作製するときの通常の熱処理法。Nb3Snや酸化物超伝導体などは機械的にきわめて脆いため,そのままでは線材に加工できない。そこでまず超伝導体の素材を組み合わせた複合体を線材の形状に加工し,熱処理を行って超伝導体を形成させるが,この熱処理をコイル巻き線の前に行い,完成した線材を用いてコイルに巻く方法。通常の超伝導マグネットはこの方法で作製される。
リトル
W.A.Little
アメリカの物理学者。1964年に発表された有機超伝導体における超伝導機構の提案者として著名。その内容は,側鎖基を持つ一次元の有機超伝導体においては主鎖を運動する電子が側鎖基の分極を誘起するので,BCS理論における格子運動のかわりに高いエネルギーを側鎖基の励起子を使って高温超伝導体が実現するだろうとの予言である。これをリトルの超伝導機構といい,現在まで実験的にはその存在は確認されてないが,有機超伝導体,あるいは広く低次元系における超伝導の研究の発端となった。
粒界ジョセフソン接合
grain boundary Josephson junction
ジョセフソン接合の一種,特に,酸化物高温超伝導体の結晶粒界を利用して作製されている。初期には自然にできる粒界が用いられていたが,その後,人工的に粒界を形成した接合が作製された。形成方法により,主に,三つに分類される。結晶方位の異なる基板を貼り合わせ,その上に超伝導膜を作製したバイクリスタル接合,基板上の一部に薄膜いシード層を堆積後,超伝導膜をエピタキシャルに作製したバイエピタキシャル接合,基板に段差を形成しその上に超伝導膜を作製したステップエッジ接合などがある。
量子渦
quantized vortex
全系が一つの波動関数により表せる巨視的量子系における渦,波動関数の一価性により,この渦に関係した物理量が量子化される。このような渦として,超伝導体および超流動へリウムにおける渦糸が知られている。前者では磁束が,後者では超流体の循環が量子化される。
量子化磁束
quantized flux
第2種超伝導体において,磁束を運ぶ最小の単位。Φ0=h/2e(h:プランク定数,e電子の素電荷)で表される。超伝導対波動関数のゲージ不変な位相の一価性により決定される。具体的には,Φ0=2.07×10-15Wbの大きさを持つ。
量子干渉素子
quantum interference effect
量子力学的な波動の干渉効果。量子力学の波動関数の重ね合せの原理に由来する。例えば,電子波を二つのパスに分岐したあと,ある点で合流させると,合流点での波動関数は,第1のパスを経た電子の波動関数と,第2のパスを経たそれとの重ね合わせとなる。このため,合流点での電子の存在確率は,上記二つの波動関数の位相の差に依存することになる。すなわち,この位相差が0または2πの整数倍の場合には強め合う干渉となり,位相差がπの奇数倍の場合には打ち消し合う干渉となる。
臨界温度
critical temperature
一般に,ある臨界現象が起きる温度。超伝導体の場合,超伝導転移温度をあらわすことが多い。超伝導状態は三つの臨界条件(温度・磁場・電流密度)のもとでのみ実現される。他の条件を一定としたとき,超伝導状態を維持できる最大の温度。
臨界磁界
critical magnetic field
臨界磁場と同義
臨界磁場
critical magnetic field
一般に,ある臨界現象が起きる磁場。第1種超伝導体の場合,超伝導状態を保つことのできる最大磁場。第2種超伝導体の場合,上部臨界磁場と下部臨界磁場の二つの特徴的磁場がある。これらは,温度・圧力などの外的条件に依存する。
臨界状態モデル
critical state model
磁束のピン止めを考慮したときの第2種超伝導体の電磁応答を記述するモデル。超伝導体内の各点で,磁束に対するローレンツ力が,その点でのピン止め力とつり合うように電流(臨界電流)が実現されると考える。電流の磁場依存性によりビーンモデル,アンダーソン‐キムモデル,入江・山藤モデルなどが知られている。
臨界速度
critical velocity
粘性を持たない超流体の流動は,流速がある値を超えない限り,減衰せずに永久に持続する。この値を臨界速度という。散逸の素過程を考えると,容器壁との相互作用によって,速度vで流れる流体中にエネルギーE,運動量pの素励起が生成されるためには,E/p<vである必要がある。したがって,左辺の最小値が臨界速度を与える。(ランダウの基準)。超流動液体ヘリウムについては,渦糸の生成についてのこの条件が臨界速度を与える。
臨界電流
critical current
超伝導体にエネルギー散逸を起こさずに流すことのできる最大電流。同じ材料でもその断面積に依存する。
臨界電流密度
critical current density
超伝導体にエネルギーの散逸を起こさずに流すことのできる最大の電流密度。ピン止め中心のない理想的な超伝導体では,電流を流すとローレンツ力により磁束が運動しエネルギーを散逸するため,臨界電流密度は0となる。現実の超伝導体では,電流によるローレンツ力がピン止め力と等しくなるまで,エネルギーの散逸は起きない。すなわち,磁場の下では,臨界電流密度は磁束ピン止めの強さに依存する。
リンデ液化サイクル
Linde cycle
膨張機をしてジュール・トムソン膨張弁(絞り弁,JT弁)のみを用いて構成された気体の冷凍・液化サイクル。気体は圧縮機で圧縮され,熱交換機で予冷された後,JT弁でジュール・トムソン膨張し,一部は液体となる。残った液体は
熱交換器を経て再び圧縮される。リンデ液化サイクルで液化させるためには,逆転温度以下の状態から膨張させなければならないため,水素やヘリウムについては単純なリンデサイクルは使えない。