超伝導用語事典



マイスナー効果
Meissner effect

超伝導体において内部にある磁束を外部に排除しようとする効果。電気抵抗0という性質からは導くことができない、超伝導体の最も基本的性質。


マイスナー状態
Meissner state

超伝導体においてマイスナー効果により、磁場を排除した状態。反磁場効果を無視したとき、第1種超伝導体では超伝導状態のすべての領域で、また第2種超伝導体では下部臨界磁場以下で実現される。


マクミランの式
McMillan's equation

超伝導の強結合理論においてオーダーパラメータは異常グリーン関数であり、周波数ωの関数となる。この関数はある積分方程式(エリアシュベルグ方程式)を満たすが、その解は一般には数値的に求める必要がある。超伝導転移温度はこの異常グリーン関数が有限値をとり始める温度であり、エリアシュベルグ方程式を線形化することで求められる。マクミランは、この線形化した方程式を近似的に解いて転移温度Tcの表式を求めた。これをマクミランの式という。


マージナルフェルミ流体
margial Fermi liquid

高温超伝導体の常伝導相におけるいわゆる異常金属状態を説明するために提出された概念である。通常のフェルミ流体では電子の自己エネルギーの虚数部がエネルギーωよりも小さく、それが準粒子が定義されるための条件となっているが、マージナルフェルミ流体ではωlnωという対数依存性を持つとされており、最も弱い対数発散でフェルミ流体が破れているという意味で“マージナル”という言葉が使われている。最初は現象論的に導入された理論であったが、マヨナラフェルミオンなどを使った微視的理論なども提出され、非フェルミ流体としての一つのユニバーサリティクラスとして認知されつつある。


マッチング効果
matching effect

ピーク効果の一種。周期的なピン止め中心の配列と磁束格子の配列が、ある簡単な整数比になっていた(マッチした)ときに、大きなピン止め力を受け磁束の運動が抑制される現象。このとき、大きな臨界電流が得られる。


マドックの安定化基準
Maddock's stability criterion

超伝導線材の安定化を確保するための基準の一つ。超伝導線材の完全安定化においては、線材長手方向の温度勾配は考慮されてないが、線材の一部分が常伝導遷移した場合、常伝導領域から超伝導領域に向かって温度勾配が生じ、熱伝導による冷却効果が期待できる。この冷却効果を考慮に入れた安定化基準がマドックの安定化基準であり、完全安定化を達成するステクレーの基準よりも緩い基準となる。


マトリクス比
matrix to superconductor ratio

複合多芯線材において、超伝導フィラメントの周りの銅やアルミニウムなどの常伝導部分(これをマトリクスという)と、超伝導フィラメントの体積比をいう。マトリクスが銅の場合には特に銅比という。マトリクスは超伝導線材を安定化させる役目をはたし、安定化材と呼ばれる。完全のためには、マトリクス比は高くしたほうが良いが、一方で超伝導機器を小型化するにはできるだけ小さいほうが望ましく、実際は両者の兼合いで決まる。