超伝導用語事典



コイルガン
coil gun

電磁力を利用して、地上から宇宙空間へ物資を投擲して輸送する加速システムの一つ。原理はリニアモータと同じであり、駆動コイルと、その中を移動する物資を収めたパケットコイルからなる。両コイルを超伝導化するとジュール損失を抑えてコイル電流を増加でき供給電力を有効に物資の加速のために使うことができる。


高温超伝導体
high temperature (high-Tc) superconductor

従来は臨界温度Tcが10K以上の超伝導体を指した。最近ではTcが30K以上のもの、あるいは液体窒素温度である77K以上のTcを有する物質について呼ばれる


高温超伝導のメカニズム
mechanism of high-Tc superconductivity

電子間のクーロン斥力が強い強相関電子系である銅酸化物高温超伝導体においてなぜ高い転移温度を持つ強力な超伝導が発現するかは現代物性物理学の最も大きな問題の一つであり、高温超伝導のメカニズムとして盛んに研究されている。現在の主流は電子・格子相互作用よりも磁性の自由度が超伝導と深く関わっているとする考えであるが、その中でもスピンの反強磁性的なゆらぎを主張するグループや1重項の生成を主眼に考えるグループ(RVB理論)など多くの異なる理論がある。


合金系超伝導材料
superconducting alloy material

合金の超伝導材料。Ni-Ti合金やNb-Zr合金がよく知られている。化合物系超伝導材料に比べて展延性に富み、加工性が良いことから、超伝導磁石や送電用線材として広く利用されている。他に、Pb-Bi合金やMo-Re合金、Moを主体としたアモルファス合金などもある。


高磁場超伝導体
high field superconductor

超伝導磁石に用いられる超伝導材料。具体的には、高い超伝導臨界温度(8〜9K以上)、高い上部臨界磁場(〜7T以上)、高い臨界電流密度(105〜106A/cm2以上)を持つ不均質第2種超伝導体である。代表的なものとしてNb合金、A15型化合物、シェブレル相化合物などがある。


硬超伝導体
hard superconductor

不均質第2種超伝導体と同義


交流磁化率法
AC susceptibility method

超伝導体に微小振幅の交流磁場を印加し、その応答から超伝導体の磁気遮蔽特性などを測定する方法。通常、互いに逆向きに巻かれた一対の検出コイルの一方に超伝導体を挿入し、励起用のコイルから交流磁場に対する応答を測定する。


交流ジョセフソン効果
AC Josephson effect

ジョセフソン接合に直流電圧Vを印加した時、接合の位相差が時間依存性を持ち、高周波の電流が発生する現象。高周波電流の周波数は、2eV/hで与えられ、ジョセフソン周波数と呼ぶ。ここで、hはプランク定数、eは電子の電荷。この発振現象は、外部から接合に高周波を照射すると、電流電圧特性にシャピロステップと呼ばれる低電圧ステップが観測されることから確認された。


交流損失
AC loss

超伝導体や超伝導線材において、交流の電流や磁界をかけた場合に発生するエネルギー損失。主に商用電力など、低周波の場合を指すことが多い。超伝導体単体においては、電流(磁界)分布が履歴を示すことによるヒステリシス損失が主なものであり、これは周波数に依存しない。超伝導線材においては、常伝導マトリクス中における渦電流損失や、超伝導フィラメント同士が結合することによる結合損失などがこれに加わり、これらは周波数が高くなると共に増大する。


交流超伝導線材
superconductor for AC ( alternating current ) aplication

交流電流や交流磁界のもとで使用される多心超伝導線材。多心線材の交流損失には、ヒステリシス損失、結合損失、渦電流損失の3つの主なものがある。ヒステリシス損失は超伝導フィラメントを極細化することで低減でき、結合損失はツイストピッチを小さくしたり、高抵抗のマトリクスを用いることで、また渦電流損失は高抵抗マトリクスでそれぞれ低減される。交流用の線材は、これら3つの損失ができるだけ小さくなるように設計・製作される。


高臨界温度超伝導体
high critical temperature superconductor

超伝導の臨界温度Tcの高い超伝導体。現在最高のTcはHgBa2Ca2Cu3O8+δの135Kである。元素で最高のTcはNbの9.25K、有機化合物で最高のTcはκ-(BEDT-TTF)2Cu[N(Cn)2]Brの11.8K、金属間化合物で最高のTcはNb3Geの23K、フラーレン化合物で最高のTcはCs2RbC60の33Kである。


国際実用温度目盛
International Temperature Scale

高い精度で熱力学温度と一致することが確認されており、しかも比較的容易に実現できる再現性のよい実用的な温度計測法で、国際度量衡委員会によって認められたもの。現在有効な国際温度目盛はITS-90 (International Temperature Scale of 1990 )と呼ばれ、T90と標記される。0.65K以上の温度領域での複数の「定義定点」とその補間法が規定されている。ITS-90以前の同様の目盛りとして、1968年に取り決められた国際実用温度目盛(IPTS-68, T68)がある。室温以下の低温におけるIPTS-68とITS-90との間には最大14mKの差がある。


極細多芯線材
ultra fine multifilamentary conductor

多心線材とほぼ同じ意味に用いられるが、特に交流での応用のために、0.1μmオーダの径の極細超伝導フィラメントを、1万本を超える数で規則正しく常伝導金属のマトリクス中に配置した超伝導線材を極細多心線材ということがある。


コヒーレンス因子
coherence factor

BCS理論においては電子の対生成のためにフェルミ面の近傍で電子状態に再構成が起こる。具体的には、電子の生成消滅演算子C, C-k-σがボゴロンの演算子γ,γ-k-σを用いて
C= υkγ + υkγ-k-σ
C-k-σ= -υkγ+υkγ-k-σ
と書けるが、この線形変数のυkをコヒーレンス因子という。これらのコヒーレンス因子は観測する物理量によって異なる形で標識に入るために異なる温度依存性を与える。これがBCS理論の正当性を決定付けた。


コプレーナ型
coplanar type

単一面上に作製したデバイス。多層構造を用いた積層型デバイスと対比される。単層構造であるため作製が容易となる。ジョセフソン接合では粒界ジョセフソン接合がこの型である。また、信号伝送線路としてはコプレーナ線路があり、多層型の超伝導ストリップ線路に対比される。


コレクティブピンニング
collective pinning

第2種超伝導体中において磁束はただ一つのピン止め中心とだけでなく、周りの磁束との相互作用を通じ多くのピン止め中心とも相互作用する。このように磁束の集団(磁束バンドル)と多くのピン止め中心との相互作用により決定されるピン止め機構をコレクティブピンニング(集団ピン止め)という


混合状態
mixed state

第2種超伝導体において、常伝導コアを持つ渦糸が侵入し、超伝導領域と常伝導領域がミクロに混在している状態。理想的超伝導体では、このときアブリコソフ格子が形成される。この状態は、下部臨界磁場以上、上部臨界磁場以下の磁場において実現される。第2種超伝導体では、常伝導領域と超伝導領域の境界の表面エネルギーが負であるため、常伝導領域は可能な限り細分化され、各常伝導領域が量子化磁束を持つようになる。


コンボルバ
convolver

アナログ信号処理の一方法。参照信号と測定信号の相関を取ることにより信号処理を行う。高速に相関をとる為遅延線を用いて相関積分をアナログ的に行う。遅延線としては、超伝導ストリップ線路が用いられる。コンボルバの性能は遅延線の損失により決まる為、超伝導線路の低損失性が非常に重要となる。現在用いられている弾性表面波を用いたものに比べて高速のものが期待できる。