超伝導用語事典



異常表皮効果
anomalus skin effct

電磁波が古典的表皮深さより奥まで侵入する現象。低温において金属中の電子の平均自由行程が長くなり、実効的な電気伝導度が低下する事により起こる。電子が散乱から散乱までの間、異なる電場の影響を受けて運動する事を考慮する事により説明できる。


位相コヒーレント状態
phase coherent state

量子力学的な粒子は波の性質を併せ持つことがその顕著な特徴であるが、さらに他粒子系になると波動場の演算子により系は記述される(第2量子化)。この波動場の演算子をその振幅と位相で表した時、それぞれも演算子となる。振幅の2乗 ルクの不確定性原理に従うが、巨視的な系では位相の演算子の固有状態が実現できる。超伝導状態や超流動状態はまさにその典型的な例で、位相情報が巨視的なスケールで保持されており、このような状態を位相コヒーレント状態と呼ぶ。


異方性超流体
anisotropic superfluid

超流動性を示す液体の中で、特に超流動秩序パラメータが等方的ではなく方向に依存するものの事。2.6mK以下の温度でおきる液体ヘリウム3の超流動相は異方的超流体の現在までに確認された唯一の例である。電子と同様に、フェルミ粒子であるヘリウム3原子は電子がクーパー対をつくって超伝導転移を起こすのと丁度同じように、引力相互作用によって凝縮対をなし超流動相転移を起こす。ただし、ヘリウム3間の相互作用にはコアの斥力があるために、凝縮対の波動関数は等方的なs波ではなく、p波的となる。したがって、この凝縮体は空間的に等方的ではなく、超流動秩序パラメータはある方向では消滅する。また、二つのスピンは3重項状態をとるため、磁気的な超流動体となる。


入江-山藤モデル
Irie-Yamafuji model

金属系超伝導材料の混合状態における量子化磁束の巨視的ピン止め力Fp=JcBを磁束密度Bの関数としてFp=αcBγと表すモデル。Jcは臨界電流密度、αcγは物質パラメータで、αcの温度及びひずみ依存性にはかなり一般的に成立する法則が知られており、γは0≤γ≤1の値をとる。このモデルはγ=1の極限でビーン臨界状態モデルに帰着し、低磁場でのピン止め力の振る舞いをよく表すが、高磁場側に適用する時にはFp=αc(B/Bc2)γ[1-(B/Bc2)]δの修正モデルが使われる。Bc2は上部臨界磁束密度で、γは0<γ≤2の値をとるパラメータである。


インサイチュー法
in-situ process

Cu-NbやCu-Vの2元合金をアーク溶解炉などで溶解し、固溶した状態から急冷して、Cu母剤の中にNb,Vが分散凝固した状態のインゴットを作製し、これを細線化し、Sn,Gaを外部から拡散させて、繊維状になっているNb,Vの表面にNb3Sn相、V3Ga相を生成させる方法。工程が簡単で、大量生産向きである。線材の機械的特性に優れた方法である。


イントリンシックピンニング
intrinsic pinning

層状の超伝導体が持つイントリンシックな(固有の)構造により発生する磁束のピン止め機構の事。特に、層状構造をもつ銅酸化物超伝導体において、層に平行に磁場を印加した時のピン止め機構として立木と高橋により提案された。析出物や放射線照射などによる人工的なピン止めに対比させ用いられる。


インプットコイル
input coil

SQUID磁力計で用いられる信号磁界の伝達用コイル。集積化技術を用いた薄膜トランスにより構成される。SQUID磁力計では信号のピックは磁界検出コイルによりピックアップされ、インプットコイルを介して伝達された信号をSQUIDにより検出される。SQUID単体を用いる場合に比べて検出感度が2桁以上改善される。また、検出コイルをグラジオメータ方式とすることにより環境磁気ノイズの除去が可能である。