超伝導用語事典



Bi-Sr-Ca-Cu-O系
Bi-Sr-Ca-Cu-O system

元素Bi、Sr、Ca、Cu、Oで構成される酸化物高温超伝導体。Bi系ともいう。化学式Bi2Sr2Can-1CunO2n+4+δで表される。n=1,2,3の化合物は固相反応法で合成できるが、n≥4の化合物は薄膜においてのみ得られる。超伝導臨界温度は〜20K(n=1)、〜80K(n=2)、〜110K(n=3)である。弱く結合したBi2O22重層を結晶中に含むため、酸化物高温超伝導体の中では最も異方性が大きく、さらにこの層間にハロゲン元素などをインタカレートすることができる。


ピーク効果
peak effect

第2種超伝導体において、ある条件のもとで磁束のピン止め力が増大する現象。一般に、超伝導体伝の臨界電流密度は磁場の増加に対し単調に減少するが、ときに中間磁場で増大を示す場合がある。この原因として、シンクロナイゼーション効果、マッチング効果(超伝導体の中のピン止めセンターの分布の周期と磁束間隔が一致する場合)、磁場誘起のピン止め中心の影響(超伝導体の弱い部分が磁場により常伝導状態となり、ピン止め中心として働く場合)などが知られている。


BCS理論
BCS theory

バーディーン・クーパー・シュリーファー理論と同義。


ヒステリシス損〔失〕
hysteresis loss

外場の変化に対し不可逆な応答を示すとき、その物質はヒステリシスを持つという。第2種超伝導体の場合、不可逆磁場以下で外部磁場に対し、磁化がヒステリシスを示す。交流磁場1周期に対し、磁化ヒステリシス曲線を積分しただけのエネルギーが消費される。超伝導体を交流で駆動する場合、ヒステリシス損失が低いことが望まれる。


ピパード方程式
Pippard equation

超伝導体における電磁応答は正確にはロンドン方程式のような局在的な関係ではなく、コヒーレンス長程度の非局在性を持つ。これを考慮した方程式をピパードが1953年に提出し、ピパード方程式と呼ばれている。


表面超伝導
surface suprconductivity

超伝導は外部磁場をかけていくと、バルクの超伝導はある程度の磁場の強さ(臨界磁場)を境にして消滅する。この臨界磁場は第1種超伝導体では熱力学的臨界磁場、第2種超伝導体では上部臨界磁場である。ところがバルクの超伝導が消滅しているにもかかわらず表面からコヒーレンス長程度に局在した超伝導が存在しうる。これを表面超伝導という。


表面バリア
surface barrier

超伝導体への磁束の侵入を妨げる障壁。超伝導体表面を流れる表面電流と鏡像力による競合で生じるビーン・リビングストーンバリアや、試料の幾何学的な形状により生じる形状バリアなどが知られている。


表面ピンニング
surface pinning

超伝導体表面の凹凸や表面付近の欠陥による磁束のピン止め機構のこと。超伝導体の不可逆表面電流の起因として考えられた。


ピン止め
pinning

磁束ピン止め参考


ビーン臨界状態モデル
Bean critical state model

臨界状態モデルの一種。超伝導体内部で磁場の変化があった部分に、履歴に応じた向きに一定の臨界電流が流れることを仮定する。磁場の増加とともに、ピン止め力が増加してしまうという物理的不自然さはあるが、超伝導体の多くの電磁現象を説明する出発点として広く用いられている。