超伝導Q&A -Answer
Q.液体ヘリウムって何ですか?
A.通常はヘリウム(質量数4=陽子2個+中性子2個)のことです(質量数3のものとは著しく異なった性質を示します)。液相にはヘリウムTと呼ばれる高温相と、ヘリウムU(低温相)があります。常圧での沸点は4.2K、密度は0.125g/cm3。ヘリウムTは通常の液体と考えられ、粘度は水の約500分の1程度です。これをさらに冷却していくと、超流動転移(λ転移)し、熱容量(比熱)が突然10倍以上に増加するほか、熱伝導率(約100万倍)、粘度(ゼロ)など、多くの物理量が異常に変化します。これらはすべて、ヘリウム原子が軽いため、量子力学的な効果が現れてくるためです。
Q.超伝導の半導体ってあるの?
A.
半導体とは、電気的絶縁性が余りないが絶縁体よりは電気を通す物質です。平たく言えば、少しだけ電気が流れる物質、温度を上げるとより流れやすくなる物質です。超伝導とは低温で電気抵抗が完全にゼロになる現象で、金属に近い物質がこの性質を示します。超伝導半導体は無いと言って良いでしょう。ただし、超伝導体をシリコンのような半導体の基板上に作製して、複雑な機能を有する電子デバイスの研究が盛んに行われています。
Q.超伝導は環境問題に役立つの?
A.
1. 超伝導磁気分離技術および超伝導磁気分析技術は、原理的に2次汚染を発生しないクリーンな環境・資源対応技術です。これが実現すると、海洋・湖沼の赤潮、アオコなどの浄化、都市排水処理、ごみ・産業廃棄物のリサイクル、資源選鉱、地熱水処などに威力を発揮すると期待されます。また、高温超伝導体薄膜は超高感度の大気汚染モニタリング技術、は中性子など放射線のモニタリング技術への応用が可能となります。
2. 超伝導を利用した送電システム、変電システム、電力貯蔵システムにより、昼夜・夏冬の発電電力と消費電力のギャップをうまく調整することができます。
3. リニアモーターカーにより環境に優しい省エネルギー超高速輸送が実現できます。
4. 超伝導体により、半導体と比べて桁違いの高速性と省電力(半導体素子の千分の一の電力消費)で動作する素子が可能となるため、盛んに研究が行われています。
Q.どんな物質でも温度を下げたら超伝導になるの?
A.
そういう訳ではありません。電気抵抗がゼロにならない物質のほうがむしろ圧倒的に多いのです。それでも、たくさんの金属は低温にすると超伝導を示すことがわかっており、超伝導は決して異常な性質ではないと考えられています。
Q.超伝導の避雷針を作ったら、雷は落ちやすくなるの?
A.
避雷針は、高い建物の上と地面の電位が等しくするだけでなく、雷の放電路を作るという役割が重要です。避雷針先端からの放電により付近の空気がイオン化されると、雷の強い電界強度によって電子雪崩が起こり、雷の先端に対する放電路が形成されます。雷の主放電はこの放電路を通って行われるので、避雷針先端が受雷部となり、付近の突起物に落雷する事が防止されます。そこで、超伝導で避雷針を作ってもあまり効果は変わらないと考えられます。
Q.高温超伝導体はなぜ黒いの?
A.
高温超伝導は銅の酸化物でできていますが、銅の酸化物が黒いので、高温超伝導体も黒いというわけではありません。高温超伝導体は酸化物セラミックスで出来ていますが、自由に動ける電子の数が少ないので、金属と違って可視光(人間の目に見える光)を反射する能力がないためピカピカ光るのではなく、可視光を吸収してしまい。真っ黒に見えるのです。
Q.液体窒素は色が無いの?
A.
液体窒素は無色透明です。室温で気体であるたいていの物質は無色透明で液体になっても無色です。例外としては、塩素ガス(黄色)、臭素ガス(茶褐色)およびこれらの液体です。色が付くのは、これらのガス(気体)が2原子分子になっており、その電子構造に由来します。なお、ヘリウムやアルゴンなど、単原子気体は無色透明です。
Q.液体酸素も色が無いの?
A.
気体が無色透明なので、液体もそのように思うかもしれませんが、実は、淡青色です。このことを理解するためには、量子力学(りょうしりきがく)の勉強が必要です。
Q.液体ヘリウムって何ですか?
A.
ヘリウム元素は元素記号Heで表記され、原子番号2の、非常に軽い元素です。空気(主に窒素でできています)よりも軽いため、気球や風船を浮かすガスとしてよく用いられています。軽いということと、電気的に中性であるということ等から、融点(気体が液体になる温度)が非常に低く、絶対温度 4 K(ケルビン)という非常に低い温度で液体になります。4 Kと言ったら、℃になおすと約「−269℃」になります。大変な低温ですね。液体窒素の温度(約77K)よりも数段低い温度です。
ヘリウムの液化は1908年、「カマリング・オネス」というオランダの学者が成功させました。オネスは、この液体ヘリウムを冷媒として使って、数Kの温度での水銀の抵抗測定を行った結果、絶対温度 4 K ぐらいで水銀の電気抵抗がゼロになることを発見しました。これは1911年のことで、超伝導の発見です。その後オネスは、1915年にノーベル物理学賞を受賞しました。
Q.超伝導って磁石と仲が悪いのですか?
A.
磁石からはN極からS極へと、磁力線(じりょくせん)と言う線が出ています。それにより磁場というものが発生します。超伝導は、この磁場をはじく特性(マイスナー効果)を持っているので、そういった意味では、磁石と仲が悪いといえるもしれません。しかし、銅酸化物などの高温超伝導体は、磁束ピニング効果と言って、逆に磁場を取り込むといった特性も持っています。そういうことを考慮すると、一概に磁石と仲が悪いとも言えません。
Q.リニアモーターカーが完成したら東京−大阪間は何時間かかるの?
A.
リニアモーターカーの最高時速は現在1時間に552キロメートルです。東京から大阪間の距離を大体550キロメートルとすると、単純な計算ですが、550÷552≒1、すなわちおよそ1時間で到着します。現在では新幹線で東京から大阪まで約3時間かかるのでリニアモーターカーはそのおよそ3分の1の時間で行くことが出来ます。
Q.超伝導の研究ってどこでやっているの?
A.
主に大学の研究室・企業の研究所や国立研究所などで行われています。国内で最も大きな研究所としては、「国際超伝導産業技術研究センター(ISTEC)」が有名です。ホームページのアドレスは以下です。
(http://www.istec.or.jp/SRL_homepage/SRL_ISTEC/cecter_indexJ.html)
その他には、インターネットのリンク先を探してみて下さい。
Q.臨界温度Tcって何ですか?
A.
この温度以下で超伝導現象がおこる境目の温度を言います。これより高い温度では、常伝導と呼びます。
Q.超伝導で象は浮くの?
A.
まだ実験した人はいませんが、間違いなく大丈夫です。
ISTECのホームページには人が浮いている画像が掲載されています[1]。また、現役力士の土佐ノ海も宙に浮きました。ちなみに土佐の海は体重159kgだそうです。
Reference
[1]http://www.istec.or.jp/SRL_homepage/SRLmain_top-J.html
Q.フラーレンて何ですか?
A.
フラーレンは炭素原子からできた物質でグラファイトやダイヤモンドの同素体です。
一つの分子を形成するための炭素の数はいろいろありますが、代表的なものは
炭素原子が60個集まって、できたC60フラーレンです。珍しいものと思われたかもしれませんが、身近に存在するもので有機物を燃やしたときのすすの中にも少量含まれています。
ナトリウムやカリウムなどアルカリ金属と反応させると超伝導体に変身します。
Q.高温超伝導体は毒なの?
A.
高温超伝導体を構成している元素で毒性が強いものがあるのは事実です。(たとえば水銀HgやタリウムTlなど)しかし、それら関してしっかりとした知識を見につけた人達が取り扱って作っているで、皆さんの前に出てくる超伝導体は危険なものではありません。でも、なめたり食べたりはしないで下さいね。病院の人間ドックのX線検査で使われているバリウムも硫酸バリウムだからこそ安全です。硫酸バリウム以外は、猛毒です。
Q.超伝導と超電導は何が違うの?
A.
超電導と超伝導,どちらが正しい用語なのでしょう?結論から言うとどちらも正しい
用語なのです。
英語では[super-conductivity=何でもかんでも、ものすごく簡単に伝える性質]なので,直訳すれば電気でも熱でもイオンでも超伝導で構いません。しかし、まったく抵抗なしに運べるのは、”電気”の超伝導だけです。このため、電気の場合だけ”超伝導”と名乗っています。ただし、電気抵抗ゼロで電流を流せるという現象を強調する言葉として超電導と呼ぶのでこれも正しいのです。
通常,基礎的分野の学会などでは「超伝導」を用いることが多く,産業界などの応用分野では「超電導」を用いています。面白いことに、文部科学省と朝日新聞は「超伝導」、経済産業省や読売新聞では「超電導」を使っています。
Q.液体窒素ってどうして冷たいの?
A.
液体窒素は読んで字のごとく窒素を液体にしたものです。液体窒素を作るにはその窒素を冷やさないといけません。温度でいうと絶対温度77度(摂氏-196℃)まで冷やさないといけません。だから液体といっても-196℃、非常に冷たいのです。
Q.超伝導の星はあるの?
A.
現在のところ見つかっていません。しかし太陽などの恒星から十分離れた寒い惑星や衛星ならばその星の成分によっては超伝導になっているかもしれません。例えば、水素だけで出来ている巨大な星では水素原子が金属になって超伝導になっていると予想されます。
また、中性子星という特殊な星では、中性子が超流動状態となって、地球磁場の1兆倍ぐらいの磁場を発生しているのではないかと考えられています。
Q.超伝導のテレビってあるの?
A.
現在のところありません。もしあればどんなことが出来るでしょうか?皆さんも考えてみて下さい。
Q.リニアモーターカーって速いのですか?
A.
リニアモーターカーの最大時速は有人で552km/h(平成11年4月14日に記録されました。有人というのはお客さんが乗ったと言う意味です)なので東京−大阪間550kmはおよそ1時間で行くことが出来ます。
Q.
超伝導はどうして冷たくないと働かないの?
A.
少し難しい説明になりますが、超伝導状態では電子ふたつが組になって電気を運ぶ事がわかっています。これをクーパー対といいます.温度が高くなると熱エネルギーによってこのクーパー対が壊れてしまい,超伝導ではなくなってしまいます.だから超伝導は低温で起こるのです。このことが判るまでに、超伝導の発見から50年がかかりました。超伝導を発見したオネス、このような説明に成功したバーディーン、クーパー、シュリーファーは、皆、ノーベル物理学賞を受賞しました。
Q.超伝導金属ってあるの?
A.
もちろんあります.自然界にある金属で,低温で超伝導になるものは少なくありません。アルミニウムや亜鉛,水銀といった比較的身近な金属でも低温では超伝導になるのです。鉛は絶対温度2.4 K(度)で,水銀は4.16 Kで超伝導になります.単体そのままで超伝導になる金属は現在では約30種類が知られています。
Q.超伝導のアンテナはあるの?
A.
はい、あります。アンテナに超伝導体を使うと非常に感度のいいアンテナができます。たとば、携帯電話(けいたいでんわ)の基地(きち)局に超伝導アンテナを使うとつながりやすく,範囲も広くなります。
Q.超伝導は宇宙でも利用できますか?
A.
すごく良い質問です。超伝導は空気がなくても起こりますから、宇宙でも超伝導はつかえます。宇宙では空気がないので温度は非常に低くなっています。ですから、低温でしか使えない超伝導は、地球上よりかえって宇宙のほうが使いやすいのです。宇宙船や宇宙ステーションなどで応用が期待されています。
Q.超伝導体って自然界にあるの?
A.
多くの金属は単体で超伝導体になります。ですから鉛や水銀は自然界に存在する超伝導体といえます。ただし、酸化物の高温超伝導体のように複雑な化合物は、自然に出来る確率は極めて低いでしょう。物理学者や化学者が、一生懸命探して作り出した人工的な物質が、高い機能を示す超伝導体のようです。
Q.超伝導体って簡単に作れるの?
A.
高温超伝導体の多くはセラミックス材料で出来ており、原料(試薬)さえあれば、思ったより簡単に作れます。原料となる金属酸化物を混ぜて、瀬戸物を焼く電気炉で加熱すると出来ます。材料と電気炉があれば誰でも作れますが、いろいろ注意しなければいけない点があるので、先生の指導を受けながらでないと危険なこともあります。
Q.超伝導体って高価なの?
A.
単体の金属としてはそれほど高くありません。薬品(試薬)メーカーで買うことが出来ます。しかし、酸化物の高温超伝導体は特性にもよりますが決して安価ではありません。特に、セラミックスはもろくて硬いので加工が難しく特殊な技術が必要なので,線材などにすると高価になってしまいます。
Q.超伝導体ってお店で買えるんですか?
A.
ふつうの薬屋さんとかスーパーマーケットでは買えません。でも、大学や会社の研究所の人たちは試薬(しやく)メーカーなどからお金を払って購入することが出来ます。特性や量によって値段はまちまちです。
Q.身の回りに超伝導体ってあるの?
A.
家庭のテレビや電話にはまだ超伝導体は使われていませんが、将来、使われるようになるかもしれません。ところで、皆さんの財布にある一円玉はアルミニウム製ですから、非常に低い温度(絶対温度1.2 K)では超伝導になります。
Q.超伝導があると,生活が便利になるの?
A.
電気抵抗がゼロになりますから、電気エネルギーを効率よく使えるようになります。また、リニアモーターカーなどの乗り物にも使われますから、応用が実現すれば生活も便利になるでしょう。
Q.冷やさなくてもいい超伝導ってあるの?
A.
冷やさなくても良い、すなわち、室温で使える常温超伝導体は多くの研究者や技術者の夢です。残念ながらまだ見つかっていませんが、非常に夢のあるテーマだと思います。みなさんが大人になる頃には見つかっているかもしれません。いや、皆さん自身が発見することに挑戦してみてはどうでしょう。
Q.赤や緑の超伝導体ってあるのですか?
A.
あったら楽しいでしょうね。でも残念ながら、そのようにカラフルな超伝導体はほとんど無いと考えられています。
少しむずかしい説明になりますが、超伝導体とはいえ室温では金属がほとんどです。ドゥルーデという物理学者のモデルによれば、金属はある特定の周波数(プラズマ周波数)より低い電磁場を全反射してしまうという特性があります。そのため、緑や赤といった単一の色のみが目立つ超伝導体はあまり期待できません。
Q.超イオン伝導があるって聞きました。それはどのようなものですか?
A.
イオン伝導とは、イオン性物質の液体(高温で融解したNaClなど)が示す電気伝導です。金属や普通の半導体では電子が電気を運ぶのに対して、この場合には、イオンが電気を運びます。酸化アルミニウムなど、白色や無色の物質では基本的にイオン伝導性がありません。それは電気を運ぶことが出来るはずのイオンが格子に束縛されて自由に動けないからです。
ところが超イオン伝導体の場合、イオン性物質の固体でありながらある程度の高温では電気伝導性を持ちます。これを用いて、自動車エンジン用の燃料センサーや酸素濃度を測るセンサーが実用化されています。そうそう、携帯電話に使われている電池(リチウム二次電池)には、超イオン伝導体や超イオン・電子混合導電体が、使われているのですよ。
Q.超伝導の屋根ってあるんですか?
A.
今のところ、提案されていませんが、もしあったらどんな面白いことが起こるでしょうか?超伝導ではなく、太陽電池の屋根だったら、皆さんもご存じですね!
Q.地球の中心部は超伝導になっているの?
A.
いいえ。超伝導はせいぜい-100℃よりも低い温度でしか実現されていないので、約6000℃であることが知られている地球の中心部で超伝導体があるとは考えにくいことです。しかし、銀河系の彼方、恒星から非常に距離の離れた星では、超高圧の星の内部で超伝導が起こっていることも十分考えられます。例えば”金属水素”で出来ている星があれば、1000℃以上でも超伝導が起こっていても不思議ではありません。
Q.超伝導のコンピュータってあるの?
A.
ピンポーン! 超伝導を使うと、ものすごく高速なコンピュータが出来ることがわかっており、世界中で研究がさかんに行われています。少し難しい説明になりますが、計算速度が理論上圧倒的に速い上に、超伝導コンピュータは熱をほとんど発生しないために、超小型の回路が作れるからです。今のところは、大きな研究所や大学で使う大型のコンピュータの開発が中心ですが、将来は、皆さんの自宅や携帯で使うことの出来るパソコンが完成するかもしれません。
Q.超伝導を使うとすごいロケットが出来ますか?
A.
地球周回軌道や宇宙の真空中で、超伝導を使って超スピードで走れる乗り物の方式はまだ提案されていません。皆さんも考えてみたらいかがですか? ただし、現在の物理学の常識では、”光よりも速く走れる物体はない”というアインシュタイン博士の説”一般的相対性理論”が有力です。
Q.超伝導を使うと電気代がタダになるのですか?
A.
面白い質問ですが、残念ながら答えは”いいえ!”です。超伝導を使っても、電流を泉から湧き出るかのように無限に作り出せるということではありません。超伝導を使うことによるメリットは抵抗がないということにより、送電する時にジュール熱による損失がないということなのです。そういうわけで、従来の方法よりも電気代は安くなるとは思いますが、無料になるということはないのです。
Q.今、超伝導は、はやっているの?
A.
1986年の高温超伝導体発見時の超伝導フィーバーが再び復活しそうな気配があります。今年(2001年)はじめに発見されたMgB2という物質が超伝導という分野で、再度世界の注目を集めています。
Q.超伝導を使うことで、雷の電力を貯蔵することはできますか?
A.
面白い質問ですね。確かに、普通の銅線などを使って雷の電力を貯蔵しようとするよりはまだ可能性があるかもしれません。なぜかというと、超伝導体は銅などと違ってジュール熱が発生しないので熱で装置が破壊されることがないかのように思えます。しかし、超伝導体には流せる電流密度に限界値があり、それは臨界電流密度と呼ばれます。つまり、ある一定の量以上の電流が流れると超伝導自体が壊れてしまうのです。結論から言うと、多分無理でしょう。
Q.磁石って超伝導と関係あるの?
A.
ものすごく良い質問です。物質に磁場を加えると、磁石のように二つの磁極N,Sを持つようになります。このことを物質の「磁化」と呼びます。磁場の強さに比例して磁場と同じ向きに磁化される物質を「常磁性体」、磁場とは逆の向きに磁化される物質を「反磁性体」と言います。物質によっては鉄のように強く磁化され磁場をゼロに戻しても磁化が残るものがあり、これは「強磁性体」と呼ばれいわゆる「(永久)磁石」がこれに当たります。
超伝導体はこのうちどれに相当するのでしょう?
1933年にドイツのマイスナーとオクセンフェルトという二人の研究者が、こんな実験をしました。純度の高いスズと鉛の結晶で円柱を作り、小さな磁場を加えた状態で温度を次第に下げてゆき、常伝導状態から超伝導状態に移るとき円柱の周りの磁場がどのように変化するかを測定したのです。その結果、驚くべき事実が明らかになりました。超伝導状態になったとたんに、磁場は超伝導体の外に押し出され内部には磁場が無くなることが判ったのです。
発見者の名前に因んで「マイスナー効果」と名づけられた(オクセンフェルトさんの立場がありませんね・・)この事実の発見によって、超伝導は単に電気抵抗がゼロになるだけでなくもっと奇妙な現象であることが明らかになりました。超伝導状態にある金属は、「外から小さい磁場をかけたときその内部を磁場から完全に遮蔽する性質」を持つのです。
これは、磁場からその内部を幾分遮蔽する性質、すなわち先ほど紹介した「反磁性」を究極に強めたものに相当し「完全反磁性」という呼ばれ方をします。超伝導状態になっている物質の上に棒磁石を載せると、磁石はフワッと宙に浮きます。磁石から発生する「磁力線」は完全反磁性を持つ超伝導体の内部に入り込むことができず、磁力線の張力が働くためです。
Q.超伝導セラミックスってあるの?
A.
沢山あります。1986年以降に、臨界温度(常伝導状態から超伝導状態に移り変わる温度)がそれまでに見つかっていた金属系の超伝導体と比べて遥かに高いセラミックス材料が立続けにいくつも発見され、いわゆる「高温超伝導体フィーバー」が世界中を駆け巡りました。当時学界に留まらない大ニュースとして各所で大きく取り上げられましたから、ご記憶の方もいらっしゃるかも知れませんね。
現在までに見つかっている高温超伝導セラミックスとしては、臨界温度が40K(Kは℃から273を引いた温度の単位で、40Kは-233℃に相当します)級の (La,Sr)2CuO4系、90K級のYBa2Cu3O7-δ系、100K級のBiSrCaCu2Ox系などがあります。完全反磁性が保たれる磁場の大きさ(印加磁場をある大きさ以上にしてしまうと、磁力線は超伝導体内部に侵入してしまいます。すなわち、完全反磁性が破れてしまうのです)が大きいこと、超伝導状態で対を作っている二つの電子間の距離(コヒーレンス長と呼ばれます)が非常に短いことなど、他の超伝導体には無い多くの性質を持っています。
Q.超伝導のモーターってあるのですか?
A.
あります。モーターのようなエネルギー機器には電流を流す導体が必要で、従来は銅やアルミニウムなどが用いられてきましたが、これを超伝導体で置き換えることで、抵抗で発生する熱損失を無くし、機器の効率を上げることが出来るわけです。モーターの他にも超伝導を利用したエネルギー機器には次のようなものが考えられ、実用化されているものも多く有ります。
超伝導電力送電ケーブル、超伝導発電機、超伝導電力貯蔵、リニアモーターカー(磁気浮上列車)など。
Q.超伝導の研究ってどこでやっているの?
A.
大学や国立研究所、また民間の企業でやっています。超伝導を専門に研究している機関として代表的なものに、国際超伝導産業技術研究センター(ISTEC)やその付設の超電導工学研究所(SRL)などがあります。
Q.なぜ超伝導状態では負の電荷を持つ電子同士が対を作るの?
A.
たいへんすばらしい質問です。このことを、バーディーン・クーパー・シュリーファーという3人のアメリカの物理学者が、以下のような考えで説明しました。オランダの物理学者オネスにより超伝導が発見されてから46年後の1957年に作られた理論です。少し長くて難しいのですが我慢して読んでみて下さい。
確かに負の電荷を持つ電子同士が引き合って対を作るというのは不思議な話ですね。これは実際、多くの科学者が頭を悩ませた難しい問題なのです。電子同士が対を作る理由を考える前に、電子という粒子が持つ性質を勉強しておくことにしましょう。
物質を構成する電子、陽子、中性子等の素粒子(物質の素になる一番小さい単位の粒のことです)やそれらが集まって出来る原子などの粒子の集団は、大きく二つのグループに分類されます。電子、陽子、中性子が属するフェルミ粒子と、ヘリウム原子などフェルミ粒子が偶数個集まってできたボーズ粒子です。両者の最も重要な違いは、フェルミ粒子は粒子一つ一つが全て異なるエネルギーを持たなければならない(「持たなければならない」なんていう表現はおかしいな、と感じるかもしれませんが、自然がそういう仕組みに出来上がっているのです。この事実を「パウリの原理」と呼びます)のに対して、ボーズ粒子は複数の粒子が同じエネルギーを持つことが出来ることです。さて、フェルミ粒子である金属内の電子の集団は、エネルギーの低い順に各エネルギー状態に一つずつ収容されてゆきます。金属中の電子の数は非常に大きいですから(1cm3あたり1022個程度!)集団全体としては極めて大きいエネルギーを持つことになります。一方、ボーズ粒子は一番低いエネルギー状態に粒子を幾つでも収容することが可能なので、フェルミ粒子と比較して集団全体のエネルギーを下げることが出来ます。結論を先に言ってしまうと、超伝導状態とは、実は「本来フェルミ粒子であるはずの電子が、対を作ってあたかもボーズ粒子のように振る舞い、最もエネルギーの低い状態に全ての粒子が入った(「凝縮した」なんて言い方をします)状態」なのです。
いよいよ本題にはいります。電子同士が対を作ると集団のエネルギーが下がって得をしそうなこと(「得をする」というのは、そのほうが安定した状態だ、という意味です)は何となく分かりましたが、では「どのようなメカニズムで」電子は対を作るのでしょう。
非常に多くの原子によって構成される固体中の電子の運動を考えてみます。固体中の電子は実はじっと静止しているのではなく、原子の間を高速で動き回っています。電子の運動方向は全くランダムですから、集団全体としては一定の運動方向を持っていません。外部から電圧をかけると、集団の運動が平均的に電圧の方向を向くことになり、これが電子の流れ、即ち電流として観測されるわけです。さて、有限の温度では固体を形成している原子は互いに連動して熱振動しています。電子だけでなく、原子も運動しているのです!これを格子振動と呼びます。従って固体中を流れる電子は障害なしにスムーズに動けるわけではなく、この格子振動によって散乱を受けることになります。これが「抵抗」と呼ばれるものの正体なのです。温度がゼロの時(絶対零度といい、セ氏-273℃に相当します)格子振動は無くなりますから「抵抗=0」即ち超伝導の状態が実現されても不思議は無いような気がします。けれども有限の温度でも超伝導状態が観測される事実は、電子と格子振動との相互作用からは説明がつきません。(実は、厳密には絶対零度においても「抵抗=0」にはなりません。)
科学者達は、超伝導が実現されるためには電子が通常の状態ではなく、前述した「凝縮した」状態にあることが必要であることは掴んでいました。けれども電子同士の相互作用、しかも引力相互作用を理論的に引き出すことがどうしても出来ずにいたのです。ところが、1950年に英国のフレーリッヒがこの問題を見事に解決することに成功しました。彼の説明は、「本来は電気抵抗の原因となる電子と格子の相互作用が、電子間の引力の起源となる」という正に'逆転の発想'に基づくものでした。
固体中を動き回る電子は、周囲の原子(陽イオン)を引きつけながら、即ち「陽イオンが整然と並んだ格子を歪めながら」運動します。この状態は、電子の存在する場所の正電荷の濃度が局部的に高くなった状態に対応しています。電子がその場から去ってしまえば格子の歪みは解消されるわけですが、歪みが回復する前にその近傍を別の電子が通過すると、その電子は高い正電荷濃度が達成された歪み領域に引きつけられることになります。格子の歪みが、二つの電子の引力相互作用を仲介する役割を果たすのです。こうして、引きつけ合い、対を作った二つの電子(「クーパー対」と呼ばれます)は何らの抵抗を受けることなく、結晶中を進行してゆきます。
なんだか騙されているような感じがするかもしれませんね。実際、メカニズムの詳細はこれほど単純なものではありません。ただ「電気抵抗の基となるものが超伝導の基ともなる」という矛盾を孕んだ、しかし厳然たる事実は、超伝導という現象のユニークさ、不思議さを我々に感じさせるものではないかと思います。
フレーリッヒ理論の登場後、超伝導メカニズムの解明は急速に進むことになります。
バーディーン・クーパー・シュリーファーの3人は、その理論発表後15年が経過した1972年にノーベル物理学賞を受賞しました。
Q.超伝導の電池ってあるの?
A.
たいへん面白い質問ですね。ピンポーン!です。
ただし、通常の電池の場合、化学エネルギーを電気として取り出しますが超伝導の電池の場合は、化学エネルギーを取り出すわけではありません。
超伝導体は、電気抵抗が0であることから、仮にリング状の超伝導体に電流を逃せば
電流はリングの中を永久に流れつづけることになります。つまり、(ほとんど)永久的に電流を蓄えることができるわけです。(もちろん、突然超伝導体が壊れてしまうと大変なことになりますが・・・)
ちなみに、超伝導のリングに永久電流が流れるということはコイルに永久に電流が流れ続けることに相当しエネルギーは「磁気エネルギー」として蓄えられていることになります。