SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No.2, April. 2009

YBCOナノ線材を作製!                _カリフォルニア工科大学_


 カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究者らは、多本数の超伝導YBCOナノ線材を作製した。この線材は、10 nmと薄く、長200 mであり、50 Kの温度範囲にわたるブロードな超伝導転移を示した。この材料は、ナノ線材ベースのSQUID,光子検出器、量子計算機、ナノ電子回路用として有用であろう。(Superconductor Week誌2009年2月号 Vol. 23, No. 1)
Caltechの化学科教授のJ. Health氏と同僚のKe Xu氏は、15 nm幅及び10 nm幅のナノ線材が液体窒素温度直上で超伝導になり始め、それぞれ約20 Kと約10 Kで完全に超伝導になることを見出した。20 nm幅のナノ線材は、真空引きした窒素温度約60 Kで完全に超伝導になった。
 「50 Kの転移幅は、SQUID応用に取って有利である。ナノ線材に基づくSQUIDは、デバイス中の1対のナノ線が超伝導になり始め、なお抵抗がある状態にあるとき機能する。デバイスの抵抗は、磁束が変化するにつれて量子干渉によって振動する。従って、大きなTcの幅はナノ線材に基づくSQUIDが大きな温度範囲にわたって動作するのを保証し、局所磁界測定の為の抵抗振動がモニター出来るのである。通常のSQUIDはnmスケールの局所磁界を検出できない。それらは又完全超伝導状態で働く異なったメカニズムを有している。それは、磁束が変化するときデバイス中を振動して流れる臨界電流である。」とXu氏は言った。
 研究者たちは、YBCOストリップを同一の大きさを持つ400本並列のナノ線材列の形に作製した。研究者は、線材幅10 nm、15 nm、20 nmで線材長が5~200 mのナノ線材を研究した。「我々のナノ線材の列の臨界電流は、1 mAのオーダーである。それは、各10 nm幅のナノ線に対しては~10 Aの臨界電流に相当する。ナノ線材はいくつかの潜在的応用を有している。即ち、ナノSQUID、単一光子検出器、量子計算機に於ける超伝導ナノ線材の現在姿を現しつつある応用の他に、我々も又もう一つ可能なHTSナノ線材の応用をナノ電子回路の電流制限器として実証した。ナノ線材はまた超伝導に関するサイズ効果研究の理想的試験台でもある:我々は論文中で初めて、HTSナノ線材中のサイズ効果を説明する位相スリップ理論の適用性を実証した。HTSナノ線材は従来超伝導に対して2つの有利性を持つ。即ち、ナノ線材は遥かに高いTcを持ち、磁界からの超伝導の抑圧は遥かに小さい。」とXu氏は語った。
 Health教授と同僚Xu氏は現在ナノ線材列の臨界電流を増加する為に働いている。「これは、いくつかの応用の為には必要かもしれない。例えば、ナノ電子回路の電流制限器としてHTSナノ線材を使用するという提案については、より高い臨界電流は制限器に対してより高い動作電流レベルを意味する。我々は、ナノ線材の表面構造を制御するべく努力中である。これは、線材が超薄膜なので重要である。同様に、臨界電流の増加を助ける二次元的ナノ構造の構築に努力中である。」とXu氏は語った。
 Caltechに於ける研究は、米国DOEの支持を受けている。彼らの線材コストは依然として高い:しかし、高Tc超伝導がこのように超微小領域で保持される事実はすばらしいことであり、技術者達を勇気づけて同様なシステムを低コストで実現するように望む。
彼らの研究は、Nano Lettersの最新号に報告されている。                    (高麗山)