Edison社はConsiglio Nazionale delle Ricerche(CNR)と共同して、YBCOコーティドコンダクター(2G)の連続蒸着のための改良型reel to reel式単パスシステムを発明した。このプロセスは、幅が100 nmを越すNi-CeO2-YBCOテープをクラックなしに作製するために使用された。本プロジェクトは現在待機中であるが、進行が続くならば当プロジェクトはEdison社のYBCO導体の製造コストを低減させ、エネルギー産業応用のため工業的スケールの生産に導くであろうと報道されている。(Superconductor Week 2008年12月31日号 Vol. 22, No. 24)
　Edison社R&D部門のM. Bindi氏は、「単純なバッファ層構造とより容易な酸化処理制御の為、我々は蒸着プロセスは20ユーロ/ kA以下の競争力のあるコストを有するコーティドコンダクター(CC)の工業的生産に取って有望である」と考えた。しかし、今回は本プロジェクトの詳細についてコメントできないと彼は言った：このプロジェクトは現在待機中であり、なお当プロジェクトに対するEdison社のアプローチについて検討中である。今までは種々の活動は、多年のParma市のCNRとの共同研究の枠組みで実行されてきたものである。
　蒸着プロセスには、超音波ノズル酸化を利用する熱的共烝着とYBCO層厚を増す為のCeO2ドーピングが含まれる。これは、Edison社の以前の単層YBCO蒸着プロセスよりもっと信頼性が高いと報道されている。当プロセスは、0.4 m/hに至るテープ速度を持ち、0.65 cm幅、0.6 m以上の膜厚を持つ1.85 m長のテープを作製できる。当テープのIcは、84.5 Aまたは130 A/cm-wであり、Jcは2 MA/cm2である。
　Edison社研究グループは、バッファ層蒸着プロセスのスケール・アップの一環としてRIAL Vacuum社によって造られた多室の製造システムを設置した。Ar/H2ガス中に於ける裸金属テープの前処理、CeO2蒸着処理及び酸素中の後処理は、1回の運転中に各々別々の部屋で行われた。
　当グループは、テープが近所の部屋を通って動けるように、ステンレス・スチール／アルミニューム・スリットを設計・製作する一方、6桁の静圧力差を保持しながら、隣接部屋間のガス流を回避し、テープの塗布下部側がガイド・レールに触れないように支持した。校正済みのスリットの断面と50 cmの長さを最適化する為に、彼らは1種の数学的モデルを採用して、当ガスの物理的特性値とスリット幾何学の関数であるコンダクタンスを評価した。
　蒸着プロセスは、Edison社の超音波ノズル酸化作用を利用しており、それは蒸着をもっと容易に、もっと信頼度が高いものにすると言われている。酸化処理は、YBCO薄膜中の斜方晶層の成長にとって決定的であり、熱的共烝着プロセスに於いて成長中の薄膜付近の酸素圧力を局部的に高める必要がある。従来の酸素を閉じ込める戦略は、酸素と基板間の微細な距離にとってきわめて微妙であるが、Edison社は円錐形ノズルからの超音波ガス拡散の焦点化効果を利用する新しい技術を開発した。このノズルは、プラチナシートからドリル孔あけで作られ、前後に運動しながら、定常の局部圧力を酸素閉じ込めよりおよそ20倍高く保持した。
　Edison社は又、クラックが入らない厚い薄膜を造る為にCeO2ドーピングを導入した。当研究チームは、「最も普通に用いられるバッファ層は、Ni基の基板についてはかなりの格子ミスマッチを持つ。我々の場合では、CeO2ミスマッチ値はNi-W(5%)との間で8.9％である。大雑把な推定では、それ以上ではクラックが発生する臨界厚は200 nmより小さい。もし異なった熱膨張、基板表面粗度及び避けられない欠陥値を考えるなら、純粋なクラック無し単層の要求される特性を持つ100 nm厚のCeO2層を蒸着する事は非常に困難である事がわかった。
　この課題を解く為に、研究者たちはCeO2にZr4＋、Yb3＋及びSm3＋をドープした。YbとZrドーピングは、基板/バファーミスマッチを非常に減少させ、斯くして厚いクラック無しバファー層の蒸着に導く。例えば、CeO2に10％Zrをドープするとミスマッチ値は150 nmの最大厚さで7.7％に減少する。10％Ybは、7.6％のミスマッチ値と450 nmの厚さを産出する。Smドーピングは、ミスマッチ値には影響しないようであるが、より厚い膜を生み出す。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(こゆるぎ)