SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No.1, February. 2009

  ビスマス系高温超電導線 DI-BSCCO の最新ラインナップ       _住友電工_


 ビスマス系高温超電導線(Bi2223)の国内唯一の製造・販売業者として知られる住友電気工業株式会社(以下、住友電工)は、同社独自の加圧焼成CT-OP? 法よって製造された世界最高性能を誇るビスマス系高温超電導線をDI-BSCCO?ブランドで提供している。現在、DI-BSCCO?には用途に応じて、表1に示す7種類が用意されている。
 DI-BSCCO? Type H は、最も標準的な4.3 mm幅の製品で、77 K、自己磁場における臨界電流(以下、Ic)は140 Aから180 Aである。このおよそ4 mmという幅は、一般に第2世代(2G)と呼ばれることが多い希土類系薄膜線材を含む、ほとんどの市販高温超電導テープ線で採用されているが、現在生産されている海外のビスマス系超電導線、希土類系薄膜線のIcは、未だ80 Aから120 Aであって、Type Hは、それら海外製市販線の1.5倍以上の高性能を誇っている。
 DI-BSCCO? Type HTは、Type Hを金属テープで挟んで半田で一体化することによって補強した線材で、厚さ20 mのステンレススチールで補強したType HT(SS20)と、厚さ50 mの銅合金で補強したType HT(CA50)がある。前者は超高磁場インサートコイル、回転機の界磁巻線、SN転位型限流器の限流素子巻線に利用されている。後者は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が平成19年度から5年間の計画で実施中の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」を含む国内外の超電導ケーブルプロジェクト、MRI、NMR用高磁場マグネット等、幅広い用途で採用されている。Type HT(CA50)は高強度でかつ、接続抵抗が低く、過電流にも強い製品で、銅合金補強材の良好な電気的・熱伝導特性に注目して、この製品を選択する超電導機器設計者が増えていることから、DI-BSCCOシリーズの中でも主流製品となりつつある。
 DI-BSCCO? Type Sは、断面積がType Hのほぼ半分で、幅2.6 mmのスリム型線材で、IcはType Hの半分程度だが、比較的電流容量が小さな小型コイルに利用されている。Type STは、Type Sをベースに、Type HTと同様に金属テープで補強した線材で、DI-BSCCO?の7品種の中では、最も小さな許容曲げ直径を有しており、複雑な形状のコイルの製作に最適な製品である。
 DI-BSCCO? Type ACは低交流損失型線材で、サイズはType Sとほぼ同じスリム型線材で、交流損失を低減するために、DI-BSCCO? シリーズの中では唯一ツイスト加工が行われている。変圧器、超電導ケーブルに使用実績があり、Type ACをベースに厚さ50 mの銅合金で補強したType ACT(CA50)は、Type HT(CA50)と共に、「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」に採用されている。
 Type Gは、金添加銀合金シースによって低熱伝導度を実現した製品であり、4 Kから20 Kの温度帯で使用される大型加速器等のマグネットへの電流リード用として使用されている。
 以上の製品の内、Type H、Type HTは標準品として計画生産されており、Type S、Type ST、Type AC及びType Gは特殊用途のため受注生産されている。住友電工はこれらDI-BSCCO? シリーズ各製品の技術情報をWebサイト(http://www.sei.co.jp/super/hts/index.html)で公開している。       (vibrato)