SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No.1, February. 2009

  新しい高速PLD装置を開発中!         _Bruker HTS社_


Bruker HTS(高温超伝導体)社、以前のヨーロッパ高温超伝導体社は新しい6ゾーンの高速パルスレーザー蒸着 (HR PLD) 装置を設置中で、新しい交流ビーム助力蒸着 (ABAD) 装置を開発中であり、両装置とも2009年に完成の予想である。Bruker HTS社は、この装置が2300 m長の大抵の顧客が要求する線材長を満たすYBCO及びバッファーテープを製造し、マグネットコイルに特に適していることを望んでいる。(Superconductor Week 2008年12月31日号 Vol. 22, No. 24)
 新しいABAD装置は、2300 m長のYSZバッファーテープの作製(35 m/h)を目標にしている。現在のバッファー長の記録は100 mである。マーケティング部長のR. Dietrich氏は、「この設置におけるテープへの翻訳は、メカニカルオーバーロードを抑制する確実な方法により正確に制御されよう。翻訳システムにより35 m/hのプロセス速度に到達するために、蒸着ゾーン数を増加し、イオン源の設置箇所を増やすことが可能になる」と語った。
 ABAD装置はまた、イオン源の保守を減らし、単純化すべく設計されている。6年間の改良された寿命を持つ先進型イオン源は直ぐ実施されるだろう。それらは、およそ毎200時間の保守期間を持っており、これが生産量の増加を制限している。
 「プロセス室のモジュラー概念により、蒸着サイクルを中断することなく、イオン源の保守を実行することが可能になろう。これにより、より長い製造の実行と産出の増加が可能になる。ABAD機械は、当プロセスの最も費用がかかる部分であり、新しい速度と産出量はコストを制御する助けになろう。」とDietrich氏は語った。この高速PLD機械は、2300 mの単長で70~75 m/hの加工速度を有する。現在のBruker HTS社YBCOコーティドコンダクターは、100 mの単長と296 A/cm-wのIcを持っている。この装置は、2009年に定常運転に入り、2010年初頭に全長を達成することになっている。本機は、現在設置中であり、製品の技術的要求に適合するよう調整中である。
 「加工速度を75 m/hに増加することは、レーザーエネルギーを実際に100%利用すれば可能である。新たに開発された光学システムのレーザービームは、均質化されて3重の目標に向かって6つの等しい部分に投影される。改良された材料歩留まりとともにおよそ10倍高い蒸着速度につながる。新しい高速PLD設置は、いくつかの新しい概念(単一ビーム高速PLDシステムにて予備的に実証されている、例えばreel-to-helix-to-reel / RHRテープ翻訳原理)に基づいている。」とDietrich氏は語った。
 R&D部コーティドコンダクター長のA. Usoskin氏は、RHR原理は確立したアプローチの組み合わせであると語った:この方法には、reel-to-reelシステムに関連した有利性(2.3 kmのバッチ長さが可能である)とヘリカル形状のテープへの十分に確立したHTS蒸着工程(これにより最高の臨界電流が得られる)が含まれる。Dietrich氏によれば、新たな設置は他の改善も示した:テープ翻訳のRHRモードは、スケールアップした準平衡加熱と組み合わされ、フィルム蒸着の間中基板温度の制御が可能になる。蒸着面積の拡張により、幅広テープを作製する能力は630 mmに拡大される。これにより、今迄で一番大きな幅、あるいは面積を持つコーティドコンダクター[CC]の加工が可能となり、最終的には新しい応用につながるであろう。
 更に、新しい3D可変方位蒸着技術(3D VAA)が適用された。この技術により、ターゲットの粗大化が低減し、蒸発材料のロスが50または65%からわずかに15%に低減し、材料産出を増加させる。似た長さを作製しながら、高速PLD機械はABADの2倍のターゲット速度を維持した。「高速PLDの加工速度とABADの加工速度の乖離を平衡させるためには、1台の高速PLDに付き2台のABAD機が必要である」とDietrich氏は語った。
 Bruker HTS社は、これら新しい機械によりreel-to-reelプロセスで系統的に2000 m長の導体を作製するつもりである。専務取締役のK. Schlenga氏は、「計画中の新機械の容量は、当社Bi-2223テープ線材の2500 m単長の世界記録に匹敵するものである。このテープは同様な応用の要求を満たすだろう。2000 mを越すテープ長は大抵の顧客のニーズを満たす。特に超伝導マグネットコイルでは、長尺テープが超伝導ジョイントの必要性を最小にする為に必要である。」と言った。
 YBCOとステンレス・スチール基板間のバッファー層は、RABiTS及び傾斜基板蒸着法(ISD)を含む他の方法によって作製できるが、Dietrich氏はABAD/IBAD法は、100~200 MPaのNi-W合金に対比してより強い650 MPa以上の基板をもたらすとコメントした。Usoskin氏によれば、新しい設備もまた、予めプログラムしたロジックによる非中断加工動作の為の完全自動プラグ式様式を有している。この設置もまた加工体積当りより高い加工速度を持ち、もっとコンパクトになるだろう。
 Bruker HTS社は以前、マグネットコイル向け線材の機械的特性の改良を報告した。同社は、その曲げ半径を8 mmから6 mmに減少し、そのショートサンプル(5~8 m長、4 mm幅)の臨界電流を200 Aに増加した。全幅最大半値は、11.2度から10.3度に減少し、YSZ歩留りは18%から90%に改善した。2008年5月Superconductor Week誌とのインタビューに於いて、「Bruker HTS社は注目すべきABADプロセスコントローラーを開発した。90%の歩留りを達成する為、我々は新しい自己開発型の連続的に主パラメーターをモニターし、特別な失敗を防ぐオンライン・プロセスコントローラーを導入した。このプロセスコントローラーを持って、本設置はバファー層の連続的蒸着が再調節の時間的損失なしに自動的に実行でき、連続的に高いバッファー品質を持って稼働する最新技術の状態に達した。それによって、オペレーターの過誤の可能性は非常に減少する。」とDietrich氏は語った。                                  (高麗山)