SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No.1, February. 2009

 中間接続部を有する20 m薄膜系超電導ケーブルの試験を実施 _古河電工、住友電工_


 古河電気工業と住友電気工業は、Y系薄膜線材を用いた20 mの超電導モデルケーブルで短絡電流相当の電流を通電する過電流試験に成功した。この20 m超電導ケーブルは、古河電工がIBAD-MOCVD YBCO線(中部電力製作)を用いた10 m長3層ケーブルを、住友電工が自社の配向金属基板上のHoBCO線を用いた10 m長3層ケーブルを製作して、古河電工が2本のケーブルを中間接続部で接続したものである。(Superconductor Week誌2008年11月11日 Vol. 22, No. 19)
 超電導ケーブルは、液体窒素が流れる1本の断熱管の中に3本のケーブルコアが収納されたもので、それぞれのケーブルコアは、超電導導体層の外側に、0.1 mm厚の銅テープ2層、カーボン紙ではさまれた6.5 mm厚のPPLP絶縁層と超電導シールド層が形成され、その外側に0.1 mm厚の銅テープを8層巻きつけ、さらにその外側にPPLPと不織布による保護層から形成されている。
超電導ケーブルは、液体窒素で冷却され交流損失の測定を行い、さらに31.5 kA 2秒間の短絡電流試験が行われた。過電流試験では系統に実際に適用されることを想定して、31.5 kAの交流電流に直流電流分が重畳された最大70 kAのサージ電流を導体に流した。通電後の導体温度を、住友ケーブル、古河ケーブル、およびケーブル・ジョイントで測定し、その結果導体で温度は最大で70 Kほど上昇した。しかしながら、過通電試験前後で臨界電流測定を実施したが、その結果どちらも約1500 Aで、ケーブルの劣化等は観測されなかった。
 本記事に関して、本誌が研究担当者の古河電工環境・エネルギー研究所環境技術開発部の向山晋一マネージャに尋ねたところ、「本研究は、NEDO技術開発機構の超電導応用基盤技術研究開発(第II期)の事業の一部として実施したもので、最近開発進捗の著しいY系薄膜線材の超電導ケーブルの応用について検討をおこなったものである。住友、古河でそれぞれ10 m超電導ケーブルを開発して低損失など薄膜系線材の優位性を明らかにできたことに加えて、超電導ケーブルの信頼性の一つとしての短絡試験に耐えたことで、薄膜線材が超電導ケーブルとして使える確信を持てた。」と述べた。さらに、「これら成果をもとに、今年度よりスタートしたイットリウム系超電導電力機器技術開発のプロジェクトにおいて、コンパクトで大容量の電力供給が期待できる66 kVと275 kVの超電導電力ケーブルの実用化に向けた技術を、住友と古河でそれぞれ開発する。」ことが述べられた。
(ネアンデルタール人)