SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.6, December. 2008

  製紙用磁気分離機を出荷!                _MSエンジニアリング_


 大阪に本拠を置く(株)MSエンジニアリングは、超電導磁気分離機を製紙会社に出荷した。本システムは、廃水から廃物を分離するために超伝導高勾配磁気分離(HGMS)を利用するもので、その後廃水は工場内で再利用される。低温超伝導(LTS)マグネットを用いる磁気分離機は既にカオリンの分離に商業的に使用されている。(SuperconductorWeek誌2008年9月11日号 Vol. 22, No.14)
 HGMSは、廃水から浮遊している固形物を分離するよう設計されており、近年は浄化場で土壌から鉄を回収するとか工場廃水から再利用できる材料を回収するように拡張されてきている。MS社は、自社の分離機では強い磁界の中に磁性のある線材を置くもので、線材が磁束線を吸収して、新たに20~60倍強い磁界を発生させて磁性粒子を捕捉するよう設計していると語った。同社は、非公開の同意書を引用しながら、特定の型の超伝導マグネットが本システムに採用されているかについては言いたがらなかった。
 本システムは、大阪大学大学院工学科教授の西嶋教授によって研究され、開発されてきたものである。教授は、GdBaCuOバルク超伝導マグネットと他のタイプのマグネットに基づいてマグネット及び応用について研究してきた。
 MS社によれば、本システムによって提供される有利性は、従来システムに比べて処理スピードが速くコンパクトなことである。HGMSでは、14分の引止め時間なのに対して、従来の羊毛の処理システムでは6.5時間、活性沈殿システムでは14時間を要する。これは、沈降にはより小さなタンクで足りることを意味する。最近の設計ではまったく沈降タンクはいらないと同社は付け加えた。最大処理量は1日当たり4000 m3である。
 当システムは、既存の浄化システムに追加するかあるいは基本システムとして独立に設置することができる。MS社は、使用済みの水を放流する費用は300円/m3になるのに比してHGMSの運転コストは約140円/m3であると云っている。
 HGMSの運転コストは、従来のシステムより幾分高めであると報道されている。システムのサイズと価格はニーズに応じてかわる。例えば、1日あたり2000 m3の水を製造する工場は36m2の敷地があればよい。比較として、従来の2000 m3凝集剤沈殿システムは約191 m2の、典型的活性化沈殿システムは310 m2の広さの敷地必要になる。2000 m3の処理量を扱える磁気分離システムのコストは、約1億円である;500 m3システムは約0.5億円かかる。
 システムコンポーネントは全て町工場製であり、サイトで組み立てるだけであるとMS社は云っている。比較的モジュラー化した設計により当システムは遠く離れた場所に据え付けるのに適している。
 MS社は、自社システムでは排水の濁りは500 NTU(懸濁度)から10 NTU以下に減少すると云っている。比較として、U.S.規格は飲料水の懸濁度は0.3 NTU、英国では1 FTU以下でなければならないと述べている(FTUは大体NTUに等しい)。自社の処理水のpHは7~8に対して廃水のpHは6.5~7.5であると同社は云う。HGMS処理は、化学的酸素要求量(COD)レベルを1000 mg/lのレンジから60 mg/l以下に減少させる。懸濁固形物レベルは1000 mg/lから50 mg/l以下に減少する。                      (こゆるぎ)