SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.5, October. 2008

MgB2ケーブル製造装置を開発
_アンカラ大_



アンカラ大学(AU)物理学部の研究者は、粉末原料からMgB2超伝導体や他の超伝導体の単芯線材を製造する装置を開発したと述べた。AU物理学部教授のA. Gencer氏は、「今回開発した装置の重要な特徴は、金属シース体を多数回冷間線引きする工程を省いて小口径の長尺線材が製造できることである」とコメントしている。
 Gencer教授は、「この装置は2重に金属被覆した数km長の線材を製造することができる。最も重要なことは、線材長に制限が無いことで、この装置の生産能力は、他の国で使われている装置に対してはるかに勝っている。さらに、金属被覆線材の周りに銅シースを付けることができる。この装置では、あらゆる超伝導体の粉末について金属シースの中に詰めた線材に加工でき、PIT(powder-in-tube)技術は要しない。鋼テープはローラーに供給され、曲げられてU字形を形成し、粉末が充填され、閉じられる。」と語った。そして、「第2段階では、この複合線は銅金属で包まれる。それは、この単芯複合体を銅シース中に封じることである。基本的には、この目的のために改良したロール成形機械である。今のところまだ最適化されていないが、本機の生産速度は、時速0~15 mの間で調節できる。」と語った。今後の開発においては、この装置にMgB2の原料混合物の酸化を防ぐために不活性雰囲気を導入することが検討されている。
 このチームはまだ特性評価研究を続行しているため試験結果は報告されていない。しかし同教授は、「シースの加工硬化のほかは、機械的特性の点についての本機の従来技術に対する優劣は無いだろうと予想している。設計、開発、製造は2年の間で完了し、製造コストは約150,000ドルであった。このプロジェクトは、地元の技術者と労働者によって行われた。トルコでは材料及び労働コストは比較的安価である。実際に我々は装置を完成させるための開発費を順調に運用できており、現在なお最終製品の特性を改良するために努力している。」と語った。
 さらに同教授は、このプロジェクトが水力発電機用のエネルギー損失を低減したMgB2線材の創成に大いに貢献することを望んでいる。このようなプロジェクトはすでにヨーロッパで進行しており、例えばConverteam社はBi系線材を用いた1.25 MW超伝導水力発電機を開発中で、ドイツでの試験を予定している。また、同教授はトルコが世界のホウ素資源の72%を有していることを強調し、「トルコのホウ素資源の豊富さを生かすため、超伝導体の製造においてホウ素の使用度を高めることを意図している。ホウ素を供給しているにも関わらず、ホウ素ベースの超伝導技術に対するトルコの貢献は現在のところ極めて低い。」と言う。本プロジェクトを支援したトルコ国立ホウ素研究所はホウ素を国家経済の高価な構成要素にすることを目指している。しかし、研究者たちはトルコに於ける水力発電応用向けのMgB2ベース超伝導発電機を開発する如何なる大型プロジェクトも知らないと言っている。
 「研究者たちは、新しい技術を地元の起業家に喜んで提供しようとしている。本プロジェクトに関心を示した2~3の地元企業は存在する。いくつかの国際的企業もまたこの新技術に関心を示した。関心を示した企業とジョイントベンチャーを形成する用意はできている」と同教授は語る。                (浅間山)

(SuperconductorWeek誌2008年9月1日号, Vol. 22, No. 13)