SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.5, October. 2008

2つの新しいFe-As超伝導体の合成に成功

_エジンバラ大_


 

エジンバラ大学(UE)の研究者達は、高圧合成法を用いて2つの新しいFeAs超伝導体、TbFeAsOとDyFeAsOを作製した。Tcはそれぞれ46 Kと45 Kであった。指導研究者は、UEの物理学教授のP. Attfield氏であり、彼は日本と中国におけるFeAs超伝導体の最近の発見に動機付けられたと語った。即ち、東京工大の研究者チームによるLaOFeAs系の新超電導ファミリーの発見を受けて、中国人研究者の数グループが55 KのTcを持つ希土類元素を変えた類縁の超電導体を発見しており、これらに続いたものである。
 Attfield教授は、本合成は「格子がRFeAsOシリーズの超伝導特性を如何に制御しているかについての調査プログラムの一環である」と説明した。圧力印加は、LaFeAs(O,F)のTcを27 Kから40 Kへ上昇させることが知られるので、次々により小さな希土類元素で置換すれば同様な化学的圧力効果が働くと考えられる。R = Tb, Dyに対する我々の結果は、じれったいものでありTcは45 K前後で変らないように見え、最終的な格子傾向を発見するためにはもっと小さな陽イオンが必要になるだろう。
 Attfield教授のチームは、英国技術及び物理科学研究評議会助成金の更新を期待して新しい希土類超伝導体の安定化を続行する計画である。これらのより小さな元素は、より高い圧力を必要としそうである。Attfield教授は、「化学的挑戦は相当なものである:高圧下、適当な温度条件下で4元化合物の純正相サンプルを作製することは、大変時間を消費するものであり、小さなサンプル(約20 mg)の構造的ならびに物理的特性評価もまた厳しいものである。」
「(イオンが)小さい希土類に対して必要になりそうな更に高い圧力は、合成モジュールにもっと大きなストレスを与え、更にサンプルサイズを縮小することになる。」と言った。また、高圧は高いJcを持つ緻密な超伝導モノリスを作製する上で有益である。「本プロジェクトが商用的潜在力を持つか否かを言うのは早すぎる。それは、非常に優れた特性が得られるかどうかに依るだろう」と付け加えた。
 Attfield教授は、積層鉄ニクタイドのグループは、20年前銅酸化物が見出されて以来当分野の最も重要な発見であると考えている:「これらは、高いTcと最もTcが高い銅酸化物に対する見かけの類似性のゆえに、超伝導における"次の大物"と言える。銅酸化物の超伝導メカニズムはなお大きな課題として残っている。新超伝導材料は、競合基底状態としての磁気に由来する多くの類似な特徴を有しているようである。
 ニクタイド超伝導体はまた銅酸化物が欠いている化学的多様性を提供する。酸化銅平面は銅酸化物超伝導体にとっては本質的であるが、一方鉄砒化物のニッケルおよび隣化物同類は超伝導性であり、ただしTcは低い。このことは、ペアリングを助長する鉄砒素化物と銅酸化物との組み合わせの重要な特徴を決定するのに助けになるだろう。」と語った。
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