SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.4, AUGUST. 2008

NHMFLとORNLはFe-As系超伝導体はBc2が45 Tを超えていると報告!


国立高磁界研究所(NHMFL)とオークリッジ国立研究所(ORNL)からの研究者チームは、新規高温超伝導物質群のFe-As超伝導体(希土類元素・鉄系オキシニクタイド)が45 Tを超えてなお超伝導を保つことを見出したと発表した。(SuperconductorWeek誌2008年6月15日号 Vol.22 No.9 )
Fe-As層に基づく超伝導体は、東京工業大学の日本人研究者達によって今年早くに発見された。中国人研究者のチームが引き続いて55 Kの臨界温度を持つFe-As系超伝導体を作製した(本誌93号の記事を参照のこと)。応用超伝導センター(ASC)助手のF. Hunte氏は、D. Larbalestier(ASC所長)、A. Gurevich(主任研究者)、J. Jaroszynski(助手)とオークリッジ国立研究所D. Mandrusグループの研究者と一緒に働いている。新超伝導体(LaFeAsO0.89F0.11)の試料は、Oak Ridge国立研究所の45 Tハイブッドマグネットを用いてテストされた。
Hunte氏は、「オキシニクタイドは、Nb3Sn, MgB2及びシェブレルのBc2を遥かに超し、そして恐らく高Tc銅酸化物において一般的な100 Tを凌駕する新しい分類の高磁界超伝導体を代表するものと考えている。」と語った。関係研究者達は、磁界に対する高い許容性は彼等が探している超伝導体の3つの重要特性の1つである。他の重要特性は、比較的高い温度で且つ高電流で動作する能力である。Larbalestier所長は、「皆が望むことは、より高い温度で動作し、より安価であり、望むらくは丸線に加工し易いことである。鉄と砒素は、両方とも元々は安価な材料であり、この全体的に新種の超伝導体の必須の構成材料である。我々は完全に魅了されている。それは、今まで決して考えられなかったところに超伝導体が存在するということである。」とコメントした。
超伝導性電子は、運動量が同じで反対のスピンからなるクーパー対である。磁気は通常そのような対を破壊すると考えられている。当研究者は、この新種の高Tc超伝導体の主要部分が鉄、即ちその磁気的性質で知られる金属であることは興味を起こさせると云っている。Hunte氏は、「今までのところ、理論的計算と実験的知見に基づくと、これは超伝導の全く異なったメカニズムによるように見える。」とコメントした。
Hunte氏は、彼の結果と最近NISTが発表した実験結果とを比較した:我々の結果は、希土類元素・鉄系オキシニクタイドが極めて高い高磁界超伝導体の新しいファミリーであることを明らかにしている。一方、NISTの結果も従来と異なる超伝導のメカニズムと新超伝導体における興味を呼び起こす超伝導と磁気との関係を理解する為のもう1つ重要なステップを表している。両方の結果は、高Tc超伝導体の標準物質となっている銅酸化物に対して重要な比較すべき点に言及している。
「磁場の問題は完全に解決している。この物質群がどのように展開していくかは予想できない。もしこれらの材料が高電流密度を維持できることが分かったら、その材料はとてつも無く有用であろう。」とHunte氏は語った。さらに続けて「彼等が発見した磁気的特性は、これらオキシニクタイドが改良型MRI機器、研究用マグネット、電気モーター、電力輸送線路等多くの応用に使用される事を示唆している。経済的実用性に関しては、冷媒の代わりにクライオクーラー又は冷凍機を使用出来る環境で動作する超伝導体を獲得することにより冷媒の必要性をなくすことが望ましい。これは、冷媒使用の基盤が無い所で超伝導技術を採用する時には、実用的に重要なことである。
これら新超伝導体は、展性のある金属と異なり他のセラミックスと類似な機械的性質(硬く、脆い)を持っており、それ故丸線には容易に加工出来ないようである。この目覚ましい発見の新規性の故に、この材料ファミリーは非常に小規模でのみ合成されており、我々は未だ線材の作製を試みる段階に至っていない。しかしながら、Bi-2212及びMgB2のような他のセラミックス超伝導体は丸線に加工されてきた。それらはまたテープに加工出来るであろう。」とHunte氏は語った。                          

 (こゆるぎ)