SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.3, JUNE. 2008

4.アイオワ大学が超伝導限流器の交流搊低減の方法を示す!


  アイオワ大学Ames研究所の物理学教授であるJohn Clem氏は、超伝導限流器(FCL)システムの交流搊失低減の基礎理論を構築した。Clem氏は、バイファイラー状に巻かれた(2本巻き)パンケーキコイルより構成される限流器システムの交流搊失を低減するには、幅広のテープを用い、テープ間隔を出来るだけ小さくするのがベストであることを見出した。(Superconductor Week誌2008年3月24日号 Vol. 22, No. 4)

 Clem氏は、ある厚みを持つ半無限の薄い超伝導体帯の積重ねに発生する磁界と面電流分布を解析的に計算した。そして、帯の端からと各帯の上下から侵入する磁界による交流搊失の表式を導出し、磁界の垂直及び平行成分を含む積分の形で表現した。

「典型的な諸元に対して、交流搊失を数値的に評価した後、交流搊失を評価できる解析的表式を導いた。私の結果の重要性は、限流器システムの交流搊失を低減する方法を示していることである。私のモデルは、超伝導体の幅を4 mmから10 mmに広げると交流搊失は2.5分の1に減少することを示している。通常の動作では、超伝導状態の限流器は交流電流を負荷と直列に運ぶ。過大な事故電流の場合には、超伝導テープとマトリックスは突然高い抵抗を発生し、それにより負荷をパワーサージから保護する。通常の動作で運ばれる或る値の電流に対して、積み重ねられたテープ間隔が十分小さければ、テープ幅が増加しテープ間隔が減少するにつれて、ヒステリシス交流搊は減少する《とClem氏は語った。

 さらに付け加えてClem氏は「これらの結果は、無限に長い帯の無限に高いバイファイラーの積層に対して誘導されたものであるが、それらは各巻線の半径が近傍テープの間隔より格段に大きい限り、多数のバイファイラー巻線が無誘導的に巻かれたパンケーキコイルより成る限流器中の有限長超伝導テープに対する単位長単サイクル当りのヒステリシス搊失の優れた近似解を与えるものである《と語った。

 アメリカンスーパーコンダクター社(AMSC)副社長のA. Malozemoff氏は、「電力会社は、限流器が通常の運転では系統側には電気的に見えないことを望む。交流搊失は、抵抗性インピーダンスの主要な源であるので、これらの搊失を出来るだけ低く保つことは、この重要な運転目標の達成を助けるものである。交流搊を低減する第2の主要な動因は、冷却の必要性が減ることである。これは、冷却設備の資本ならびに運転コストを減らすものである。冷却設備は、この最適設計の利用なしでは全冷却費用の相当部分を占めることになろう《とコメントした。

 Malozemoff氏によれば、「2007年早々にシーメンス社/AMSC社共同で開発したバイファイラーコイルを用いた2.25 MVAプロトタイプはこの研究に先んじたものであったが、Clem氏の成果は今後のFCL開発に影響を与えるだろう。解析的モデルを持つことの重要性は、FCL向けに最適化された線材を如何に開発するかを予言することである。特に、当モデルはバイファイラーコイルを用いることは交流搊を減らすための好ましい方法であり、与えられた定格での正味のシステムロスは、線材幅に逆比例することを確かめている《とのことである。

「可能な限り最も低い交流搊が望ましい。目標は電圧レベルと定格に依存する。典型的な目標は、2 W/MVA以下である。シーメンス社とAMSC社は、彼等のDOE SPE高電圧限流器プロジェクトのFCLバイファイラーコイル用には幅広の線材を用いるだろう。当プロジェクトにはシーメンス社/AMSC社の外にNexans社、ロスアラモス国立研究所、ヒューストン大学が参加している《とMalozemoff氏は付け加えた。    

                               

 (高麗山)