図3には、回転試験結果の一例を示す。同図は、HTS-ISMを液体窒素温度にて同期回転状態(回転数:1,800 rpm)に引入れ、その後液体窒素を飛ばしながら回転数と一次電流の時間変化をプロットしたものである。液体窒素を飛ばし始めて190分程度経過後に、回転数に揺らぎが観測され、その後すべり(非同期)回転状態に移行している。また、それに対応して一次電流も低下しており、このことはHTSかご形巻線が明らかに常伝導転移した証拠と考えられる。さらに、すべり運転に移行後も100分近く運転を継続し、銅巻線に流れる常伝導誘導電流によって安定した回転が維持されることが確認された。なお、室温近くにおいても同様の回転試験を実施したが、HTS巻線には全く異常が見られず、連続回転が可能であった。 中村准教授によると、「これまで、単純な構造や安価であるメリットを武器にHTS-ISMの高性能化を検討してきたが、実用に際しては“超電導状態が壊れないように冷やさなければならない”というストレスが立ちふさがり、中小容量機を中心に産業界に浸透しているかご形誘導機と同じ土俵で勝負することが難しいと考えられていた。しかしながら、発想を転換して、室温でも従来形誘導機として運転でき、超電導状態になるともっとすばらしい機能が得られるというコンセプトの回転機ができないかという着想の中で本回転機に至った。現在は、冷却法や最適装荷分配法の確立に取り組んでいる。また、高温超電導巻線が超電導状態でも常伝導状態でも対応可能な駆動技術も、重要な開発課題となる。今後は、超電導回転機であることを意識することなく使える優れた回転機システムとして具現すべく、研究開発を進めていきたい。《と話している。
(京大TN)