SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.2, April. 2008

2.2 kW @ 65 K 高温超電導応用機器用冷凍機を開発 _大陽日酸株式会社、ISTEC、NEDO_


大陽日酸株式会社は、ネオンガスを冷媒とする膨張タービン方式の冷凍機の開発に世界で初めて成功し、温度65 Kにおいて2 kW(従来型の約4倊)以上の冷凍能力があることを実証した。今回の成果は、日米欧を中心として世界中で展開されている高温超電導機器の開発に向けた技術開発競争を冷却技術の側面から強力に支援し、高温超電導機器の実現を加速度的に早めるものであるとともに、現在各種冷凍機にて冷却されている広範な機器等についても改良の道を開く画期的なものとなる。

 この冷凍機は、NEDOの超電導応用基盤技術開発プロジェクトの一環として開発されたものであり、ネオンを作動流体とし、直径25 mmの小型タービンを組み込んだ冷凍機で、2 kW @ 65 Kの性能を確認した。ネオンを作動流体とした小型タービン式冷凍機は世界初であり、設計値である毎分10万回転で作動した。この結果、世界に先駆け高温超電導機器冷却に適した冷凍機の提供の道が開けたと言える。

現在、超電導ケーブル、超電導変圧器、超電導モーターといった高温超電導実用機器開発が各メーカーにて進められているなか、超電導機器冷却に適した冷凍機が無い状況であり、70 Kで数キロワットの能力を持つ冷凍機の開発が望まれていた。よく知られているように、レシプロタイプのGM冷凍機、スターリング冷凍機等がこの温度域で実用化されているが、冷凍能力は数W~1 kW程度であり、これ以上の大容量化は技術上困難である。また、レシプロ型冷凍機は通常1年に1回程度のメンテナンスが必要であり、超電導機器用冷凍機として上利な面がある。

タービンはメンテナンスフリーという特長を有している機器であるが、現在実用化されているタービン式冷凍機には大流量を処理する空気用タービン式冷凍機あるいはヘリウム用タービン式冷凍機がある。しかしながら、両方とも数十kW、数百kWの大型であり、数kWの冷凍能力の冷凍機の開発が望まれていた。このたびの冷凍機は、分子量の大きなネオンを使用することによって小型タービンの性能を十分に発揮出来るようにしたもので、2 kW @ 65 Kというタービン式では小型の冷凍機が完成したものである。開発に携わった大陽日酸開発・エンジニアリング本部副本部長の上岡泰晴氏は、「タービンは小型のものほど良い性能にするのは困難であり、2 kW以上の冷凍機は今回の冷凍機製作の技術によってより容易に設計・製作することが可能となる。《と述べている。また、ネオン用小型タービンの開発とともに、使用温度と流量を考慮した高性能熱交換器を設計・製作したことで、冷凍機としてシステムアップすることに成功したものである。さらには、高温超電導機器冷却に適した設計として、メンテナンス上要であること、冷却温度65~70 Kにおいて2~5 kWの冷凍能力があること、安定的な運転が出来ること、を条件としている。

引き続き熱交換器の最適化、さらには圧縮機のターボ化を検討し、小型堅牢な超電導実用機器用冷凍機として開発を進めていく計画であり、この計画が進めば次世代のエコ装置として開発が進められている高温超電導機器の実用化、市場導入を大きく促進するものと期待される。                 

                               


図1 ネオン冷凍機冷凍能力


図2 冷凍機コールドボックス

  (HTS Cooler)