SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.1, February. 2008

5.ITER はHTS 電流リードを採用する!


 FZK 技術物理学研究所は、ITER はそのデザインを従来方式からHTS 電流リードに変更すると確信している と語っている。FZK は、スイスのプラズマ物理研究センター(CRPP)と共同して、4.5 K の冷却システムを有す る70 kA のHTS 電流リード実証機を試験した。その結果、当電流リードは従来方式より25%少ないパワー消 費であり、HTS のより高い資本コストを十分償却できるものである。(Superconductor Week 誌2007 年12 月 27 日号Vol. 21, No. 24)

FZK によれば、ITER は反応炉のトロイダル磁界コイル(TFC)、セントラルソレノイド(CS)、ポロイダル磁界 コイル(PFC)、各種の補正コイル(CC)並びに10 kA~68 kA レンジのHTS 電流リードを運転する計画である。 しかしながら、電流リードを含む調達パッケージ「LTS フィーダー《は中国の参加者チームに与えられている ので、電流リードに関する研究はヨーロッパでは何も行われないであろう。 当二重式電流リードは、4.5 K と65 K 間の温度レンジをカバーするHTS 部分と65 K から室温までのレンジ での従来式熱交換器から成り立っている。FZK のR. Heller 氏は、「HTS 部分は4.5 K 端からの熱伝導で冷却される一方熱交換器はヘリウムで50 K に冷却される。HTS 材料はステンレス・スチール基体に埋め込まれてお り、ステンレス・スチール基体が機械的安定を与え、冷却システムの故障の場合には熱的シンクとして働く《と コメントしている。

1 個の70 kA HTS 電流リード実証機はASC 社が製造した銀*金マトリックスのBi-2223 テープを用いて製 作された。「銀/金マトリックスは、銀より非常に低い熱伝導度という有利性を持つ《とHeller 氏はコメントし た。もう1 つの電流リードは、FZK のTOSKA 施設の中で最初は50 K のヘリウムを用いて、次いで80 K ヘリ ウムで、最後に液体窒素(LN2)冷却でテストされた。

「これらのテストは、70 kA HTS 電流リードが極めて頑健であり、その限界近くまで安定に動作することを 示した。それは、80 kA まで安定に動作した。HTS モジュールのDC 並びにクエンチ性能は、優秀であった。 拡張テストの間中、HTS モジュールのクエンチの場合にも、ITER TF コイルは68 kA から安全に放電しうる 事が実証された。ITER 電流運転の作業サイクルに対して、HTS 電流リードに帰する冷凍機の電力消費は、従 来の電流リードに比して5 分の1 に減少した。電流リードに必要なHTS 材料のより高い資本コストは、冷却に 要する電力の削減によって十分に補償する事が出来る。それゆえ、運転コストの削減は、最初から余分の利得で ある《とHeller 氏は語った。

FZK は又、現在建設中の二つの大きな核融合実験機—ステラレータW7-X 及び日本のトカマクJT60-SA の為 に電流リードを出荷中である。プロトタイプ建設と試験で終わる開発及び資格取得段階の後、一連の電流リード は、産業界で製作され、最後はカールスルーエに在る新しいテスト施設でテストされるだろう。当プロジェクト は、2012 年あるいは2013 年まで続くだろう。

最近はプラズマ物理学マックスプランク研究所のグライフスバルト支所で建設中のステラレータW7-X は、 17.6 kA の最大導体電流を持つ50 個の非平面型及び20 個の平面型コイルから成り立っている。合計14 個の電 流リードが必要である( Imax=18.2 kA, Inom=14 kA)。

W7-X 向け二連の電流リードの設計は、70 kA ITER デモの電流リードと同じ原理に従っている。この電流リ ードに用いられるHTS 材料はBi-2223/AgAu テープである。ASC 社が2006 年に第一世代HTS 線材の製造を 中止したので、材料資格取得プログラムが始められ、異なる供給者は電気的、熱的並びに機械的試験の為に、単 一テープと積層体の提供を要請された。資格取得プログラムの終了時には、120 A(77 K&自己磁界)以上の臨界 電流を持つBi-2223/AgAu テープはEHTS 社及び住友電工から工業的に入手出来るようになった。 「熱交換器(HEX)の性能*自然対流を考慮して*は現在流体力学に於ける一般研究の1 分野である。近年、電 流リード熱交換器でこの効果が如何に大きいか予言することは難しく、それで当プロジェクトの初期の段階で縮 小サイズの熱交換器で試験することを決定した。2 つの異なるHEX 型はテストされた:従来から使われている 穴の開いた板金型HEX 及びFZK で開発されたHTS 電流リードと2 つの異なる幾何学図形のフィン型HEX。 フィン型HEX では、ヘリウムの流れは板金の外側を互い違いに取り除いた本来あるべき円形部分でガイドされ る。それは穴の開いた板金型HEX とは異なり、曲りくねったヘリウムの流れを主として電流と垂直方向に流れ るよう強制する働きをする。

この実験結果の解析に基づくと、両方の型の熱交換器は20 K から100 K の温度領域で400 W までヒータパ ワーに対する性能を変更することなく、上下方向と同様に横方向でも運転できることが分かった。より高い温度 に対してはなんら変更が予想されない。複雑さとコストが減るように、板金型熱交換器をW7-X 電流リード向 けHEX として選択した」と云う。

Heller 氏によれば、停滞しているヘリウムを絶縁ガスとして使うと共に電流リードの圧力容器の周りに同軸 型の電気絶縁チューブを用いる設計は、高い熱搊失を引き起こす:「電流リードに沿ってあるいは周りに滞留す るHe は、当リードの室温領域での熱の流れによって駆動されて熱的音響振動を引き起こす。其れ故、最近FZK で設計・製作中の電流リードに対しては異なるアプローチが選択された:電気絶縁は電流リード圧力容器の外側 表面で直接行われ、G10 のフランジが施設の真空容器への接続部品として働くように組み込まれるだろう。最 初のテストの結果、勇気付けるような高電圧絶縁性能と満足すべき機械的強度が実証された《。

                               

(相模)