SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.1, February. 2008

3.スーパーパワー社が790 m 長190 A/cm の2G HTS 線材を製造、短尺でも740 A/cm-w !


 スーパーパワー社は、790 m 長の最小190 A/cm の臨界電流値、即ち150,100 A-m を持つHTS YBCO 厚膜 導体(2G)を製造した。この成果は、同社が昨年1月に発表した102,935 A-m線材より46%良好である。当線材 は、全長790 m にわたって9.7%の臨界電流均一度を示した。(Superconductor Week 誌2007 年12 月7 日号 Vol.21, No.22)

スーパーパワー社はまた、1000 m 長以上の10 本及び1300 m 長のバッファー線を数本製造したと報告した。 このバッファー線は、完全な5 層積層に蒸着されており、スーパーパワー社のIBAD*MOCVD 製造プロセス によりYBCO 厚膜導体(2G)の製造を行う。スーパーパワー社副社長のV. Selvamanickam 氏は、「6~7 度の良 好な配向基板が全10 枚のテープで約2%の均一性をもって再現性良く達成された《とコメントしている。

スーパーパワー社は、740 A/cm-w の高Ic を持つ短尺サンプルを作製したと発表した。もし12 mm の線材が 大抵の1G 及び2G テープで典型的な4 mm テープにスリットされるとすると、4 mm線材は296 A のI c を持つことだろう。Selvamanickam 氏は、「4 mm 幅の300 A 導体の実証は、今日利用できる最良の1G 線より50% 良好な性能である《とコメントした。住友電工は最近、km級、200 A のI c を持つ1G, 4 mm幅線の量産が出来るようになっている。

740 A 線は、2006 年に製造された721 A/cm 線を改良したものである。2006 年にスーパーパワー社は、幅12 mm長さ7 cmのテープに対して5パスで3.5 µ厚の薄膜を蒸着するのにリール/リール・プロセスを用いていた。 当テープは、その12 mm 幅に亘って865 A のIc、即ち721 A/cm( Jc=2.06 MA/cm2)を示した。しかしながら、 スーパーパワー社は厚みが増えるにつれてマイクロ構造の問題が増加する事に着目して、薄いフィルムでより高 い電流を達成する事を試みた。フィルム厚を5 パスで3.5 µm 、4 パスで2.8 µmに減らす事によって、同社は長さ10 cm 幅12 mm、888 AのIc 即ち740 A/cm( Jc = 2.64 MA/cm2)を持つテープをリール/リール・プロセスを用いて作製した。フィルム厚を減らした上に、(Y,Sm)BCOから(Y,Gd)BCO へ変更した事で改善が保証された。 Selvamanickam氏は、「改善された製造原料処理費の結果として、2G 線材の製造コストはCu 安定化材を有 する4 mm 幅線材では35%低減し、Cu 安定化材無しの12 mm幅線材では40%低減する《と語った。スーパ ーパワー社は、自社製の2G YBCO 厚膜導体が2008 年末までに1G Bi-2223 に対してコスト的に競合出来るよ うになる事を望んでいる。Selvamanickam 氏は、スーパーパワー社が高い臨界電流を持つ長尺のHTS 線を製 造する必要があり、その目標を達成する為には1G と同等なコストで相当な量産容量を実証しなければ成らない、 と考えている。

同社2008 年6 月の目標の一つは、200 A のIc (740 A/cm と等価である)を持ち、線材長1000 m 年産1000 km での4 mm 幅線材の製造である。スーパーパワー社によれば、1000 km/年の製造容量はIBAD MgO&バッファ ープロセスについては既に超過達成されており、MOCVD-YBCO 積層プロセスによる製造も達成に近づいてい る。 「YBCO 超伝導材料をバッファー層中に積層する為に使用された厚膜MOCVD技術は、320 A/cm の最小臨 界電流を持つ155 m 長のテープを4 mm 幅線材で70 m/h の速度で製造するパイロットMOCVDシステム内で スケールアップされた。臨界電流の155 m にわたる均一度は、2.5%であった《とSelvamanickam 氏はコメン トした。 スーパーパワー社は1G 線の性能に肉迫する事を目標にしているといって、同社の2008 年構想の大略を述べ た。2008 年の6 月までに200 A のI c を持つ1000 m 長の線材を製造し、年産1000 kmの製造容量を獲得する 事を望んでいる。「我々は現在種々の構成の2G HTS 線材を世界中の35 の顧客に出荷しており、幾つかの顧客 は繰り返し注文を出している。線材は全て市場価格で購買されている《とSelvamanickam氏は付け加えた。

                               

(こゆるぎ)