Weserアルミニウム社は、ドイツのミンデン市製造工場の既存銅コイルに基づくアルミニウムヒーターを代替すべくHTS機の設置を計画している。HTS機は、1トンのアルミニウムを加熱するのに要するエネルギーを280 kWhから160 kWhに削減できると予想されている。
Zenergy社は、このHTS誘導ヒーターの注文は工業スケールのHTS材料を用いる商用機として最初の販売と考えている。しかしながら、同社はWeser社へ供給される当ヒーターの技術的並びに金融的詳細についてはコメントすることを避けており、この販売の商業的あるいは工業的側面についての先例を確認することは困難である。 それにも拘らず、工業的操業を行うためにHTS解決策を実行しようとするWeser社の決断は、HTS技術に工業的支持を得る上で重要な一歩を意味している。
Weser社の主張によれば、フル操業時には当HTS誘導ヒーターの産出コスト低減は、5年間と云う短期間でその初期投資価格と等しくなると言う。当誘導ヒーターを開発したTrithor社は、以前に従来システムとほぼ同じ価格でHTS誘導ヒーターを売り出す計画であると言っていた。その当時、同社は1 MW級誘導ヒーターの全コストは、パワーエレクトロニクス、キャパシター、コイル及び機械的ハンドリングを含めて400~700 k$と見積もっていた。 Trithor社製のヒーターは、DCコイル/回転ビレットの設計方式で自社製のBi-2223 HTS線材を使用し、冷凍機を用いて冷却するものである。金属ビレット周囲に一定の磁界を発生させるために、DC式HTSコイルを使用する。そうして当ビレットは磁界中を回転し、アルミ材料中に磁束を発生して当材料を加熱する*公知の渦電流ブレーキに基づく方式である。このアプローチによる有利性は、使用されるDC式HTSコイルと非同期モーターの高効率である。 このようなシステムの潜在的便益を認識して、Trithor社の実証誘導ヒーターは開発され、ドイツ環境基金の資金援助を得て建設された。以前Zenergy社は、従来のヒーターが35~45%の効率なのに比して自社のヒーターは90%以上の効率で稼動すると主張していた。かかる効率の利得を低く目に見積もってZenergy社は、先進国の年当たり電力消費量の1~5%は金属工業の加熱設備の稼動に帰せられると見積もっている。
ドイツ環境基金の気候保護&エネルギー部部長のD.Scholtz氏は、「環境基金として、企業が工業的プロセスを実施する方式に積極的なインパクトを与えることが出来る技術と製品を探し出し、投資することは我々の責務である。Zenergy社の誘導ヒーターは、そのような製品の一つであり、さらに云えばビジネス的関心と環境的関心を統合する類まれな製品の一つである。」とコメントしている。
(こゆるぎ)