SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.16, No.6, December. 2007

2.世界初 高温超電導モーターカー登場!_住友電工_


 11月20日から22日まで行われた2007年秋季低温工学・超電導学会で、住友電工の展示パネルおよび特別討論会のパネラー発表(林 和彦 電力・エネルギー研究所長)において、超電導モータで走る電気自動車が紹介された。図1のように通常の自動車のエンジンルームに、超電導モータと鉛バッテリーを置いたシンプルな構成で、同社大阪製作所内にて実際に走行したビデオが上映された。自動車の重量は1200 kg、界磁コイルに240 mのBi2223線材(DI-BSCCO)使われ、液体窒素浸漬で冷却されている。林氏の講演によれば、船舶用に開発されたものと同様な超電導モータ特有の低速、大トルクの性質によって、自動車のシフトギアが上要になり駆動力への変換ロスが5-6 %低減できることに加えて、左右のディファレンシャルギア(カーブでの左右の車輪の経路差を調整するギア)が上要なダイレクトドライブモータ車の実現も可能という、実質的なメリットがあるとのことであった。

今後の展開については、リチウムバッテリー使用やディーゼルエンジンとのハイブリッドといった電源面の改良が挙げられ、さらに冷媒にも併用できる液体水素式の燃料電池も有望とのことであった。また、今回開発した超電導モータは通常の直流モータの界磁コイルを超電導コイルに置き換えただけの構造であることから、今後は目標性能として直流モータのトルクが130 Nm、最高出力が62 kWで本来の軽量、コンパクトといった特長を活かした超電導モータの開発も進めたいと述べられた。  とにかく超電導モータで自動車が走ったことは世界初の快挙であり、高温超電導線材の汎用性を社会に示すわかりやすい実例といえる。実用的なレベルで高効率、持続性、経済性が実証されていけば、電気自動車には超電導モータといった、まさにスーパーカーの時代が到来するのではないだろうか。  

                               


図1 高温超電導モータ搭載の自動車

  (Supercom事務局)