SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.16, No.4, August. 2007

5.デルフト工科大学テラヘルツLTSヘテロダイン・ボロメーターを開発!


     デルフト工科大学のKavliナノサイエンス研究所とSRONオランダ宇宙研究所の研究者達は、THz周波数帯の宇宙線を検出するために超伝導ヘテロダイン・ボロメーターを開発し、それを用いて1.5 THz以上の周波数を検出したと報じられている。(Superconductor Week誌2007年5月7日号 Vol. 21, No. 8)

 当検出器は、熱電子ボロメーターとして知られる型のものである。検出器内では小さな金のアンテナがTHz宇宙線を検出して、それを2つの超伝導コンタクトを介して5 Kに冷却された小片のNbNへ送られる。放射線によって超伝導体の温度は少しだけ上昇し、当材料の抵抗は測定できる程度増加する。

 デルフト工科大学のM. Hajenius教授は、「この温度計を読み取ることにより、THz宇宙線を非常に正確に測定できる。多くの超伝導ヘテロダイン検出器の中で、我々の素子は、感度の世界記録を保持している。というのは、我々の素子はアンテナと超電導薄膜間の接触抵抗を消去する新プロセスを採用しているからである。」と述べた。

 この検出器は、ヘテロダイン・ボロメーターであり、それはエネルギーの大きさだけでなく信号の周波数と位相を測定できることを意味している。多くの超電導ボロメーターは単にエネルギーの大きさだけを測定する直接的検出器なのである。

 「ヘテロダイン・スペクトロスコピーは、天文学のような高い解像力を要する一定の応用分野で必要とされる。若し高い解像力が必要でないなら、直接的検出器の方が一般により高感度である。また、ヘテロダイン検出器による測定器列の製作は非常に複雑であり、直接的検出器による測定器列の製作の方が実現するのが容易である。」とHajenius教授は説明した。

 この新検出器の最初の使用は、2008年にSRONが近年開発中のTELIS測定器の一部として計画されている。当測定器は、オゾン層中のホールの形成に影響する大気中の分子を測定するために、ブラジル上空をバルーンの中で浮遊することになるだろう。当検出器はまた南極大陸の新しい観測所(HEAT)に設置を予定しており、新しい宇宙ミッションも提案されている。

「最近は、当検出器の科学的応用だけが構築されつつある。宇宙飛行士や大気科学者にとって興味の対象である多数の原子や分子は、THz帯のみに存在する回転的遷移を有している。当検出器の応用における主な困難は、高い運転コストを要する極低温の使用である。希望的観測では、将来新しい冷却技術が開発されて、このような検出器が広範に使用されるようになる可能性が大いに在る。《とHajenius教授は語った。     

   (高麗山)