SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.16, No.2, April. 2007

6.TECO社がバルクHTSモーターを実証試験!


 テキサス州ランドロック市所在のTECO-Westinghouseモーター工業(TWMC)は、Y系バルク高温超伝導(HTS)に基づく超伝導モーターの実証試験を行った。いかなる商用モーターといえどもその潜在的な便益には、競争力のあるコストに於ける高電力密度と高エネルギー効率とが含まれるであろう。TWMC社は、2010年までにHTSバルクモーター・シリーズを市場に導入することを望んでいる。実証したモーターは、3馬力のモーターハウジングとステーター巻線を用いて開発されたものである。(SuperconductorWeek誌2007年2月12日号 Vol. 21, No. 2 )

 TWMC社は、目標応用、動作特性やモーターの冷却システムなど技術的詳細についてはコメントしたがらないが、現在、東京海洋大学(TUMSAT)応用物理学研究所で開発中のモーターがHTSバルクモーターの現状についての見通しを与えるかもしれない。東京海洋大学の軸長型HTSシンクロナス船舶推進モーターは、昨年720 rpmで15 kWを達成したと報じられ、サイズと磁界強度が増強されれば90 kWの出力を産出すると期待されている。

東京海洋大学は、HTSモーターは従来の非超伝導モーターより1-2%効率がよく、より速い速度では10%以上の高効率になると期待している。さらに、このモーターはより高い電力密度(重さ当たりのトルク)を持つと予想され、サイズと重さの節約が特別なメリットとなる応用には特に適している。

従来のモーター設計は、線材巻線かまたは永久磁石からなるローターを用いている。TWMC社は、バルク超伝導材料コストは永久磁石コストに十分太刀打ち出来、どの型より遥かに高い磁界を発生出来ると考えている。

Bi系線材等HTS線から成るモーターコイルもまた高磁界を発生するが、TWMC社はこのHTSバルクのコストは数分の一と予想している。同社は又、モーターマグネットの磁界強度が増加するに従ってトルクを発生するのに必要な電流は減少し、従って搊失は減少するという原理に基づいて、もっと高い効率を望んでいる。

TWMC社は、自社製のYBCOバルク材料は超伝導コイルに基づく機器(しばしばヘリウムガスか過冷却した液体窒素で冷却しなければならず、低冷却コストを持つより小さな機器が求められる)より高い温度で動作出来ると言っている。開発の展望から言えば、より高い動作温度はまた、エンジニアリングとさらに低温の材料開発に関連する諸挑戦のリスクを最小限にするだろう。

TWMC社のモーターは、超伝導状態のYBCOバルクによって発生した半径方向の磁束磁界の原理で動作する。TWMC社は、このYBCOバルク型モーターは現在二つの技術の進展により実用的であると信じている:即ち、高品質のYBCOバルクの製造とモーター中でバルクを磁化する能力である。

バルクは、磁束を捕捉して77 Kで2.1 Tの磁界を発生する−永久磁石を用いて達成出来る磁界の7倊大きな磁界を発生したと報じられている。当YBCOバルクは、TWMC社がヒューストン大の電気力学センターとテキサス大のビーム粒子動力学研究所と共同して開発したものである。

TECO社は、温度を77 K付近に注意深く制御しながら、YBCOバルク材料がin-situで磁化される技術開発を行った。当機器は、モーターとして良好に動作していると報道されており、またマグネットを始動させるのに必要な高活性化磁界を発生出来る。この技術の感度を引用しながら同社は、彼等の解決法は単に「熱的冷却法と大電流励磁法の組み合せ《と説明している。                         

  (こゆるぎ)