2005年度の第9サイクル運転終了後、ヘリカルコイルのサブクール改造を実施した。図1に追加したサブクールユニットの概略図を示す。サブクールユニットは、2段直列の低温排気圧縮機を用いて23 kPaまで減圧する減圧槽及び熱交換器等で構成され、ヘリカルコイルに温度3.0 K、流量50 g/sのサブクールヘリウムを供給し、ヘリカルコイルを入口3.2 K、出口3.8 Kまで冷却できる。図2にサブクールユニット追加改造後のヘリカルバルブボックス及びベルジャーの写真を示す。
第10サイクルの運転は、2006年8月30日からの約1ヶ月の超伝導コイルの冷却と励磁試験を経て、10月3日から翌2007年2月14日までの19週間プラズマ実験が行われた。プラズマ実験終了後、システム全体の加温運転を行い、2007年3月16日に室温までの加温が終了した。
第10サイクル実験中に、合計7回のサブクール運転を行った。1回のサブクール運転は1週間で月曜日~金曜日までサブクール運転を行い、週末は低温排気圧縮機の回転数を下げた待機運転を実施した。図3にサブクール運転時のヘリカルコイルの温度変化を示す。ヘリカルコイルへ温度3.0 K,流量50g/sのサブクールヘリウムを供給することにより、ヘリカルコイル入口温度を3.2 K、コイル出口温度を3.8 Kまで冷却することに成功している。
サブクール改造により、プラズマ実験に提供できる磁場強度が上がり、電子サイクロトロン共鳴加熱によるプラズマ中心電子加熱がより容易に行われるようになる。LHD装置実験では、プラズマ中心磁場3Tを目指した高磁場励磁試験を実施したが、励磁途中で部分的な常伝導伝播が発生したため、第10サイクルの運転ではそこまでの励磁に留めている。励磁時の交流搊失(主にヒステリシス搊失)によりコイル内のサブクールヘリウムに温度分布が生じ、その対流に時間がかかることが原因として考えられており、コイル内の冷却状況の解析及びその対策を行ってから第11サイクル以降に更なる高磁場を目指した励磁試験を行う予定となっている。
プラズマ実験の成果として、高ベータプラズマ閉じ込めに関して大きな進展があり、ベータ値が上がるとプラズマ中心が外側にシフトするが、この量を小さく抑える配位を慎重に選び、かつNBI加熱が有効性を失わない磁場強度を選択することで、4.8 %の平均ベータ値を持つプラズマを定常的に作り出すことに成功している。更に、ペレット入射を行うことにより、短時間ならベータ値が5%に達するプラズマも得られている。また、水素で密度の高い領域でのイオン加熱を目指した結果、密度12兆個/ccで中心イオン温度5.2 keV(6000万度)が得られている。
第10サイクルはサブクール改造後の初めての運転であったにも関わらず安定な長期連続運転を達成し、超伝導低温システムの稼働率として100%を達成している。第10サイクルでの超伝導コイルを極低温に保った定常運転時間は3,435時間、 LHD低温システムの圧縮機起動から停止までは5,037時間の安定な連続運転を行った。1998年の実験開始から、 第10サイクル終了までのLHD低温システムの積算運転時間は46,697時間、超伝導状態を維持した定常運転の時間は32,007時間、コイル励磁回数は1084回、プラズマショット数は75,651回に達しており、LHD超伝導システムの高い信頼性を実証している。
(TM)