SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.16, No.1, February. 2007

8.IGC SuperPower社が2G線材で81,550 A-mを達成! SP社、Albanyケーブルプロジェクト向けに2G線を住友電工へ出荷!


 IGC SuperPower社は、自社の2G線材開発プログラムの最近の進展(線材長、臨界電流、積層プロセスの産出速度の改善)について発表した。同社は以前挙げた100 mの自己記録を更新して、単長427 mの線材を作製し、77 Kで191A/cmの最小Ic値即ち81,557 A-mを達成した。重要なことは、改善されたIcを持つ長尺線材が50%高いMOCVD蒸着速度で作製されたことである。この新しい長尺線の達成は、SuperPower社の2G線材製造における進歩、2002年最初の1 m試作から今日の427 m線材製造への大幅な進展を示している。(SuperconductorWeek誌11月13日号 Vol. 20, No. 23 :本誌前号において学会報告記事として概要を掲載) SuperPower社線材技術部長のV. Selvamanickam氏は、「我々は、製造システムをずっと調整してきたが、今やシステムは非常によく稼動している。沢山の線を製造システムに高速に通過させてよい結果を得ている。現在、多くの事が決して以前にはなかったように極めてスムーズに動作している《と語った。

 SuperPower社は、より長い線材でより高いIc値を実証する一方、MOCVDプロセスを用いて103 m長—12 mm幅—1.4 m厚HTSテープを作製し、最も低いところでも295 A/cmという高いIcが実現した。僅か1 m長のテープでは、362 A/cmの平均Ic値、404 A/cmの最大Ic値、6.8%の標準偏差が得られた。

 SuperPower社は又、2G線材短尺サンプル上の厚膜フィルムでIcの改善を報告している。reel-to-reel MOCVDプロセスを用いて、同社は77 Kで721 A/cmのIcを有する7 cm長導体を作製し、直流電流で測定した。この線は12 mm幅テープ上に3.5 m厚のフィルムを5回の蒸着で作製した。同社はまた長さ1 mの線で595 A/cm、長さ11.1 mの線で486 A/cmを達成した。  Albany HTSケーブルプロジェクトのフェーズⅡの為に十分な2G線を製造する努力を持続しながら、SuperPower社は品質保証テスト、スリッティング、12,000 mの2G線への安定化銅メッキを完了している。引き続くCuクラッド線のIc試験に於いて81 Aの平均Ic値が明らかになった。10,000 mの最終製品のハ−メチックテストは現在進行中である。225個のスプール(各43 m)は現在、35 m長の2Gケーブル製作のため住友電工への出荷準備中である。

 線材の長さとIc値を改善することに加えて、SuperPower社は2G線の製造速度に関してここ2~3ヶ月間に長足の進歩を遂げた。同社の427 m長2G線はMOCVDの1回パスで以前の報告より50%速い45 m/hで製造された。更に、同社は12 mm幅基版上に1 m厚のYBCO膜を45 m/hで蒸着して202 A/cmのIc値を持つ100 m長の2G線を製造した。SuperPower社によれば、45 m/hはスリット下4 mm線で525 km/Yの製造能力に相当する。

 SuperPower社は、YBCO層を最適化するのに必要なIBAD MgOとバファー層の作製速度は過去2ヶ月の間に2倊以上になった。酸化物ターゲットの代わりにMg金属ターゲットの反応性スパッタリングを用いると、IBAD MgOプロセスの蒸着速度は2倊に増加した。この高い蒸着レートに合わせる為にアシスト勢ビームプロファイルを再度最適化した後、同社の以前の65 m/hレートの約2倊の120 m/hレートが達成された。

 SuperPower社はまた、他のキイ・バファー層の蒸着速度を増加した。ホモ・エピMgO層の反応性スパッタリングで使われている電力レベルを増加することによって、12 mm幅テープ上で40 m/hから80 m/hに速まった。LMO層の蒸着速度も蒸着室の螺旋状のガイド装置に用いられているテープ溝の数を増やすことにより、40 m/hから80 m/hに倊増した。上記の高速テクニックを用いて、同社は227 A/cmの最小Ic値と全長に亘って3.7%の均質度を持つ203 m長2G線を製造した。

 SuperPower社が自社の製品のm毎のIc測定を行った時間レートも改善した。「製造した427 m長線を完全にテストするのに13時間掛かった。しかし、新しい5 mのIc測定装置を製作したところ、427 m長線の測定時間は今や4時間丁度に減少した《とSelvamanickam氏はコメントしている。引き続いて氏は、「2G導体は現在1G線の程度のIc値を持つ長尺線で使用出来るようになった。我々は今定常的に100 AのIc値を持つ270 m長以上の4 mm幅2G長尺線を製造している。さらにこれらの線材は、1G線の約2倊のJe値を有している。例えば、20 m安定化材(トータル40 m)で覆われた2G線は26.3 kA/cm2のJe値を持つ。それに比して、1G線は普通13~17 kA/cm2のJe値を有する。

 SuperPower社は直ぐ10,000 mの2G線をAlbany HTSケーブルプロジェクトのフェーズⅡの為に住友電工に出荷する予定である (次の記事に詳細)。これは、2G線が大型規模の実証プロジェクトに十分な量供給され始めたことを示唆している。しかしながら、600~1,200 $/kA-mの2G線価格は依然として、1G線に比し少なくとも5倊高い。

 2G線は、次期の機器プロトタイプ・プロジェクトに使われる為には2年以内に1G線とコスト的に競合出来なければならないとSelvamanickam氏は云っている。SuperPower社は、一連の製造改善(装置の信頼性を改善して歩留まりを向上すること、原材料コストを低減すること、もっと能率的なスケジュールを組むことにより労賃コストを低減すること等)を追求することによって2G線のコストを低減する計画である。「3シフト勤務制は、2シフト勤務制の2倊の産出が可能である。より高い電流値を達成する等の技術的改善も2G線のコストを低減する重要な道として残されている《とSelvamanickam氏は語っている。

SuperPower社は、2G高温超伝導(HTS)線の最初の大口引き渡し荷を自社スケネクタディ製造工場から住友電工の大阪工場に向けて発送した。住友電工は、9.7 kmのこの線を用いて30 m長のHTSケーブル部分を、Albanyケーブルプロジェクト向けに製作する予定である。これはHTS線のこれまでで最大規模の出荷と報道されているもの。(SuperconductorWeek誌 2007年1月29日号 Vol. 21, No.1)

住友電工/SuperPower社製作の2G HTSケーブルは、2007年春までに完成すると予想されており、当ケーブルは350 m長のAlbanyケーブルの30 m長の住友電工製Bi-2223ケーブル部分を代替する予定である。2Gケーブル部分が通電されると、それは活線送電系統に於ける最初の実証を記録するものになろう。SuperPower社によれば、2Gケーブルは結局製造するのがより安く、Bi系の同等ケーブル部分より冷却に要する電力が少ない。

                               

(こゆるぎ)