SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.16, No.1, February. 2007

4.GEグローバル・リサーチと住友電工が高温超電導応用機器開発に向けた共同研究で合意 _住友電工_


 高温超電導材料の開発における進展として、液体窒素温度を超える臨界温度を持つ高温超電導材料が発見され、同分野における関心が再度高まり、世界中で数々の研究・開発が進展した。こうした中、住友電工では、加圧焼成 (CT-OPTM:Controlled Over Pressure)法により、世界で初めて高温超電導線の商業レベルの長尺線製造技術を確立し、加圧焼成法を用いて製造された革新的ビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO®《(Dynamically Innovative Bi2223線材)は、液体窒素温度において、断面積1 mm2以下で、200 Aの電流を通電することが可能となった。 

 一方「DI-BSCCO®《を用いたマグネット等の応用機器でも小型、高性能化が期待されている。住友電工ではこれまでに、20 K冷凍機冷却マグネットで常温ボア50 mmで7.1 Tの磁場発生に成功しているが、このほどDI-BSCCO線材を用いて、常温ボア200 mmで8.1 Tの高温超電導マグネットとして世界最高の磁場発生に成功している。 また、「DI-BSCCO®《で製作された高温超電導ケーブルは、米国エネルギー省およびニューヨーク州エネルギー研究開発公社が資金供与する、初の地下埋設実系統プロジェクトに採用され、2006年7月に実系統に接続されて以来、約70,000世帯に順調に電力を供給している。

 DI-BSCCO線材が実用レベルのコストパフォーマンスを実現できる可能性が高まったことから、高温超電導機器の実用化を目指し、2006年12月21日、General Electric (GE)の中央研究所であるGEグローバル・リサーチ(本部:米国ニューヨーク州ニスカユナ)と、住友電工 (本社:大阪市)は、高温超電導材料を用いた工業製品の開発に向け、共同研究を進めることで合意した。 GEグローバル・リサーチは、米国で最初の工業研究所であり、世界有数の多様性に富んだ研究開発センターの一つで、GEの全てのビジネスと連携し、革新的なテクノロジーを供給している。またGEグローバル・リサーチは、100年以上にわたりGEのテクノロジーの中核として、医療画像、発電、航空機エンジン、先進材料や照明などを含む、様々な分野における革新技術を開発している。現在ではGEグローバル・リサーチはインドのバンガロール、中国の上海、ドイツのミュンヘンにも研究開発拠点を設立している。

今回の合意に基づき、住友電工はさらなる性能向上に向けた高温超電導線の開発を担当し、GEグローバル・リサーチは、高温超電導材料を用いた新しい応用製品の設計と製品の試作を担当する。具体的には、GEは、今後さらに進化する超電導材料を活用し、核磁気共鳴撮影装置、発電機、工業用駆動装置など広範な製品の開発を推進していく計画である。なお、画像診断医療装置(MRI)は、1980年代初めにGEグローバル・リサーチが世界で初めて開発し、現在、全世界の医療業界で利用されている。 GEグローバル・リサーチ 先端テクノロジー担当副社長のマイケル・アイデルチェク氏は、「今回の共同研究における合意は、超電導線の技術における住友電工の強みと、エネルギー、ヘルスケア分野での応用製品の商業化に向け、GEグローバル・リサーチが持つ超電導材料を用いた工業製品の設計・開発における豊富な経験を結集させるものです。住友電工との共同研究により、超電導市場におけるビジネス機会の大幅な拡大につながる新技術の開発を促進できるでしょう。《と述べている。 一方、住友電工 畑常務執行役員も、「GEの様なリーディング・カンパニーを通して様々な用途が開拓され、商業化されていくことは、高温超電導線にとって非常に重要なことです。昨今の高温超電導線の性能向上が、十分に商業レベルに達しつつあることを考慮しますと、まさに今回の共同研究における合意は、絶妙のタイミングであると思います。《とコメントしている。             

                               

(ビス子)