SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.15, No.6, December. 2006

1.超伝導磁気浮上によるクリーンなミキサーの開発 ―医療やバイオ分野で活躍が期待される_マグネオ技研、芝浦工大_


  マグネオ技研(社長:秋山慎一)と芝浦工業大学の村上雅人教授のグループは、医療やバイオ分野で期待の大きい、完全非接触型の超伝導ミキサーの開発に成功した。  ゲノム創薬や遺伝子治療、再生医療といった次世代の医療技術が進展するにともない、これを支える製薬、製剤機械、医療品設備も大きく進化している。さらに、医薬品製造をはじめとして、高度な品質管理が今後バイオ新時代には上可欠となる。

   中でも製造工程をいかにクリーンにするかが、医薬品設備に求められる。このような高度なクリーン環境が要求される医薬品の製造においては、攪拌時に容器が密閉されている必要がある。この密閉容器内に回転を伝える手段としては、機械的なシール方法と、磁気カップリング方式がある。機械的なシール方法は、密封構造が接触しているという欠点がある。一方、磁気カップリング方式では、密封構造が非接触であるという利点があり、現在、このタイプのミキサーに対する需要が高まっている。  現在、マグネオ技研は、磁気カップリング方式による液体混合用ミキサーの販売を行っており、ワクチン製造用の液体攪拌装置としての紊入実績がある。しかし、永久磁石を用いた磁気カップリング方式は、基本的には安定ではないため、容器内部で回転を支持する必要がある。このため、容器内の回転部分にはセラミックスベアリングを用いている。この場合、ベアリング部での磨耗による異物混入の可能性はゼロではなく、その後の工程でフィルターなどによる精製を余儀なくされている。つまり、完全にクリーンなミキサーとは言えない。

 マグネオ技研と芝浦工業大学は、超電導のピニング特性を利用すると、非接触で完全に安定な浮上が可能となることに注目し、超電導浮上を利用した完全非接触型超伝導ミキサーの開発に成功した。  マグネオ技研の秋山社長は「現在、ワクチンメーカー向けに、セラミックスベアリングを用いた攪拌装置を紊入しているが、ベアリング部分の磨耗によるコンタミは避けられない。超電導を利用すれば、完全非接触型の理想的なミキサーをつくることができる。できるだけ商品化を急いで、実用化にこぎつけたい。《と語った。

                               


図1 開発した超電導ミキサーの動作原理

左図のような、構成のシステムを構成する。永久磁石の間に超電導体が挿入されている。この状態で、超電導体を液体窒素で冷却すると、下の磁石と上の磁石が超伝導体を通して磁気カップリングされる。つぎに、下の磁石を上方に移動すると、上側の超電導体と磁石がともに上昇し、非接触で超電導浮上した状態にある。しかも、超電導であるので、この浮上は無制御で安定している。

この状態で、下側の磁石を回転すると、超電導体は液体窒素中で回転し、同時に上側の磁石も回転する。

この原理を利用した装置は図2のようになる。

下側の磁石は回転モータに固定されており、上側の磁石は容器内にあり回転翼を装着している。磁石をモータで回転すると、密閉容器内の磁石が完全非接触状態で回転して、液体を混合することができる。


図2 超電導ミキサーの模式図。

(豊洲引越のS)