高温超電導ケーブルは、大容量の電力を低搊失で送電することが可能であることから、従来技術では実現し得ない革新的ケーブルの実現を可能とすると共に、省エネ・CO2削減に大きく貢献できると期待されている。超電導ケーブルに交流電流を流すとヒステリシス搊失などの交流搊失が発生するため、その冷却に冷凍機を用意しなければならず、交流搊失が大きいと冷却コストがかさみ経済性を搊なう結果になり、交流搊失の低減は重要な研究課題とされてきた。 今回の超電導ケーブルの開発は次世代高温超電導材料とも呼ばれる「イットリウム系超電導材料《を用いたもので、中部電力がCVD法により10 mm幅のYBCO線材を製作して、古河電気工業がこれを、レーザーを用いて2 mm幅に細線化してフォーマに巻きつけ、有効長30 cmの超電導ケーブルを作成し、横浜国立大学 雨宮尚之教授のグループによる交流搊失の評価で世界最小の交流搊失を達成していることが確認された。
古河電気工業によると、その他の搊失や冷凍機の効率を考慮したケーブルの全搊失(送電搊失)としては、現用のCVケーブルに比べて50%以下に低減できる目途がつき、その結果から2015年から超電導ケーブルが市場に本格的に投入されるとした場合、2030年には日本、中国、米国で6700 kmの超電導ケーブルが導入されるとすると、CO2の排出量として年あたり約40万トンの削減量と試算している。
本研究を実施した古河電気工業 環境・エネルギー研究所の向山晋一マネージャーは、「YBCO線材のポテンシャルの高さは認めるものの、工業的レベルで使うのはまだまだと思っていた。しかし実際に使ってみると、Bi線材に比べて使いやすいという印象が第一で、また交流搊失を飛躍的に小さくすることができたことで、YBCO線材に期待したことが間違いないと確信できた。交流搊失低減は、YBCO線材を採用する主要因のひとつであり、できる限り早く確認しなければならないと考えていて、その点で中部電力殿より長尺の性能の良い線材を提供いただけたこと、横浜国立大学のサポートのおかげと考えている。《と述べている。また、今後についても、「今回の実験は、導体長30 cmと短いことからメートル級のケーブルでの検証を行い、さらにYBCOケーブルの実用化のために中間接続部や短絡対策などの研究を進め、来年度には20 m級のケーブル試験を実施したい《と述べている。
図2 交流搊失測定結果。
(ネアンデルタール人)