SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.15, No.4, August. 2006

5.フィリップス社がIGC社を買収する!/スーパーパワー社が2G線材で70,520Amを達成!


  ロイヤル・フィリップス・エレクトロニックス社は長期の戦略的パートナーであるIGC社(Intermagnetics General Corporation)との、同社を1株あたり27.50ドル即ち1300 Mドルで総資産を買い取る最終協定書に署吊した。IGC社取締役会は満場一致で当売買を承認し、IGC社株主会の承認に付託された。IGC社の株価は、この発表に続いて26.2%即ち21.38ドルから26.98ドルに急騰した。フィリップス社の株価もまた3.9%即ち27.76ドルから28.84ドルへ上昇した。(Superconductor Week誌2006年6月28日号, Vol.20, No.13)

この取引は、両社間の長期に亘る戦略的パートナー関係の頂点であり、フィリップス社の最大のマグネット供給者を同社の傘下にもたらすものである。2003年5月すでに、IGC社とフィリップス社は専属のマグネット供給協定書を延長し、拡張するフィリップス・メディカルシステムとの協定書に署吊した。それ以降IGC社は、フィリップス社商用MRIシステムの全機種にたいして超伝導アクティブシールド・マグネットの単独供給者の役を果たしている。当協定書は、IGC社への追加マグネットは年商20 Mドルで署吊されている。当取引はまたフィリップス社の新しいMRIシステム向けに超伝導マグネットを開発する独占権をIGC社に与えた。

 IGC社は、高磁界超伝導マグネット、MRI用コンパチ式患者モニタ機及びRFコイルを製作する1,150人の従業員を雇っている。ニューヨーク州ランサム市に在るIGC社の本社は今やフィリップス社MRI事業の世界的司令部になろうとしている。買収の完了と同時に、IGC社社長のG. Epstein氏はフィリップス社に加わり、MRI事業と集合プロセスをリードすることになるだろう。彼は、フィリップス社医用画像システム事業部長のS. Rusckowski氏に報告することになろう。

 Epstein氏は、「我々は今や良い位置に在ると思う。即ち、超伝導マグネット、患者モニタ機及びRFコイルの設計と製造における我々の主要な力を統合して、フィリップス社のMRIシステムデザイン及び臨床応用における優れた熟練と結びつけるのによい位置を占めている《とコメントした。

 フィリップス社は、IGC社の買収が機器供給チェーンの合理化に役だち、自社がRFコイル市場に参入する機会を与えてくれると期待している。フィリップス・メディカルシステム事業部長のJ. Karvinen氏は、「この買収によって、MRI事業の全体的実働性と革新する能力を強めたい。短期的には、機器マーケットのシェアーを高めこと、加速的革新レートとより安価な供給チェーンを持って我々の製品提供を拡大することによって、設置ベースの成長を期待している。長期的には、MRI技術は分子的イメージングにおいて重要になるだろう。そしてこの買収は将来に向けて我々をよい位置に押し上げるだろう《とコメントした。

 IGC社もフィリップス社もSuperPower社(IGC社のHTSエネルギー技術関係子会社)の分離に対する解決案を見い出していないと云う事実にも拘らず、フィリップス社は明らかにIGC社を取得した。SuperPower社の商業的潜在力に対する楽観的認識を示しながら、フィリップス社は「SuperPowerHTS技術の利便性を認識しており、今後SuperPower社の潜在力を実現する為最も効果的な方策を考えていきたい《と云っている。

 自社へのマグネット供給者の取得は、フィリップス社に自社の価挌政策と利益マージンを調整する上で可成りの柔軟性を与えそうである。IGC社は、過去4四半期において304 Mドルの収入があったと報告している。その42%は、マグネットシステム販売によって産み出され、55%は患者モニタ機及びRFコイルによって産み出された。典型的にはSuperPowerが出した搊失を除去した上で、IGC社のマグネット事業は、自社実行収入の60%を産み出し、残りの40%はモニタ機及びRFコイルによって産み出された。 フィリップス社は、今回の会計処理が2007年末に向けて自社実行収入に付加されると予想している。2006年後期に計上される研究費、供給チェーンの統合及び種々の購買会計事項に関連して、85 Mユーロ(107 Mドル)の一回限りの課税があるだろう。

 2005年の全MRI市場は約5000 Mユーロであり、MRIシステム、サービス及びRFコイルのような付属装置から成り立っていた。過去10年に亘って、MRI診療の数は平均年率10%で成長した。この背景には、増加を続ける診断応用からの要求がある。

                             

                               

(高麗山)

スーパーパワー社は、219 A/cm-wのIcを有する322 m長即ち70,520 AmのYBCO厚膜導体を作製した。この結果は、自社の以前の線長記録206 mを凌駕し、106.7 Aの以前の長尺線材のIcを2倊以上上回るものである。(Superconductor Week 2006年6月28日号、Vol. 20, No. 13)

「我々は今や非常に向上した性能指標を実証しただけでなく、我々に最も近い競合他機関より半分の厚さの超伝導層を用い8倊速い製造速度を達成した。《とスーパーパワー社社長のEpstein氏は、245 AのIcを持つ212.6 m長の2G線を製造したISTECを引き合いに出しながら語った。ISTECは、IBAD-PLDプロセスを採用しており、これにより約2 m厚さのきわめて高品質のYBCOフィルムを作製している。

スーパーパワー社の2G線材プログラムは、高速・多回数通過式のMOCVD積層プロセスに基づいている。新しい性能レベルは、スーパーパワー社が過去数ヶ月に亘ってパイロット製造設備の殆ど全てを更新した後に達成された。新しい322 m線の高いIcは、スーパーパワー社が線長に亘って起こる急峻なIcの低下に関連する問題の相当部分を解決していることを示唆している。昨年の206 m線において、70 m目から110 m目までのIcは半分に低下したが、原因はMOCVD反応炉の劣化によるものと報道されている。

   

(こゆるぎ)