オルバニープロジェクトについては、米国エネルギー省(DOE)、ニューヨーク州エネルギー開発局(NYSERDA)からのファンドを受け、ニューヨーク州の州都オルバニー(Albany)市で実施する超電導ケーブルシステムの実証試験プロジェクトである。米国National Grid社のリバーサイドとメナンズの変電所間約3 kmの途中に、350 mの超電導ケーブル線路を建設し、実用送電路に超電導ケーブルを接続し、実証試験をするもの。この超電導ケーブルは、三心一括型超電導ケーブルであり、冷却時の収縮や室温と液体窒素温度の間の熱サイクルに耐えられるタフさとコンパクトさを兼ね備えている。このケーブルには、同社の加圧焼成法で製造され、機械的特性、電気的特性の優れたビスマス系超電導線、DI-BSCCO、が70 km使用されているという。また、世界で初めてのケーブル中間ジョイントも採用されている。
米国では、2005年8月に制定されたエネルギー法において、高温超電導ケーブルを中心とする高温超電導機器の採用による送電網の近代化が国家的な課題として位置づけられ、2030年には全米に強固な超電導ケーブル送電網を構築する計画(Grid2030)が検討されている。その一環として、現在DOEが資金提供する超電導ケーブルプロジェクトが同時に3件進められており、その中でオルバニープロジェクトは最初に建設が終了し、実用送電路での実証運転を開始したものであり、今後の高温超電導ケーブルの実製品化への大きな弾みを付けたものと考えられる。
実系統への接続と通電開始に立ち会った、同社の電力・エネルギー研究所長の佐藤謙一氏は、「これはSuperPower社、BOC社、National Grid社、住友電工のチィーム全員の協力で完成したもので、誇りに思う。またビスマス系超電導線およびケーブルの開発に多くの方の御協力や御指導を頂き、本当に感謝したい。今後、超電導研究全体がより実用的なプロジェクトへ加速して行くことを願ってやまない《とコメントしている。
現地でケーブルの布設、工事、運転にたずさわってきた、電力・エネルギー研究所/超電導開発室の増田孝人プロジェクトリーダー、湯村洋康サイトマネジャーは、「長尺三心一括型超電導ケーブルの布設、冷却を行い、実用レベルの検証ができたと考えている。また、ケーブル中間ジョイント技術により、さらに長い線路にも対応することができる。今後、実線路での長期試験において、安定性・信頼性を評価していきたい。《と語っている。
図2 三心一括型気中端末部。
図3 三心一括型ケーブル中間ジョイント部。
図4 竣工式のセレモニー風景。
(ハナマルキ)