SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.15, No.3, June. 2006

7.ASC社は第一世代から第二世代へのHTS線材製造の移行を完了!


 American Superconductor Corporation(ASC)は、「我社は自社のHTS線材製造において、第一世代(1G)から第二世代(2G)への移行を完了した《と5月1日に発表した。その結果、全ての1G線材製造は保留され、当面の市場ニーズは400 km以上の1G線の在庫で対応する事になった。ASC社は、この行動は同社が営業目標の達成を可能とする一方、2007年3月31日で終わる今会計年度に於ける線材ビジネス部門の経常ロスを以前の実行計画に比し約20%削減すると予想している。同社はまた、緊急現金需要は次の二年間に亘って約5 Mドル削減すると云う。(Westborough,Mass. May 1/PRNewswire-First Call) 「我社の1G HTS線は広範囲の応用の為、超伝導線材製品市場に種蒔きする上で極めて貴重な役割を果たした。これらの応用には、電力ケーブル、送電線系統安定化用SuperVAR 同期コンデンサー、船舶推進用モーター&発電機及び磁気浮上列車と浄水システムのような種々の応用向けの電磁石が含まれる。我社の主な顧客への今年度出荷物*世界最初の電力ケーブル、米国海軍向け36.5 MW船舶推進用モーター、最初の商用HTS電力系統用SuperVAR—の全てはASC社の1G線によって電力を供給されよう。我社の2G HTS線はより高い電気的性能を持ち、同時に少ない製造コストを持つと期待しているので、我々が商業的数量を供給出来るようになり次第、顧客は急速に2G線を採用すると考えている《とASC社社長のG. Yurek氏は語った。

ASC社の2G HTS線は、1G線(世界20ヶ国に所在のASC社の顧客95社によって利用中のもの)を代替する為の1過程であり、それ故彼等はシームレスで344超伝導体として知られる2G線の製造設備を改造する事なく製造工程に挿入する事が可能である。2006年3月31日現在、ASC社は既に2.7 km以上の344超伝導体を1Gから2G線へ移行中の顧客に出荷した。同社は、追加的10 kmの344超伝導体を重要顧客へ2007会計年度中に出荷すべく待機中である。同社はまた、サンプル程度の344超伝導体を、事故電流限流器(2G線を用いる事により実現可能になる)のような製品を開発中の新しい顧客に出荷しつつある。

ASC社は現在400 km以上の1G線在庫を持っており、現時点では製作途中の1G線を完成させる作業だけを行っており、新たに1G線製造を始める計画はない。2G HTS線製造に利用しない全ての1G線製造設備は2006年3月31日現在で償却されよう。長期にわたって稼動した1G線材関連資産の今回の全償却額は5~5.5 Mドルの範囲内にあると予想され、さらに、在庫1G線材の一部もおおよそ1.5~2.0 Mドルの搊失計上を行う。なお、これらの償却は以前の財務ガイダンスには含まれていない。

今日、ASC社はまた自社の2006年3月31日現在の財務ガイダンスを更新した。同社は、1年間の全収入が50.5~51.5 Mドルの範囲に収まると予想している。これは、50.5~51.5 Mドルの以前のガイダンスと比較される。この予想より低いレベルの収入は、大部分はASC社の米国海軍研究事務所(ONR)との契約修正の遅れに因るものであった。2006年4月27日に発表されたように、ONR契約に対する13.3 Mドルの修正は今やサインされている。この修正に関連する13.3 Mドルの全額は、2007会計年度の収入として認識されると予想している。ASC社は現在、2006会計年度の正味搊失は30~32 Mドルの範囲に収まると予想している。これは、正味搊失が22~25 Mドルの以前のガイダンスと比較される。

上記記事について、住友電工、電力・エネルギー研究所の林和彦次長は「発見から20年を経て、高温超電導技術は電力ケーブルやモーター応用などようやく実用化の道が切り開かれようとしている。この時期に最も重要なことは、高温超電導技術が本当に使える技術であることを実証し、信頼性を確認することだと考えている。また、実用レベルの大きさ、容量をもった応用機器を試作することが可能で、工業的に生産可能な高温超電導線材は、現時点で第一世代のビスマス系に限られる。更に、冷却や絶縁などの重要な周辺技術の信頼性を機器・システムの中で実証するには、従来機器でも長期間を要するのが常であり、どのような線材が主役になるかに関わらず、今からこれらの周辺技術を確立しておく必要がある。以上の観点から、住友電工は今後も継続してビスマス系線材を市場に供給してゆく所存である。なお我々も高性能化、低コスト化の可能性のある第二世代線材の開発に取り組んでいるが、ビスマス系線材の性能も向上しており、A・mあたりのコストが実際にどう変遷してゆくか、現実にどのコストレベルが実現できるか慎重に見極めるつもりである。《とコメントしている。

                               

(高麗山)