同図中77.3 Kの結果を見ると、試作したモータは入力電圧がある閾値(28.3 V)に達したところで始動し、49.0 Vで見事に同期回転数(1800 rpm)に引き入れられている。上記閾値電圧は、かご型巻線ループの超電導状態を破って磁束フロー状態に移行させる電圧値に対応しており、理論予測とほぼ一致することを確認している。一方、入力電圧を下げた場合には、35.8 Vに到達するまで同期回転数を維持し、その後同期外れを起こしてすべりモードに移行している。つまり、無負荷特性は履歴を示しており、同期回転中の超電導かご型巻線ループに磁束が捕捉されている証拠と考えられる。さらに、運転温度を65 Kへ下げることによって磁束ピン止め特性が向上し、同期引き入れ電圧が66. 2 Vに上昇していることも明らかになった。このことは、かご型巻線に使用している超電導線材の特性がモータの機器特性と直接結びついた知見であり、大変興味深い。同グループは、現在実負荷試験に向けた検討を行っているところである。
中村助教授によると、「かご型誘導モータは、構造が簡単で堅固・安価などの理由によって従来から多くの分野で使用されており、モータの代吊詞的存在である。本成果は、かご型誘導モータの上記メリットを生かしつつ、2次側かご型巻線を超電導化するとともに若干の工夫を施すことで大きな高性能化・高機能化が期待されることを示している。特に、誘導電動機でありながら同期運転可能であることは大変興味深く、駆動原理に基づく従来型モータの分類に一石を投じる可能性を秘めている。今後、モータ構造や使用する線材の仕様を最適化することにより、例えば極低温環境下における応用展開が期待される。《と話している。
図2 試験システム概略図
図3 無負荷回転特性の測定結果
(京大TN)