ILCの高電界超伝導空洞開発のアジアグループ(ILC WG5-Asia、 リーダー 斎藤健治KEK助教授)は最近、二つの新しい空洞形状(単セル空洞)、TESLA空洞で達成された最高電界40 MV/mを大幅に超える、世界最高性能を達成した。一つは、コーネル大学(Hasan Padamsee教授率いるチーム)が設計・製作した空洞(Reentrant shape)で、それにKEKの表面処理技術を施しKEKで性能試験を行った。その結果、Eacc= 52.3 MV/m、Qo = 0.97 x 1010 @ 2Kの性能を達成した(図1、三角印)。もう一つは、JLAB/DESY/KEKの共同設計、KEK工作センターで製作した空洞(Low Loss shape)で、Eacc = 47.3 MV/m、Qo = 1.13 x 1010 @ 2Kを達成した(図1、丸印)。
この成功は、ILC高電界空洞の開発方針上決定的である。図2に示すように、TESLA shapeでは過去10年間40 MV/mに電界が制限されて来た。その原因について専門家の間では、空洞製作技術の問題と理論的限界説の二つに分かれていた。斎藤(KEK)は図3に示すように、これまでのデータを解析し、理論的限界説を2001年に提唱し、その制限の中でより高電界を得るためには最大表面磁場と加速電界の比が小さい新しい空洞形状しかないと指摘していた。今回の結果は、この指摘を裏付けるものである。KEKは昨年11月第1回ILC国際会議以後、この考え方をベースにILC開発計画を進めており、すでにLow loss形状でILC用9セル実機を製作完了している。今後その結果が期待される。
図2 この15年間の開発中に起こった2回のブレークスルー
‘95年には超純水高圧洗浄技術の実用化によって、‘05
年は空洞の新しい形状によって達成された。どちらの場
合にもKEKが重要の役割を果たした。
図3 これまでのデータを解析し、理論的限界説を2001年に提唱し、その制限の中でより高電界を得るためには最大表面磁場と加速電界の比が小さい新しい空洞形状しかないと指摘していた。
(SCRF man)