SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.5, October. 2005

6. 85m長、4cm幅、166 A/cm 2G線材の作製に成功!         _米国AMSC社_


 American Superconductor (AMSC)社は米国DOEの年次超伝導報告会で、85~100 m長の4 cm幅2Gテープを製造したと発表した。この4 cm幅テープは、8条の4.1 mm幅テープにスリットされた。その中で最良のものは、73 Aのend to end Icを示した、即ち166 A/cm-widthあるいは14,110 A-mの達成である。Icの全長に亘る標準偏差は6.2 %であった。スリット前の4 cm幅2Gテープの1 m長部分に対するロスアラモス国立研による特性評価は、当線材が75.5 Kで1000 Aに近い電流輸送能力を有することを示した。 AMSC社もまた2G線材のために新しい銅積層装置を導入した。スリット後、HTSテープは薄い銅条の間に半田付けされ、ハーメチックシールされて、耐コロージョン性の増強と応用のため必要な仕上げが施される。海軍研究所によって行われたテストにおいて、銅を積層した線材はAMSC社自身の1G線材向け機械的特性仕様を凌駕し、25 mm直径曲げに耐えることができた。

当積層構造は、AMSC社自身の1G線材と同様であり、同じ製造設備を使用する。同社は、望ましい抵抗率あるいは強度によって、銅の他にステンレス・スチールや黄銅など他の材料も使用できると云っている。この新導体構造は、“中立軸”へ焦点を絞る以前の方針からのシフトであり、そこでは銅条はHTSインサートテープの単一側面に積層される。メリットには、強度が増加すること、電気的に導電性であると共に半田付けが可能であること、完全なハーメチックシールが得られること、異なった安定化材を選択することにより導体の抵抗率を調整できる能力が高い事などが含まれる。

オ−クリッジ国立研究所は、AMSC社の改良型2G線材を用いて積層パンケーキコイルを製作し、77Kで0.32 T(18,042 AT)の磁界を発生させた。加えて、SuperMachines (AMSC社の回転機ビジネス単位)は87 m長の線を、85ターンのレーストラック形モーターコイルに巻き込んだ。このコイルは、55 A(4,620 AT)の臨界電流を運んだ。同社は「当マグネットは原理的には77 Kで50馬力、27 Kでは500馬力の使用に十分耐えるものである。《と云っている。

プロセス性能向上の為、AMSC社はYBCO膜厚を0.8 μmから1.4μmまで75 %増加させた。以前ショートサンプルのみで実証されたこの厚いYBCO膜は、今度は4 cm幅基板上に形成され、続いてスリットされて4.4 mm幅線材に加工された。3 m長の線は、77 Kで125 A (280 A/cm-w)の臨界電流を運んだ。この厚膜Metal Organic Deposition (MOD)プロセスはまた、磁場中の性能を改善するAMSC社専有のナノドト技術を包含しているが、コストあるいは線材作製の複雑性を非常に増加させるものではないであろう。 AMSC社は、1条ではなく2条のHTS線が2条の銅条間に積層される線材構造をも提供している。2.5 m長で実証されたこの線材は、厚膜YBCOプロセスを包含した。2.5 m長、4.4 mm幅、0.3 mm厚のこの線は、77 Kで240 Aあるいは545 A/cm-wの臨界電流を運んだ。これは、約20000 A/cm2のエンジニアリング電流密度(Je)に相当する。

4 cm幅条からスリットした高Ic線材の製造に関するスケールアップ戦略の一環として、AMSC社は過去1年間の研究開発を4 cm幅のHTSテープを経済的に製造出来る機械の開発に絞ってきた。過去1年間に実証された3台の新しい機械は、10 cm幅までのテープを受け入れられるよう設計されている。AMSC社は、工業的設備を早期に基幹製造ラインに導入する事は、2G線材製造能力に関する同社のヴィジョンにとって決定的であると考えている。

新しいreel-to-reel 炉を用いて、4 cm条の幅方向にわたってのYBCO膜の均一性と品質を実証する為に、同社は移送条の上に4枚の1 cm幅テープを互いに突き合わせて、炉内を通過させた。1 cm幅のHTSテープそれぞれのIcは、244~263 A/cm-wの範囲に入っており、初期の1 cm幅テープ用の炉で得られた性能と同じである。新しい炉は、年当たり1000 kmの処理能力を有すると報告している。

4 cm幅テープへのバッファー層の成膜速度と品質の向上を目指して、同社は新しいバッファー層成膜技術を採用した。同社はRFスパッタリングを放棄して、全3層 (Y2O3/YSZ/CeO2)の成膜の為反応性スパッタリングプロセスを新たに開発した。反応性スパッタリングから予想されるメリットは、より大きな成膜面積に亘るより大きな成膜レートと結果的には10 cm幅テープの実現である。

今後のAMSC社の計画では、製造能力を段階的に増強し、線材のIcを増加する事が要請されている。主要な焦点は、100 m長、4.4 mm幅、100 A線材製造の達成に置かれており、それを系統的にくり返して月当たり1 kmの生産高を産み出す事である。AMSC社はまた500 A/cm-wのIcを有する銅条を積層した導体構造において、スリットされた線材を実証しようとしている。資金援助に依存して、同社は1 T / 77 Kの2Gコイルを実証しようと試みるだろう。

AMSC社はおよそ10 kmの2G線材を次の12~15ヶ月の間に出荷することを期待している。同社は、パイロット製造設備に投資を計画している。その目的は、4.4 mm完成線材向けに40 m/hの製造速度を達成するためで、それによって2007年12月までに年産300 kmの製造能力がそなわることになる。この計画の一環として、同社はスケールアップのためロールミル、脱脂装置、焼鈊炉を含めて4 cm幅基板製造設備を購入し、オンライン化を進めよう。                                      

                               

(高麗山)