SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.5, October. 2005

5. 106.7 A/cm-w、206m長の2G線材の製造に成功!      _米国SuperPower社_


 SuperPower,Inc.は米国DOEの超伝導電力システム2005年次報告会で、106.7 A/cm-wのIcを持つ206 m長即ちIc x L = 22,000 A-mの2G線材を製造したと発表した。この線材は、同社のMOCVDプロセスを用い、反応容器を2回通過させて作製した。

 22,000 A-mの達成は、同社がここ数年間に成し遂げた大きな進歩を表しており(SuperPowerは2002年6月最初の1 mを作製した)、また更なる挑戦を明確に示している。206 mテープは、最初の71 m間では200 A/cmのIcを示し、MOCVDプロセスが高Icの長尺線を産み出す能力を実証した。また、最後の100 mは、Icの標準偏差が4.3 %を示し、線材開発にとって大きな挑戦である高均質性の可能性を示唆している。しかしながら、70 m目から110 m目までのIcは約半分に低下し、工業的スケールのMOCVDプロセス確立のためには、多くの課題が残っていることも示唆している。

 スーパー・パワー社の22,000 A-m達成は、本年1月に報道された10,050 A-mの2倊であり、2004年の成果7,000 A-mの3倊以上である。この増加は、多くのプロセス改良に起因している。2004年7月、スーパー・パワー社はMOCVDプロセスを用いて作製した線材の長手方向のばらつきが極めて大きいことを報告した。即ち、Icは50 m長にわたって65 Aと193 Aとの間を周期的に変化する。同社は、IcとBa組成の間に強い相関を発見し、問題はMOCVDプリカーサ供給時の変動によると結論した。それに続くプリカーサの供給安定性の改善によって、10 m長線材が200 A/cm-wのIcと同時に0.9 %の標準偏差を達成している。

 スーパー・パワー社は、引き続いて100 m以上の線材を作製できるreel to reel設備に投資した。しかし、またIc変動問題に遭遇した、今度は別の性質の問題であるが。108 m長を作製した後、最初の40 m中に、いくつもの単調的Ic低下が測定された。Icは190 A/cmから50 A/cm以下に低下した。そして最後の68 mにわたっては、Icは85~110 A/cmとより収束的になった。最初の40 m中のIcの急低下は、1 cmサイズの欠陥によるものと分かった。おそらく、MOCVDプロセス自身よりも無関係なたとえばテープハンドリングなどに起因すると考えられる。

 しかしながら、最初の40 m中のIcの急低下は多分より警告的事態であった。調査の結果、テープの長手方向に沿ってのYBCO膜厚変化はなく、YBCO膜中の組成変化及びIBAD YSZ in-plane texture内の変化もない事が分かった。しかし、YBCO in-plane textureが最初の60 mにわたって劣化している事が分かった。同社は、MOCVD反応容器の状態が劣化したのが原因と断定した。この問題は、今後の課題として残された。

 均質なIcをもつ長尺線を作製する為に、スーパー・パワー社は高速・多数回成膜プロセスを採用した。このアプローチのメリットの一つは、連続成膜バッチ間でMOCVD反応容器内の通過速度が可変なことである。100 AのIcをもつ158 m長線材は、一回目15 m/hで反応容器を通過させ、2回目は10 m/hで通過させて1.1~1.2 mのYBCO膜厚を生成させた。Icはまたも最初の80 m間で140 Aから100 Aへ低下した、だが単一通過アプローチより低下は少なかった。Icの標準偏差は、最後の100 m間でちょうど2%であった。

 それから同社は、206.7 m長の線材を製造した、今回は1回目、2回目ともMOCVD反応容器の通過速度を同じ10 m/hに設定して。その結果、最低Icが106.7 A/cmのYBCO線材が得られた。印象的なのは、最初の71 mが約200 A/cmのIc (Ic x L = 14,000 A-m)を持つ事である。しかし今度も、線材は最初の部分でIcの顕著な低下を示し、110 m以降約110 Aに落ち着いた。YBCO膜厚は、テープの初めが1.47 m終わりが1.32 mであった。Icの標準偏差は、最後の100 mにわたって4.3 %であった。

スーパー・パワー社は、今や12 mm幅2G導体の製造の各ステップで10 m/hの速度に到達している。各テープ線材を4 mm幅にスリットする事により、本プロセスは4 mm幅導体に対しては30 m/hの等価速度を産み出している。これらのプロセスを螺旋状テープを扱うシステム(そこではテープが螺旋に巻かれて最低6回与えられたプロセスを通過する)へ移すことにより、2006年までにこの速度は6倊に増加させる事が可能である。

10 m/hに到達する為に、スーパー・パワー社はプロセス中一番の律速条件であったIBAD YSZプロセスを止めてIBAD MgOに替えた。同社は、ホモーエピMgOとLMOバッファーの反応性スパッタリングを含む新しい改良法を用いて、現在25 m長の142 A/cmテープを製造している。

線材長の進展の見地からスーパー・パワー社は、250 m単長の完成導体の製造を計画した。4 mm幅にスリットし、銅の安定化材をメッキして、142 A/cmのIcと全長にわたって5 %以下の均一性を有している。

スーパー・パワー社はまた300 A/cmのIcを持つ100 m単長の線材の製造を狙っている。品質管理を改善する為に、同社はIBAD MgOバッファーの長尺線に関するプロセス中の組織観測の為に高速XRD装置の改造を計画している。同社の計画では、2006会計年度末までに8 kmの2G線材をオルバニ−ケーブルプロジェクトに供給する必要があり、2006年夏までに通算9.7 kmの線材の出荷が完了する事になっている。   

                               

(こゆるぎ)