SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.4, August. 2005

9. EHTS社が235 A - 40 m長の厚膜導体を開発!              _EHTS社_

コンヂュメックス・ケーブル会社がASC社にHTS線材の注文を出す!


  ブルーカーグループの子会社であるEuropean High Temperature Superconductors (EHTS)は40 m長で235 A / cm-width / 77 KのIcを持つ4 mm幅の厚膜導体(coated conductor)を作製したと発表した。9.4 kA-mの達成は、EHTS社で作製された最初の40 m長YBCO厚膜テープ上で行われた。高いend to end Icを持つ追加の40 m長線も同様に作製された。これらの成果により、EHTS社は世界的2G線材開発競争の前面に躍り出たといえる。(Superconductor Week 2005年7月25日号 Vol. 19, No. 13 ) 

   EHTS社は、厚膜導体開発者にとっての主要な挑戦は長尺線の全長に亘っての均質な輸送特性の実証であると強調した。EHTS社工場管理者のA. Usoskin氏は、「我々は決してある高い値とゼロ電流との平均的臨界電流を引用しない。これは製造品質を判断するとき、往々にして上適当か混乱を与える値に導く。我々は実際のend to end の臨界電流を引用したい《と語った。  

  EHTS社は、高いend to end Icを持つ複数の40 m長線材の作製に成功したことは大量製造へ向けて大きな前進と考えている。Usoskin氏は、「EHTS社は今や短尺線と同じ電流密度を持つ40m長YBCOテープを作製できる。以前、360 A / cm-widthのIcを持つ8~10 m長の厚膜導体を作製したことがある、ただし2倊厚いYBCO厚膜を用いてであるが。40 m長の線材を作りはじめた時、最初のステップとして235 A / cm-widthのテープを作製した。このテープは、1.05 m厚のYBCO層を有し、YBCO膜の臨界電流密度は全長に亘って2.3 MA/cm2に上ることを示している。2番目の40 m長テープに於いて212 A / cm-widthが得られた。YBCO膜の厚みは0.9 mであった。これから、各導体の全長は通常単結晶基板上で短尺線だけで達成される一杯のIcを示した。これは、我が社のステンレス・スチール基板表面の高品質を示している、この品質こそはかってプロセスをスケールアップする上で最大の障害であったものである。《と語った。 

  2005年に対するEHTS社の目標は、80 m長の300 A/ cm-width厚膜導体を、年当たり8 kmの製造能力で製造することである。2006年には、同社は100 m長の350 A / cm-width厚膜導体を、年当たり30 kmの製造能力、実績を目標にしている。同社は、「現有の設備は100 m長の線材を製造するのに十分である。2006年に300 mまでスケールアップする計画には何らの障害も無い《と云った。 

  EHTS社は、「2008年までに、自社の2G線材は品質及びコストの両面で1G (Bi系)線材と等しく成る、但しこの主張は十分な市場(そのサイズは指定されていないが)が存在すると云う前提に基づいている。《と考える。HTS線材開発者は誰もコストモデルを詳細に議論しないが、EHTS社はおそらく1G線材を製造している姉妹会社European Advanced Superconductors (EAS)から提供された内部データにも基づいて試算を行っている。同社が述べている2G線材製造コストの長期的目標は、非常に大きなマーケットを想定して10ドル/ kA-mとしている。 

  EHTS社の線材は、2軸的に金属組織化したYSZバッファ層を持つCr-Niステンレス・スチール基板テープ上に高レート・パルス・レーザ−蒸着技術を用いて製造された。同社のYBCO層蒸着は精巧な可変方位アブレーション技術を援用している。当技術により、連続蒸着の過程でターゲットの粗大化が顕著に抑制される。今度は、これが総合の蒸着スピードとスピード安定度を増加する。 

  当アブレーション技術のコスト低減効果は、9,400 A-m線材の作製に於いてさらに向上した。Usoskin氏は、「この5月に特別な非ガウシアン強度分布を持つレーザービームを形成することにより、ターゲットアブレーションの効率を40 %増加できることを見出した。これは、同じレーザ−・パルスエネルギーで40 %多くのターゲット材料を基板上に蒸着できることを意味する。さらに、最近開発された低搊失の強度均質化器(カスケードビーム変換原理に基ずく)を用いることによってレーザーエネルギーの75 %以上を節約できる。低搊失強度均質化器は、従来器の30~60 %の代わりに2~3 %の搊失を持つ。この節約されたレーザーエネルギーは、追加的レーザープルームの生成の為に同じ蒸着プロセス内でも採用される。追加的レーザープルームにより、テープ加工のスピードを増加できる。フィルム蒸着の間だのYBCO搊失の更なる圧縮と共に前記のスピードアップによって、テープ成膜スピードの増加、即ち現行の7 m / hrから約50 m / hrへの増加に繋がる。《と語った。 

  このようなスピードは、他の多くの例と好く比較できよう。例えば、IGC SuperPower社は最近20 m / hrのテープスピードで100 A厚膜導体を製造していると発表した。速い蒸着レートにより、与えられた製造ラインでより多くの線材を作製できるので資本支出は減少する。レーザーアブレーしョンにより低いレーザーエネルギーを使用することは、同じくレーザーコストを低下させる。Usoskin氏は、「大量製造の場合、レーザーコストは3.9ドル/ kA-mに上る。これには、レーザー・チャンバー部品のコストと全てのプロセスコスト等が含まれる。我々のもっと効率の良いアブレーション技術に、より低いレーザーコストを組み合わせるとこれらのコストを3.9ドル/ kA-mから2.2ドル/ kA-mへ低減することが期待される。この数値には、YBCO原材料コスト0.60ドル/ kA-mは含まれていない。《と語った。 

  EHTS社は、ヨーロッパの2G HTSケーブルプロジェクト、Super3Cに参加している。5Mユーロ(6.8 Mドル)プロジェクトは、Nexans Franceが主導している。EHTS社は、本プロジェクト向けの主要な2G線材開発者であり製造者である。当プロジェクトは、4 kmの線材を必要としており、当プロジェクトの各フェーズに対応して、40 mと100 mの線長が指定される。EHTS社は、ヨーロッパ委員会(EC)から49万ユーロ(59万2千ドル)を受け取っている。これは、供給された線材に対して、m当たり148ドルが支払われている事を示唆する。Super3Cは、端末装置付き、単相、30 m長、10 kV、1 kAケーブルの開発、製作及び試験を要求している。36ヶ月間の当プロジェクトは、2007年5月に終了予定であり、2Gテープのみを使用するヨーロッパ最初のHTSケーブルとなろう。 

  EHTS社:ドイツ、ゲッチンゲン市に根拠を置くEuropean High Temperature Superconductors (EHTS)は、1991年Zentrum fuer Funktionswerkstoffe(ZFW)のプログラムの1部として厚膜導体の開発を開始した。2004年3月、ブルーカーグループはZFWのプログラムを買い取り、EHTS社を設立した。人員、設備及び知的所有権は全て同社に委譲された。同社は、ドイツ、カールスルーエ市在住のBruker BioSpin社の子会社であり、NbTi, Nb3Sn等のLTS線とBi系HTS線を製造しているEuropean Advanced Superconductors (EAS)社の姉妹会社でもある。          

   

(相模)

 メキシコの一番大きな線・ケーブル製造者であるCondumex社は、自社がメキシコ市の変電所に製作・設置するHTS電力ケーブル向けに、10 kmの1G HTS線材供給者としてAmerican Superconductor Corporation (ASC社)を選んだと発表した。当HTSケーブルシステムは、3本の33 m長—常温誘電体型ケーブルから構成され、10 kmのHTS線を使用する予定である。ASC社は、この取り引きの金銭的条件の詳細についてはコメントするのを避けている。(Superconductor Week誌2005年8月1日号 Vol. 19, No.14 ) 

   Condumex社は、以前当プロジェクトの第1フェーズとして、単相—5 m長—2 kAケーブル実証の試験を成功裡に完了した。当プロジェクト第2フェーズのケーブルシステムは、3相システム中3つのケーブルの各々に於いて15 kV / 1.8 kAの定格で運転される。同社は、来年メキシコ市の変電所に当ケーブルが布設され、運転が開始されることを期待している。 

   Condumex社は、メキシコ国内最大の線・ケーブル製造者で、年額15億ドルの売上を挙げ、全世界で14,000人の従業員を擁している。同社は、エネルギー、自動車産業、テレコムビジネス及びケーブル事業に携わっている。ケーブル事業は、同社の年商の32 %を稼いでいる。  

       

(高麗山)