SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.4, August. 2005

8. MgB2コイル化*その後の進展 _日立・日立研、物質・材料研究機構_


 (株)日立製作所日立研究所と物質・材料研究機構は、世界で初めて、二ホウ化マグネシウム(MgB2)超電導コイルを有する閉ループ回路による永久電流運転に成功したと発表した(2005年度低温工学・超電導学会春季大会及びMEM05)。 

   今回、120 m長のMgB2長尺単芯線材を作製し、そのうちの96 mを使用し、ソレノイドコイルを作製した。そしてこのコイルとNbTi線で作製した永久電流スイッチを超電導接続することで閉ループ回路を作製し、8時間以上、約0.68 Tの磁場捕捉に成功したという。 

   2001年に青山学院大学の秋光教授らによって発見されたMgB2超電導物質は、臨界温度(Tc)が金属系材料として世界最高の39Kであり、Nb系超電導体より20 K以上も高い。そのため将来的にMRIやNMRなどに使用されることが期待されている。日立・日立研においてもMgB2長尺線材及びコイル作製技術を開発し、58 mの線材を用いて作製したソレノイドコイルで約2.0 Tの磁場発生に成功している【本誌Vol.13 No.6(2004年12月)】。MRIやNMRに適用されるようになるためには永久電流運転が必要であるが、これまでのところMgB2コイルによる検討は皆無であった。そこで、MgB2コイルを有する閉ループ回路を作製し(図1)、永久電流運転を評価したという。 

   この作製のために、(a)MgB2線の高均質加工技術及び(b)MgB2線とNbTi線の超電導接続技術を開発したという。(a)で作製したMgB2線を用いたソレノイドコイルの仕様は、内径30 mm、外径51.2 mm、高さ60 mmであり、また(b)の超電導接続部の性能は4.2 K, 0.1 Tの条件で、接続抵抗1.0×10-13 以下であったとのこと。そしてこれらを用いて作製した閉ループ回路に4.2 K・外部磁場ゼロの条件で54 Aを流したところ、8時間以上に亘って約0.68 Tの磁場捕捉が確認された(図2)と報告している。 

   日立研究所の高橋雅也研究員によれば「MgB2コイルの永久電流運転を成功したことで、NbTi線、Nb3Sn線の代替線になる資格をようやく得た。今後さらに捕捉磁場を向上させる技術開発を推進していく。《とのこと。また同研究所の岡田道哉プロジェクトリーダは「今回の成果はMRIやNMRなどへのアプリケーション拡大に繋がるもので、MgB2を用いたマグネット開発に一歩前進したと思う。《とコメントした。一方、物質・材料研究機構 超伝導材料研究センターの北口仁主席研究員は、「閉ループ回路を冷凍機冷却で運転可能にできれば、MgB2の臨界温度を生かすアプリケーション開発の進展が期待できる。《とコメントした。また同機構 同センターの熊倉浩明センター長は、「MgB2の応用展開に幅が広がった。今後は高磁場捕捉、液体ヘリウムフリーを可能にするMgB2線を開発することで、日本で発見されたMgB2の実用化に向けて、世界をリードしていきたい。《とコメントした。    

          


図1 閉ループ回路外観


図2 閉ループ回路の永久電流運転結果

                   

                               

(万馬券)