SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.4, August. 2005

4. ITERサイト欧州に決定


 Superconductor Week誌2005年7月25日号によれば、6月28日、ITER計画に参加する6極は、フランスのカダラッシュに総事業費96億ユーロ(115億ドル)となるITERを建設することに合意した。ITERとは、エネルギー源としての核融合が科学的・工学的に実現できることを実証する規模や条件で、核融合反応を起こす実験炉である。ITERのサイトを日本かフランスに決めることに、2003年12月から交渉は行き詰まっていた。このサイト問題が解決したことにより、(ITER)協定をまとめる技術的作業が可能となった。今年末までに全ての極で協定文書への署吊することが可能であり、それにより2005年末までに建設開始が許可されることが期待されている。

ITER建設費は(2000年での価格で)45.7億ユーロと見積られ、建設は約10年に渡る。建設費のほぼ半分が超伝導マグネット・システムである。超伝導素線に6.5億ドル(主にNb3Sn素線であるが、NbTi 素線も含まれる)、そして超伝導マグネット・システムに14億ドルと見積っており、これは歴史的に最も巨大な超伝導の事業である。約20年となる実験期間の総運転コストは、建設費と同程度と見積られている。(訳者コメント: 超伝導マグネット・システムは建設費の約1/4と言われており、超伝導線材費も記述より低い。)

 中山成彬文部科学大臣は、六ヶ所村や青森県の人々のITER誘致に向けた努力に感謝を示した後、「日本がこれ以上ITER計画の障害となることは、人類の将来のためもならず、また6極の技術協力を壊すべきではない。それゆえフランスにITERを建設するという結論を仕方なく下した。《と述べた。

 カダラッシュ・サイトは多くの理由により支持されている。まず、このサイトはITER設計を担当する国際チームによって定められた全ての技術的要求を満たしている。また、既に世界で最も大きな超伝導核融合実験装置であるトール・スープラを建設・運転しており、その組織であるCEAカダラッシュは欧州で最も大きな原子力研究機関の一つである。

結果として、ここには技術的に支援する装置や専門的技術があり、このことはITERの様な複雑で草分け的な計画の建設のリスクをかなり減少させる。残りの理由は、フランスはITERの様な初めての装置を認可するための法規が良く確立されていることである。

 カダラッシュはエキサンプロバンスから40 km、フランスで第2の都市であるマルセイユから70 kmにあり、巨大な国際協力に相応しい社会的、文化的、産業的そして学術的社会基盤が整っているという事実をフランスは宣伝している。こられの利点は、世界中の優秀な科学者や技術者がITER計画に魅力を感じる助けとなるだろう。

ITERに参加する6極は、中国、欧州、日本、ロシア、韓国と米国である。カナダは交渉の1極であったが、2003年12月に撤退した。ITER協定は、ひとたび成立されれば、一定の技術や知識をもつことを実証し、この計画に財政的に貢献することができる他の国の参加や協力が可能としている。少なくともインドは参加に興味を示している。

 ITER装置の建設に関して、殆どの構成部品は参加国により物紊される。すなわち、部品用の資金ではなく、部品自体が供給される。欧州各国の貢献は、スペインに設立される新しい共同事業体の下で管理される。 欧州はITER建設費の50 %を負担し、一方日本や他の極は各々10 %を負担する。しかし欧州は、建設費の分配に加え、サイト準備の費用も負担する。更に、欧州は50 %の貢献の中で、日本とその企業から10%相当の部品を調達する。結果として、日本はITER建設費の10 %で、20 %に相当する部品を供給できる。

この他の日本に対する譲歩には、欧州は“幅広いアプローチ”の枠組みに参加して日本におけるITER共同研究活動の進展に3.39億ユーロ(490億円)を負担する、欧州は日本のITER機構長候補を支援する、欧州は50 %のITER機構スタッフのうち10 %に相当する職員の割り当てを日本に譲渡する、つまり欧州は40 %、日本は20 %の職員を派遣する、がある。

加重投票の仕組みもITER評議会の意志決定に採用され、この仕組みは欧州が評議手続きを支配することを防いでいる。やや遠い未来に、核融合実証炉(“DEMO”)を行う国際協定が結ばれた際には、欧州はサイト国に日本を支持する。

欧州は、ITER計画を主催することの代価として背負う巨大な費用について次の様な幾分抽象的な正当性を示している。最先端の研究施設の存在は、最も優秀で最も聡明な科学者を欧州に保ち、彼らは高度に革新的な計画を進展し、その計画は彼らが所属する会社や欧州一般企業にとって相当の価値をもたらすと期待できるから、欧州の企業にとってかなり有益であると。

上記記事について、日本原子力研究所超電導磁石研究室の礒野高明主任研究員は、「カダラッシュ・サイトの優位性は欧州寄りの見方であり、六ヶ所村サイトの技術的優位性は示されていた。六ヶ所村が選ばれなかったことは残念であるが、歴史的なプロジェクトであることには間違いなく、ITERサイトが決定したことは大きな進展で、今後ITER協定が順調に進み、建設に取りかかれることを期待している。《とコメントしている                    

                               

(村民)