SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.4, August. 2005

10. スターリング型パルス管冷凍機の開発 _富士電機システムズ、富士電機アドバンストテクノロジー_


  スターリング型パルス管冷凍機は、膨張機として可動部を持たないことを特徴とし、低振動化と高信頼性を実現できるため、低振動を要求するセンサなどにおいて、従来のスターリング冷凍機に代わるものとして期待されている。また、最近ではスイッチひとつで冷却できる利便性のため、これまで液体窒素を用いて冷却していた用途においても、その代替として注目されている。富士電機システムズ㈱と富士電機アドバンストテクノロジー㈱では、これまでインラインタイプ(蓄冷器とパルス管が一直線状に並んだもの)のパルス管冷凍機を開発してきたが、被冷却物を取り付け難いことと真空チャンバー部が大きくなってしまうという問題点があり、今回、U字リターン型に改良し、商品化した。

   U字リターン構造を採用することにより、蓄冷器とパルス管の折り返し部での流れの偏流により、著しい性能の低下が見られた。このため、内部の流れ偏流を抑制するために低温端での整流構造を設けた。設計は、パルス管内の流れのシミュレーションとPIVによる可視化を駆使して最適化した。これにより、インラインタイプに比べ性能の向上も図れた。また、位相制御機構の一構成部品であるバッファタンクを圧縮機に一体化させることにより、これまでの扱いにくさを解消した。このように、今回の改良はスターリング型パルス管冷凍機が実際の用途に適用されることを主眼にしたものである(図1)。

   このスターリング型パルス管冷凍機は、設置方向での性能差がほとんどないことも特徴のひとつである。低温部を下向きに設置した場合と上向きに設置した場合の性能差は77 Kにおいて2 %以下であり、使用上全く問題のないレベルであると言える(図2)。これにより赤外望遠鏡用などで全方位・全方向にセンサが回転や並進移動する用途などには最適だと考えられる。

  商品としては、単相100 V専用電源がセットされているため、この電源で低温端温度を一定に保つコントロールが可能であるため、周囲温度が変化したり、設置位置が変化したりしても、常に低温端温度を一定にしておくことができる。富士電機アドバンストテクノロジー・機器技術研究所の保川幸雄氏は、「国内ではスターリング型パルス管冷凍機の市場はニッチであるが、これまでの特徴に加え、ユーザーにとって扱いやすい冷凍機に仕上げた。少しでも多くの分野の方に使っていただければと願っている。《と述べている。                  

          


図1 スターリング型パルス管冷凍機の外観


図2 冷却性能

                   

                     

(在家雲水)